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映画貧乏日記

映画貧乏からの脱出は可能なのだろうか。おそらく無理であろう。ならばその日々を日記として綴るのみである。

「君の名は。」

君の名は。
TOHOシネマズ六本木ヒルズにて。2016年9月14日(水)午後7時15分より鑑賞。

最近の映画館は客層がくっきり分かれている。例えば、「後妻業の女」の観客の年齢層の高いこと。一瞬、18禁ならぬ50禁の映画かと思ったゾ! オレは観ていないのだが「超高速!参勤交代 リターンズ」なんかも同じらしい。その一方で、若者が中心の映画もたくさんある。現在、社会現象化しているアニメ「君の名は。」などは、その最たるものだろう。

さすがに、そういうところにオレのようなオッサンが一人で行くのはやや気が引けたので、仲間数人を道連れにしてやったわい。TOHOシネマズ六本木ヒルズに行ったら、満席でやんの。この映画の何がこんなに若い連中を惹きつけるのか。オッサン、さっそく偵察です!

いやぁ~、オープニングから映像が美しい!! 日本アニメの映像の素晴らしさは今さら言うまでもないわけだが、この作品も見事すぎる映像の連続だ。アニメチックな登場人物と、リアルな背景というアニメ映画の基本を踏襲しながら、究極の映像美を追求している。主人公の高校生2人がそれぞれ住む田舎町と東京の風景、そして彗星到来という宇宙空間の壮大なスペクタクル。すべてのシーンが美しく印象的だ。ここまでくると、もはや文句のつけようもございません。

一方、物語的にはいわゆる男女の入れ替わりのドラマである。山深い田舎町で暮らし、都会の生活に憧れる女子高生の三葉(上白石萌音)は、ある日、夢の中で自分が東京の男子高校生になっていることに気づく。一方、東京の男子高校生・瀧(神木隆之介)は、山奥の田舎町で女子高生になっている夢を見る。やがて2人は、自分たちが入れ替わっていることに気がつく。困惑しながらも、東京に憧れを抱いていた三葉は、東京での学校やバイト生活を楽しむ。一方、瀧も困惑しつつ、女子高生としての生活を送る。

中身と外見のギャップで楽しませるというのは、この手のドラマの定番だが、生き生きとした描写で飽きさせない。

だが、この映画で驚かされるのは中盤以降の展開である。冒頭から彗星接近の話が登場したり、三葉が神職の家系に育ったことを背景に宗教的色合いが濃い場面があるのだが(口かみ酒って飲みたいような、飲みたくないような……)、それがやがて予想外の展開につながっていく。

三葉と瀧は入れ替わった際に、メモを残してやりとりしながら、少しずつ事実を受け止めていく。同時に、2人は心を通わせ、お互いを特別な存在だと意識しだす。ところが、その矢先に2人の入れ替わりが起こらなくなってしまう。そこで瀧は、夢の記憶を頼りに三葉に会いに行く。

ここまでなら、さして珍しい話ではない。胸キュンの青春ラブストーリー的世界だ。ところが、ここから先が驚きの展開なのだ。何と瀧が三葉の住む町に行くと、その町は跡形もなくなっているのである。ガーン!!!

さてさて、お立会い、ここから先は彗星爆発、時間のズレなどSF的世界がさらに深まる展開。単なる男女の入れ替わりからスタートしたにもかかわらず、途中からは宇宙空間や時空まで飛び越えた壮大なスケールの物語になっていくのである。

さらに終盤には、ある事態を阻止しようと奮闘する瀧と三葉の活劇調のドラマまで展開されるのだ。うーむ、スゴすぎるぜ。このぶっ飛び方。

ただし、いろんなものをぶち込みすぎた結果、消化不良で窮屈になってしまったのが残念。そのわかりにくさ対策なのか、後半がセリフの洪水なのも気に入らない。

そして決定的なのが、絶対に余韻を残すべきラストシーンなのに、まったく余韻が存在しない物足りなさだ。その前にいったんすれ違わせた2人を、再度出会わせてベタベタなセリフを吐かせてしまうのだから、もうワケがわからない。なんだ?この雑然さと強引さは。

オレは未見なのだが、新海誠監督は「秒速5センチメートル」「言の葉の庭」などで若者たちの心象風景を繊細に切り取ってきた人らしい。前半などはその片鱗が十分に見られる。それがどうして途中からこうなるのか。もしかしたら、これだけメジャーな体制のもとでの作品は初めてということからして、本人の意図とは関係なしに、いろんな要求でこういうことになってしまったのだろうか。そうとでも考えなければ、収まりがつかないではないか。

まあ、その分、映画をあまり観ないような若い子にウケる映画になったのは確かかもしれない。いろんなものがテンコ盛り。そして、最後にはわかりやすい結末を提供。そういうところが、これほどの大ヒットに結びついたのだろうか。

でもなぁ。どうもモヤモヤするなぁ。少なくとも映像や音楽の使い方などは、日本のアニメのトップクラスに位置する作品だと思う。それだけに、もっと胸キュンさせて、もっと甘酸っぱい思いにさせてくれなきゃね。特に、あの余韻のカケラのないラストを何とかしてほしかった。そうすりゃ、傑作になったかもしれないのに。あーあ、もったいない。

●今日の映画代1100円(TOHOシネマズの毎月14日のサービスデー。)