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映画貧乏日記

映画貧乏からの脱出は可能なのだろうか。おそらく無理であろう。ならばその日々を日記として綴るのみである。

「少女」

「少女」
池袋シネマサンシャインにて。2016年10月11日(火)午後12時50分より鑑賞。

人間は、誰しも心に闇を抱えている。まして感受性の強い少年少女ともなれば、なおさらだろう。オレにもかつてはそういう時期があった(と思う)。湊かなえの原作を「しあわせのパン」「繕い裁つ人」の三島有紀子監督が映画化した「少女」(2016年 日本)のストーリーを聞いた時には、そんな少女の心の闇を胸苦しくなるほど描き出してくれるのではないかと期待した。だが、その期待は残念ながら裏切られてしまった……。

ストーリーはこうだ。幼なじみの高校2年生、桜井由紀(本田翼)と草野敦子(山本美月)。敦子はもともと明るい少女だったのに、剣道の団体戦でのミスが原因でイジメにあっていた。また、彼女はいつも足を引きずっているが、どうやら本当はもう治っているらしい。

一方、そんな敦子を助けられない由紀は、敦子をモデルに小説を書いて自分の気持ちをそこに込めるのだが、それを盗まれてしまう。そして彼女自身にも、幼い頃からの祖母との確執を抱えている。やがて由紀の書いた小説は、国語教師・小倉の名前で新人文学賞を受賞する。

そんな2人の前に、親友の死体を目撃したという転校生・紫織が現われる。死というものに囚われてしまい、本当の死を目撃してみたいと思った由紀は、小児科病棟でボランティアを始める。同じ頃、敦子は老人ホームでボランティアをするようになる……。

映画の冒頭は、十字架の前で女子高生の集団が仰々しく遺書を読む。まるで舞台劇のようなシーンだ。こんなふうに仰々しかったり、鮮烈だったりするシーンがあちこちに登場して、映像的な工夫が感じられはするものの、全体にうわっ滑りしている感じは拭えない。

それというのも肝心の核になる話が弱すぎるからである。由紀と敦子、ともに暗い過去を持ち「闇の中にいる」2人が友情を深め、お互いに成長して、その暗闇を抜け出すというのが、この映画の本筋だろう。ところが、実際は話があっちに行きこっちに行きして、とりとめがない。

例えば、由紀が書いた小説を教師が盗み、それが新人賞を取ってしまうという一件。由紀は彼を憎み「死ねばいい」と思う。そして実際に、彼は死んでしまう。その死の真相を暴くミステリーかホラーにでもなりそうだが、そういう展開でもない。扱いが中途半端極まりないのだ。

その後は、「親友の死体を見た」という謎の転校生が現れたり、「自殺した死体を見た」という男子生徒が現れたりして、「死」というものが前面に出てくる。それを受けて、由紀と敦子は死というものに対して強い関心を持つようになる……というのだが、何だかそれも中途半端で、とても少女たちの心の闇を描いたといえるほどの深い描写はない。

だいたい、謎の転校生が痴漢をネタにオヤジを恐喝するエピソードは何なんだ? この物語においてどういう役割があるのか意味不明である。今の高校生の実態を投影させるつもりだったのだろうか。それにしては曖昧すぎるエピソードだ。

後半は夏休みの出来事が描かれる。由紀は、自分も本当の死を見てみたいと思い、難病の子供がいる病院でボランティアをする。そうこうするうちに、入院患者の男の子たちと仲良くなる。一方、敦子のほうは老人施設でボランティアを始める。

そこで「生と死」について向き合った2人は、新たな一歩を踏み出す……と言いたいところだが、そこもグダグダしてよくわからない。

そもそも由紀と敦子の人間ドラマが浅すぎのだ。一応、過去の回想を使ったりして、それ風に描いてはいるものの、「闇の中にいる」わりには彼女たちの心情がきちんと伝わってこないのである。おかげで、あの年頃の女の子特有の繊細な感受性や、心の闇なども見えてこない。

そして相変わらず、どうでもいいようなエピソードが目白押しだ。中年エロオヤジが由紀に迫るというのは、何の目的で挿入されたエピソードなのか。由紀の施設で働く男性スタッフ(演じるのは稲垣吾郎)の痴漢冤罪と家族崩壊の話も、このドラマにおける位置づけが曖昧だ(しかも、彼があの子の父親だなんて偶然すぎだゾ!)。

それでも、最後のほうになってようやく由紀と敦子の友情物語的な展開が訪れる。2人の疾走シーンがいかにも青春映画らしく、暗闇からの脱出を印象付ける。

と思ったら、何じゃ? この最後のエピソード。あのエロオヤジとあの子が? はぁ? いくらなんでも都合よすぎだろう。これって、単にハッピーエンドにしたくなかっただけなんじゃないのか? まったく意味が不明だ。あと味が悪すぎる。

演出はともかく、脚本はもう少し何とかならなかったものか。オレは原作は未読なのだが、とにかく原作にあるいろんなものをぶち込んで、無理やり1本の映画にしたとしか思えない。小説と映画は別物なのだから、そこをよく考えてほしかった。「湊かなえ原作」というだけで飛びついている場合ではないぞ。製作委員会の諸君。映像などには観るべきものがあるだけに、本当に残念な映画である。

というわけで、オレにはどこが面白いのかさっぱりわからなかった映画ではあるが、そんな中で本田翼と山本美月はカワイかったゾ(笑)。まあ、そのへんだけは楽しめましたけど。

●今日の映画代1400円(これまた鑑賞券を事前に購入。でも、観なくてもよかったかな)