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映画貧乏日記

映画貧乏からの脱出は可能なのだろうか。おそらく無理であろう。ならばその日々を日記として綴るのみである。

「7分間」~第29回東京国際映画祭(コンペティション作品)

「7分間」~第29回東京国際映画祭コンペティション作品)
TOHOシネマズ六本木ヒルズにて。2016年10月26日(水)午後2時10分より鑑賞。

東京国際映画祭で観た合計23本の映画について、順番にアップしようと思ったのだが、忙しくて全然進行しない! まあ、何とか暇を見て上げていこうとは思うのだが、もしかしたら1年ぐらいかかるかもね。そのうちに来年の映画祭が始まったりしたら、目も当てられませんけど。

さて、今年2本目に観たのは、コンペ作品の「7分間」(2016年 イタリア・フランス・スイス)という映画。労働問題という社会派ネタを、ミケーレ・プラチド監督が、スリリングな集団ドラマに仕上げた見応えある作品だ。

舞台となるのはフランス資本に買収されたイタリアの繊維工場。新しい経営陣と工員代表=工場委員会という11人の女性たちのうち最もベテランの女性リーダー(オッタヴィア・ピッコロ)が話し合う。工場閉鎖か、あるいは解雇か、戦々恐々とする工員たちが見守る中で、話し合いらしい話し合いもなくどんどん時間が過ぎていく…。

密室で何が起きているのかわからない前半。工員たちのジリジリする思いが伝わってくる。それだけで十分にサスペンスフルなのだが、さらに工場委員会の11人のメンバー、それぞれが抱えた事情が見え隠れしてくる。移民、ベテランと若手、妊娠中の女性、子供を抱えた女性、工場内の事故で車椅子生活になった事務員などなど。

やがて、経営陣は工員代表に手紙を託す。そこには工員への感謝とともに、「休憩時間を7分間短くしたい」という意外な提案が書かれていた…。

ここからはメンバー間の対立が先鋭化していく。はたして経営陣の提案を受け入れるべきか。最初は「たった7分間」とみんな思うのだが、リーダーの発言をきっかけに空気が変わっていく。「はたして7分間の短縮は、それだけで終わるのか。それは単なる始まりでしかないのではないか……」。

各人が背負った様々なものがぶつかり合い、事態は複雑になっていく。名作「十二人の怒れる男」を思わせるタッチだが、女性だけが本音をぶつけ合うだけに容赦がないし、よりスリリングになっている。まるで舞台劇を見ているかのような緊張感が漂う。

やがてこの工場ではもともとの休憩時間が60分だったのに、それがだんだん短縮されたことが明かされる。また、車椅子の事務員が経営陣によって不利な契約を結ばされたことなど、工場の暗部が見えてくる。そうした事情も絡んで、メンバーの苦悩はいっそう深くなっていく。

ラストはついに結果が出されたところで、ジ・エンド。はたして、あの結論の後、工員たちはどんな運命をたどったのか。あれこれ考えさせられる結末だ。

イタリアが舞台とはいえ、グローバル化が進んだ現在、これはどこの国でも起こりうる出来事だろう。日本でも海外資本による買収と、それに伴うリストラが珍しくない時代だけに、なおさらいろいろなことを考えさせられるのである。コンペ作品だけあって、見応えタップリの作品だ。

●今日の映画代、関係者向け上け上映につき無料。