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映画貧乏日記

映画貧乏からの脱出は可能なのだろうか。おそらく無理であろう。ならばその日々を日記として綴るのみである。

「人魚姫」

「人魚姫」
シネマート新宿にて。2017年1月15日(日)午後2時35分より鑑賞。

返還前の香港には何度か行ったことがあるが、今はどうなっているのだろうか。中国政府の影響力が強まり、自由が制限されているなどという話も聞くわけだが、少なくとも香港映画界にとって返還はプラスだったと思う。なにせあれだけたくさんの人口を相手に商売ができるのだ。製作資金だって大陸の潤沢な資金を導入できるのだ。

というわけで、中国・香港合作映画には、なかなか面白い映画があったりするわけだが、残念ながら日本にはあまり入ってこないのがもったいない。

そんな中、東京・新宿のシネマート新宿など、一部で細々と上映されている中国・香港映画が「人魚姫」だ。「少林サッカー」「西遊記 はじまりのはじまり」のあのチャウ・シンチー監督の映画である。にも関わらずこの公開規模は寂しいではないか。いや、そのシネマートも1日2回の上映。それでも大きな劇場がほぼ満席に近い入り。うーむ、配給会社ったら弱気だよなぁ。

人魚をネタにしたファンタジー。話自体はありがちなストーリー。冒頭は海洋開発や研究風景をコンパクトに提示。これが、このドラマの背景になっている。続いて登場する入札シーン。若き実業家のリウ(ダン・チャオ)が、リゾート開発を目論んで海辺の自然保護区の土地を買収する。リウは美しき社長令嬢が率いるリゾート会社と手を組む。その会社は、海洋生物を追い払うために巨大なソナーを設置している。

そのソナーに追われたのが人魚族だ。難破船に陣取った彼らは、リウの進める海の埋め立てプロジェクトを阻止すべく、リウの暗殺を計画する。作戦は美しい人魚のシャンシャン(リン・ユン)を使ったハニートラップ。人間に紛争した彼女を送り込み、彼女の美しさにリウが油断したところで、殺してしまおうというわけだ。ところが、シャンシャンはリウの暗殺に失敗しただけでなく、2人は惹かれあってしまう……。

このドラマ、前半から笑いの波状攻撃が続く。まるでドリフターズのコントのようなベタな展開や、お下劣ネタも含んだギャグの連続。例えば、下半身がタコの人魚族のリーダーを使って笑いを取るなど、わかりやすい笑いが続く。ベタな笑いが苦手なオレだが、ここまでベタベタだともはや笑うしかない。爆笑してしまいました。ハイ。

難破船の内部をスケートボードやトランポリンを使って移動したり、巨大なパチンコを使って外に脱出したりといった外連味にあふれた仕掛けも楽しさを生み出している。そこに暮らす人魚族もユニークな面々が勢ぞろいだ。前述したタコのリーダーはもとより、長老らしきおばあさんなども含蓄のある言葉を述べ、要所要所で活躍する。

シャンシャンとリウが惹かれあうという展開は、何ともお手軽なラブロマンスではある。エロい社長令嬢がその間でうごめくのも、よくあるパターン。それでも「強欲な金まみれの男に見えたリウが、実は孤独を背負っていた」といったあたりのツボを押さえながら、テンポ良く描写する。はては2人が掛け合いで歌を歌うミュージカルのようなシーンまで登場する。とにかく、あの手この手で楽しませてくれるのだ。おかげで、よけいなことは考えずに、スクリーンに引き込まれてしまう。

それにしてもいろんな要素がテンコ盛りだ。クライマックスにはアクションも用意されている。リウの後ろ盾になっていた社長令嬢と、その配下の研究チームが人魚族に攻撃を加え、彼らは絶体絶命のピンチに陥る。ちなみに、そこで中国語を巧みに話す西洋人が活躍するのだが、あれは誰だ?違和感ありまくりで面白いぞ。

そして、そこに登場してシャンシャンを救ったのが、そうあの人物である。てか、まあ、ラブロマンスなのだからしてアイツしかないわけだが。

というわけで、ラストにはほっこりざせられる後日談が待っている。この映画全体を貫く「自然保護」というテーマも、ここでさらにクッキリと浮き彫りになる仕掛けだ。

ここに至って、最初はただのお茶目な少女だったヒロインのシャンシャンが、立派な美しい女性に成長しているから偉いもの。演じるリン・ユンは、オーディションで選ばれたそうだが、その初々しさは特筆ものである。

それに合わせて、最初はただの金と女まみれの強欲男だったリウも、最後には素敵な男性に変身している。このあたりの見せ方も、なかなかのものだ。

わかりやすい社会派のテーマも背景に込めつつ、ラブロマンスを中心にあの手この手で観客を楽しませる。まさに、これぞエンタメ映画!という感じの映画。こういうのは香港映画ならお手のものだろう。そこに中国資本が加わってスケールが拡大しているのだから、面白くないはずがない。

それにしても、昔はこういう映画がもっとたくさん日本で上映されていたような気がするのだが。たくさんの観客の中で、ちょっと懐かしい気分になったオレは完全なオッサンである。

●今日の映画代、1300円。テアトル系のTCGメンバーズカードで鑑賞。