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映画貧乏日記

映画貧乏からの脱出は可能なのだろうか。おそらく無理であろう。ならばその日々を日記として綴るのみである。

「チア☆ダン 女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話」

「チア☆ダン 女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話」
TOHOシネマズ日本橋にて。2017年3月16日(木)午後6時55分より鑑賞(スクリーン4/D-10)。

昨日のことぐらいなら憶えているが、昔のことなんて憶えちゃいない。高校生の頃に自分が何をしていたのかなんて、これっぽっちも思い出せない。一度だけ部活に参加した記憶があるのだが、何でやる気になったのか、そして何でやめたのか、今となっては全然記憶にない。あとはずっと帰宅部だった。そんなこんなで、一生懸命に部活をやっている高校生とかを見ると、ちょっぴりうらやましい気持になったりするのである。

「チア☆ダン 女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話」(2017年 日本)は、タイトル通りにチアダンスに熱中する女子高生たちの青春スポ根映画だ。福井県の高校のチアリーダー部が全米チアダンス選手権で優勝したという、実話をもとにしている。

主人公は友永ひかり(広瀬すず)という女の子。県立福井中央高校に入学した彼女は、中学からの同級生でサッカー部に入った山下孝介(真剣佑)を応援したくて、チアリーダー部に入る。ところが、そこに待ち受けていたのは顧問の早乙女薫子(天海祐希)というスパルタ教師。彼女はチアダンスの全米大会制覇を目標に掲げ、おでこ出し必須、恋愛禁止など厳しい指導をする。最初はやる気のなかったひかりだが、早乙女に反発した先輩が退部したこともあって、練習に打ち込むようになる……。

この手の青春スポ根ドラマでは、部員たちのキャラが重要になる。その点、この映画はなかなかユニークなキャラが揃っている。男の子のために部に入った主人公のひかりをはじめ、ダンスの得意な彩乃、いつも暗い顔の唯、太めの体型の多恵子などいずれも個性派ばかり。早乙女先生の前で一人ずつ踊るシーンで、端的に彼女たちのキャラを表現する仕掛けが秀逸だ。

そしてユーモアも満載である。あちらこちらに笑いが散りばめられている。しかもけっこうマンガチックな笑いが多いのが特徴。漫才のボケとツッコミのような会話や大げさな映像(早乙女先生の登場シーンなど)などで、わかりやすい笑いを振りまいていく。

その一方で、青春ドラマらしい醍醐味もある。目標に向かって努力する部員たちだが、そこには様々な困難が待ち受けている。初の大会で大失敗したり、練習の過程で仲間割れしたり。そうした困難を乗り越えながら、友情をはぐくんでいく部員たちの姿がまぶしく映る。もちろん、厳しい練習シーンもところどころに織り込まれている。

というわけで、楽しい映画なのは間違いがないけれど、部員たちの人間ドラマが足りないんじゃないの?

と思ったら、中盤でひかりの家庭が登場。元高校球児の父親、そしてやはりチアリーダーだったらしい亡き母の存在を示し、ひかりのアイデンティティーを刻みつける。また、多恵子の複雑でつらい家庭環境なども描く(シングルマザーらしき安藤玉恵の演技が相変わらず絶品)。

主要な部員それぞれに見せ場を用意して輝かせるのも、巧みな手腕だ。その反面、主人公のひかりは、中盤まではあまり目立たないのだが、後半に彼女にケガをさせて追い込み、そこからの復活劇を通して主役らしい存在感に導いていく。

監督の河合勇人は『鈴木先生』『俺物語』などを監督しているが、けっこうな苦労人らしい。それだけにキッチリとツボを押さえた演出が目立つ。

この映画のクライマックスは、当然ながら全米大会である。実は、チアダンスの映画にもかかわらず、実際に部員たちが踊るシーンはあまりない。その封印を解いて、貯めに貯めて、満を持して、全米大会決勝での迫力のダンスシーンが披露される。相当に練習したらしい役者たちのダンスと、切れのある映像は観応え十分でワクワクさせられる。

ちなみに、その大会の様子を、男女のアナウンサーによるお茶らけ実況中継で描くところは、この手の映画の定番パターン。アメリカ映画「ピッチ・パーフェクト」などでもおなじみだ。そのあたりも、エンタメのツボを押さえている。

ところで、肝心のスパルタ教師・早乙女に関しては、ドラマらしいドラマが登場しないのはなぜだ。あんなに極端なスパルタ指導をするには、それなりの事情があるのではないか。でなきゃただのアホでしょ。

と思ったら、最後のほうでようやくその理由が明かされる。なぁ~んだ。それだけか。と思わないでもないのだが、まあ一応は納得できる。そして、そこから師弟の絆の爆発へとつなげていくわけだ(でも、あの後日談は余計かな)。

かなり無茶だったり、マンガチックなところの多いドラマだが、何しろ実話だという裏付けがあるので強い。最後は素直に感動してしまった。

何よりもこの映画を魅力的にしているのは、若い女優たちのキラキラした輝きっぷりだろう。広瀬すず中条あやみ山崎紘菜、富田望生、福原遥など、いずれも素晴らしい演技だった。

全体に人間ドラマが薄味なきらいはあるものの、これだけ笑わせて、ワクワクさせて、感動させてくれるのだから、青春スポ根映画としては上出来の部類だろう。リアルタイムに青春を生きている若者だけでなく、かつて青春時代を過ごしていた人たちにも元気を与えそうな映画だと思う。

しかし、オレらが高校生の頃に、チアリーダーなんていたかなぁ? あ、男子高だったからそんなものなかったわ。むさい男の応援団だけ。何とも悲しい青春であった(涙)。

●今日の映画代、1400円。直前に池袋で鑑賞券購入。