読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

映画貧乏日記

映画貧乏からの脱出は可能なのだろうか。おそらく無理であろう。ならばその日々を日記として綴るのみである。

「エクス・マキナ」

エクス・マキナ
シネマカリテにて。2016年7月13日(水)午後12時より鑑賞。

フリーランスは危険だ。ある日突然仕事がなくなることがある。会社勤めなら、一つの案件が終わっても「じゃあ、今度はこっちの仕事を……」てなことになるのだろうが、こちらはそうもいかない。次の仕事がいつ入るかなんて、皆目見当がつかないのだ。

というわけで目下のオレは、数年間続けてきた一つの仕事が完全に終了し、もう一つの仕事もどうやら終わりそうで、次の仕事の予定が全く未定という状況。早い話がほぼ失業状態である。「この先どーすんだよ?」「何とかしなくちゃまずいだろ!」というヤバイ気持ちでいっぱいなのだ。

にもかかわらず、それでもオレは映画館に通う。何なんだ?このノーテンキさは。もはや救いようがないバカヤローである。完全なるうつけ者である。日本一のお気楽男かもしれない。うむ、自分でいうのだから間違いない。たぶん。

でもねぇ、皆さんだってもうじき仕事がなくなるかもしれませんぜ。ほらほら、人工知能(AI)の開発が進んで、奴らが進化した暁には、人間なんてみんな失業者になるのさ。いやいや、それどころか、人間はAIに滅ぼされるかもしれないのだ! ハ、ハ、ハ……。

などと笑っている場合ではない。嘘だと思うなら『エクス・マキナ』(2015年 イギリス)を観るべし。人工知能(AI)を扱ったコワ~イSFで、監督はディカプリオ主演の『ザ・ビーチ』の原作者で、『28日後...』『わたしを離さないで』などの脚本を担当したアレックス・ガーランド

世界最大の検索エンジンを運営するブルーブック社でプログラマーとして働くケイレブ(ドーナル・グリーソン)は、社内懸賞に当選し、社長のネイサン(オスカー・アイザック)の山荘に1週間滞在するチャンスを得る。しかし、人里離れたその場所では、女性型ロボットのエヴァアリシア・ヴィキャンデル)が待っていた。実はそこは研究施設で、ケイレブが招かれた真の目的は、エヴァに搭載された世界初の実用レベルの人工知能(AI)のテストに協力することだったのだ。戸惑いつつエヴァとの会話を重ねていくケイレブだったが……。

ドラマの軸になるのは、ケイレブとエヴァとのガラス越しの対話だ。そこに怪しすぎる社長のネイサンが絡んでくる展開。

何よりヴィジュアルが印象的な作品である。胴体が半透明のようなエヴァの姿は、アカデミー視覚効果賞にふさわしい見事なヴィジュアル。さらに宇宙基地のように無機質で冷たい雰囲気が漂う別荘の内部なども、うまく作られている。

一方、ストーリーに関してはけっして奇抜ではない。だが、アカデミー脚本賞にもノミネートされたというだけに、ありふれた話を色々な仕掛けで面白く見せている。

まずはケイレブとエヴァの異人種(?)ロマンス。美しくエロティックなエヴァの魅力が全開だ。半透明のボディに服をまとった姿などは背筋ゾクゾクもので、微妙な表情やしぐさも魅力たっぷりである。何しろ演じているのが、『リリーのすべて』で助演女優賞を受賞したアリシア・ヴィキャンデルだもの。ケイレブならずとも惚れちゃうわけだ。

サスペンス的妙味も十分にある。ケイレブがいる施設は時々停電を起こす。その間は監視カメラが働かず、エヴァとケイレブの会話が聞かれることはない。そこでエヴァは「社長を信用しないで」などと謎の言葉を放つ。それを裏付けるかのように、ヒゲ面社長のネイサンはいかにもアブナイ人物だし、それに従うキョウコという日本人女性も謎だらけだ。そんなこんなで終盤に向かって、スリル感と怪しさが募っていく。

ちなみにキョウコを演じるのは、ソノヤ・ミズノというイギリス育ちのバレリーナで、最近映画で売り出し中らしい。8月20日公開の『ハートビート』という映画にも出演している。

さて、やがてケイレブは恐ろしい事実を知る。そこでオレは一瞬、江戸川乱歩の世界に突入するのかと思ったが、そうではなかった。しかし、それにしても気色悪く、おぞましい事実が付きつけられる。そして、最後には衝撃的な出来事が……。

この手のSFには、社会的テーマがつきものだが、この映画にも未来社会への問題提起が感じられる。人間のあくなき欲望が生み出したAI。その行きつく先はどこなのか? 彼らは自ら意思を持って行動するようになるのか? 原爆を開発したオッペンハイマーの言葉なども散りばめて、さりげなく観客に問いを投げかける。ネイサン社長が劇中で「愚かな人間は絶滅する」的な発言をするのだが、それが絵空事とも思えない映画である。

ラストは意味深だ。もしかしたら、AIはすでにあなたの隣にいるのかも!? そんなことまで思わせる。ヴィジュアルを中心に、なかなか魅力的なSF作品である。

今日の教訓 オレの彼女ももしかしたらAIなのか!? あ、彼女いないから関係ないや。

●今日の映画代1000円(毎週水曜日はシネマカリテの映画ファンサービスデーで男女共1000円! 失業中のオレにとって涙もの)