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映画貧乏日記

映画貧乏からの脱出は可能なのだろうか。おそらく無理であろう。ならばその日々を日記として綴るのみである。

「王様のためのホログラム」
TOHOシネマズ シャンテにて。2017年2月21日(火)午後12時20分より鑑賞

そろそろ確定申告の時期なので、空いた時間に昨年の収入と支出の計算をしてみた。すると驚くべきことが判明した。オレの昨年の年収は、一昨年の年収に比べて激減していたのだ。ガーン!!!!!

なるほどねぇ。どうも最近貯金が減ってきたと思ったら、そういうことだったんですか。考えてみたら、レギュラーの仕事がなくなったのに、新しい仕事が入らなかったもんなぁ。でも、こんなに年収が減ったら、税務署に疑われたりしないものだろうか。ていうか、この先、オレは生存していけるのか???

そんな困った状況にもかかわらず、またしても映画館に足が向いてしまうオレ。なぜそうなるのか。それは、そこに映画があるからだ!(お前は、ジョージ・マロリーか!)

というわけで、この日鑑賞したのは「王様のためのホログラム」(A HOLOGRAM FOR THE KING)(2016年 アメリカ)である。トム・ハンクス主演にもかかわらず、比較的小規模な公開だったのであまり期待しなかったのだが、これがなかなか面白い映画なのですヨ。

監督は「ラン・ローラ・ラン」「パフューム ある人殺しの物語」「クラウド アトラス」(ウォシャウスキー姉弟と共同監督)などで知られるトム・テイクヴァ。原作はデイヴ・エガーズという人のベストセラー小説。

冒頭は、主人公のアラン(トム・ハンクス)がトーキングヘッズの「ワンス・イン・ア・ライフタイム」という曲に合わせて、ラップ風に身の上話をつぶやく。「立派な車もステキな家も美しい妻も、煙のように消えてしまった」と。このポップで軽快なシーンを観ただけで、すっかり引き込まれてしまった。

大手自転車メーカーの取締役だったアランだが、業績悪化の責任を問われて解任されてしまう。家も車も失い妻も去り、娘の養育費を稼ぐためにIT業界へ転職した彼は、サウジアラビアの国王に最先端の映像装置(3Dホログラム)を売りに行くことになる。

というわけで、転落した男の一発逆転をかけた再起の物語なのだが、全編に笑いがたっぷり詰まっている。特に面白いのが、アランと運転手のユセフとのやりとりだ。アメリカ留学の経験があるユセフは、お調子者でおしゃべり。車の中では大音量で音楽(シカゴとかELOとか)を流す。そんな彼とアランとの会話がたくさんの笑いを生み出していく。

その他にも、異文化をネタにした笑いがたくさん用意されている。異文化ネタというと、一歩間違えば相手をバカにしたようなところが見えたりするものだが、この映画に関してはそういうところはほとんどない。

アランはサウジアラビアの新都市に行く。ところが、そこは砂漠のど真ん中。将来はともかく、今は都市などと呼べる代物ではない。そこでアランと部下たちに用意されたオフィスはオンボロのテント。Wi-Fiもつながらず、ランチを食べるのもままならない。抗議しようと思っても、担当者のカリームはいつも不在で、肝心のプレゼン相手の国王がいつ現れるかわからない。

あまりの文化の違いに戸惑い、上司からのプレッシャーを受け、怪しげなパーティーでカリームの部下のデンマーク人の女に誘惑されるなど、無茶苦茶な状態になったアランは、ついに心身の調子を崩してしまう。それでもアランは少しずつ現地の文化を受け入れるようになっていく。

そうなのだ。この映画は転落したアランが再起を目指して悪戦苦闘するドラマであるのと同時に、異文化との衝突と融合を描いたドラマでもあるわけだ。

クライマックスで、アランはようやくプレゼンにこぎつける。ありがちなドラマなら、それをきっかけにビジネスでの再起に向かうはずだ。しかし、この映画では彼の再起は別な形で実現する。

劇中では背中に突然できたコブの治療に絡んで、美人の女医ハキム(もちろん地元の人)が登場する。彼女とアランとのロマンスも、この物語の大きな柱だ。ただし、それは単なるロマンスではない。異文化共生の象徴なのである。最初は異文化に戸惑っていたアランだが、次第にそれを受け入れて、幸せをつかみ、再起を果たす。それがロマンスを通じて表現されているのが、この映画のユニークな点だ。

製造拠点が海外に移って空洞化したアメリカの産業についての話が出たり、アラブの民主化運動の話が出たりと、現代の世界情勢もさりげなく盛り込むなど、なかなかよくできた脚本である。映像もキレがあって魅力的。楽しく笑いながら、主人公の再起のドラマを通して、異文化との共生の大切さが伝わってくるはずだ。

それにしても、トム・ハンクスはこういうコメディーが似合うよなぁ。

●今日の映画代、1400円。毎週火曜はTOHOシネマズの会員(シネマイレージ)デーで、割引。貧乏なので助かります。