読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

映画貧乏日記

映画貧乏からの脱出は可能なのだろうか。おそらく無理であろう。ならばその日々を日記として綴るのみである。

「フラワーショウ!」

「フラワーショウ!」
ヒューマントラストシネマ有楽町にて。2016年7月9日(土)午後1時20分より鑑賞。

「♪野に咲く花の名前は知らない だけども野に咲く花が好き」
ザ·フォーク·クルセダーズが歌った反戦ソング「戦争は知らない」。作詞はあの寺山修司だ。だが、オレは野に咲く花どころか、普通の花の名前もよく知らない。知っているのは、せいぜいチューリップだの、ひまわりだの、アジサイだの、サルでもわかりそうな花ぐらいである。

しかし、世の中には花に異様に詳しい人がいる。その辺の雑草みたいな花の名前まで、「これは〇〇の花だよね」などとピタリと当てたりするから恐れ入る。そういう人を見ると、なんだか潤いある人生を送っていそうで敗北感に襲われる。悔しいから、自分もさも知っているかのように「ですよねぇ~」などと同調しているが、実際はほとんど理解していないから困ったものだ。ゴメンナサイ。

さて、そんなオレではあるが、『フラワーショウ!』という映画は、なかなか面白かった。イギリスには、100年以上の歴史を誇る世界最高峰のガーデニング大会「チェルシー・フラワーショー」というものがあるらしい。そこで、2002年に史上最年少で優勝したアイルランドのメアリー・レイノルズという景観デザイナーの実話の映画化だ。

アイルランドの片田舎で育ったメアリー(エマ・グリーンウェル)は、首都のダブリンに出て有名ガーデン・デザイナーのシャーロットのアシスタントを務めるものの、さんざんこき使われた挙句に描きためたデザインノートを盗まれ、クビになってしまう。夢を諦めきれないメアリーは、世界中の注目が集まるチェルシー・フラワーショーでの金メダルを目指す。2000件もの応募の中から、たった8枠しかない出場権を獲得するが、資金繰りや協力者探しは難航。それでも植物学者クリスティ(トム・ヒューズ)や風変わりな庭師たちとともに優勝を目指すのだが……。

早い話が無名の女性のサクセスストーリーなわけだ。だが、実話がベースとはいうものの、「ホンマかいな?」と思うところがたくさんある。例えば、メアリーを利用する有名デザイナー。なんだか昔の大映ドラマにでも出てきそうなステレオタイプな高慢女なのだ。メアリーがいったん断られた大会の出場権を獲得する経緯なども、「都合よすぎじゃないの?」と思ってしまう。

まあ、それは逆に言えば、エンタティメント性を重視したわかりやすい作品ということでもある。なので、誰もが楽しめる映画なのは間違いない。

とはいえ、それだけではさすがに物足りない。このドラマに捨てがたい味わいがあるのは、「大自然」という大きなテーマが背景にあるからだ。

冒頭ではメアリーの幼少時代が描かれる。それはアイルランドの圧倒的に豊かで神秘的な自然との触れ合いだ。妖精らしきものとの不思議体験もある。そうした経験が根底にあることから、メアリーは常に自然をデザインの中心に据える。のちにフラワーショーに応募する「ケルトの聖域」と呼ばれる作品も、野草とサンザシの木を中心に構成されている。

そうした事情をバックに、この映画にはあちらこちらで自然の風景をとらえた印象的な映像が登場する。それが実に美しく見事だ。まさに詩情あふれる映像である。

さらに、ドラマの中盤でメアリーは、アフリカの緑化に情熱を傾ける植物学者クリスティ(かなりのイケ面くん)の協力を得るために、自らエチオピアに出かける。そこではエチオピアの大自然と、地元の人々の文化(ダンスや音楽など)も描かれる。それらも、この映画の大きな見どころ。(ついでに、クリスティとメアリーのロマンスも登場して、定番ネタとはいえ観客を楽しませる。)

後半は、資金難などを乗り越えて、ついに庭園づくりに着手するクリスティの姿が描かれる。ここも定番のサクセスストーリー。しかし、一般的な庭とは異質なユニークなデザインが形になっていく様子は見応えがある。

そして、ラストはついに……。実話ベースだけに結果は最初からわかっているのだが、それでも高揚感が漂う。このあたりも、エンタティメントとして抜かりがない。

この映画全体を貫く「大自然」というテーマは、最後まで明確だ。自然を重視するメアリーのデザインを通して、自然保護の重要性を訴える作り手たちのメッセージが伝わってくる。わかりやすいサクセスストーリーというエンタティメント性と、自然保護を訴えるメッセージ性の融合こそが、この映画の最大の魅力だろう。

今日の教訓 サンザシという植物をこの映画で初めて知ったぜ。そのぐらい植物オンチなのだ。

●今日の映画代1300円(今日もまたまたテアトル系の会員料金です。テアトル系は貧乏映画鑑賞家の強い味方。)