映画貧乏日記

映画貧乏からの脱出は可能なのだろうか。おそらく無理であろう。ならばその日々を日記として綴るのみである。

「リップヴァンウィクルの花嫁」

「リップヴァンウィクルの花嫁」
@テアトル新宿にて。5月3日(火)午後3時より鑑賞。

人はなぜ行列に並ぶのか。オレにはさっぱりわからない。
もちろん並ぶ価値のある商品も存在するのだろうが、それでも「わざわざそこまでして・・・」という思いは拭いようもない。

映画も同様だ。人が殺到する映画には、ちょっと引いてしまう。もともと観たかった作品ならともかく、そうでない作品に対してはますます興味が失せてしまう。だいたいそういう映画に限って駄作が多かったりするわけだし。

そんな中、昨日(5月2日)テアトル新宿のホームページを見ていたら、岩井俊二監督の「リップヴァンウィンクルの花嫁」が1日1回のみ公開になっているではないか。この映画、もともと3月後半からあちこちの映画館で公開になっていたのだが、プレイガイドや金券屋に行っても前売り券が見当たらない。ということは、当日料金1800円を支払わなければ観ることができない。これは貧乏人にとっては痛すぎる出費である。

しかし、テアトル新宿となれば話が違う。TCGメンバーズなる会員になっているオレは、普通の日でも1300円、火曜と金曜はなんと1000円という超破格値で鑑賞が可能なのだ。60歳になる前からシルバー料金が適用されたようなものである。これぞ天の助け、神の救いだぜ!

というわけで、さっそく予約しようと思ったら満席になっていた・・・。公開から1か月も過ぎた映画がである。まるでラーメン屋に行列するがごとく、観客が殺到しているこの構図。ふだんなら引いてしまうオレではあるが、むしろグイグイと意欲をかき立てられてしまった。なにせ岩井俊二の映画である。いや、正直、岩井俊二の過去の作品って、そこまで好きじゃないんですがね。なんか今回はいつも以上に評判がいいし。おまけに明日はTCGメンバーズ1000円の日、これをやり過ごすことかができようか。いや、できない(反語)。

で、今日はしっかりネット予約して行ってきたわけですわ。今日も満席。立ち見まで出る大盛況。この映画、上映時間3時間の長尺。よくまあ3時間も立ち見できるものだ。5年前ならともかく、今のオレにそんな鉄人アイアンマンレースみたいなことは絶対に無理である。

そして鑑賞した「リップヴァンウィクルの花嫁」。
主人公は派遣教員の七海。教員だけでは食べていけずコンビニでもバイト中。そしてSNSで知り合った男性と結婚。「ワンクリックで手に入った」ですと。ぶぁーかか!! おめえは。おまけに、コイツ無防備すぎる。やがて簡単にだまされて、離婚して家を追い出されてしまうのである。むむむむ、イラつくぜ。この転落劇。

ただし、それを岩井俊二らしい美しく詩的な映像と音楽を使って描くものだから、決定的な不快さを感じずに観てしまうのです。それにしても、このドラマは何を描きたいのだ?

そして中盤以降、七海は安室行升(あむろゆきます=どう考えて「機動戦士ガンダム」からとった名前)という得体のしれない何でも屋から、大きな屋敷での住み込み家政婦の仕事を紹介されて、真白というもう一人のメイドと2人で暮らし始めるのである。

この2人の交流シーンが素晴らしい。特にウェディングドレスを着てはしゃぐシーンが秀逸。ちょっとレズビアン的なところもあったりして美しいわぁ~。

てことで、どうやら最初はどうしようもなかった七海が、真白と出会って変化する物語だったのですね。彼女の成長が明確に示されるわけではありませんが、ラストは一筋の光が・・・。

ドラマにリアルさはあまりなし。むしろ寓話でしょう。いったいこの寓話を通して、岩井監督は何を言いたかったのか。深読みしようと思えばいくらでも深読みできそう。

まあ、オレにも明確な結論は出ていないのですが、何にしても美しいシーンがいつまでも頭に残っておりまする。そういう意味で、今年印象に残る1本になりそう。

その要因の1つが黒木華Coccoの演技。正直、今まで黒木華には、そんなに惹かれるものがなかったのだが、今回はその演技に胸を揺さぶられた。そして、真白役の歌手のCoccoにも脱帽。塚本晋也監督の『KOTOKO』の演技も見事だったが、今回も存在感たっぷり。歌もいいし、演技もいいし、完全に惚れた!!

というわけで今日の教訓。果報は寝て待て。1800円の映画が1000円になったぜ。ベイビー!

●今日の映画代1,000円(TCGメンバー・会員デー)