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映画貧乏日記

映画貧乏からの脱出は可能なのだろうか。おそらく無理であろう。ならばその日々を日記として綴るのみである。

「T2 トレインスポッティング」

「T2 トレインスポッティング
新宿ピカデリーにて。2017年4月10日(月)午前11時20分より鑑賞(スクリーン2/F-15)。

アンダーワールドのヒット曲「ボーン・スリッピー」が流れてくると、必ず思い浮かべる映画がある。1996年製作のイギリス映画「トレインスポッティング」だ。日本でも単館系映画ながら大ヒットし、特に若者たちの間でカルト的な人気を獲得した。

それから20年。まさかの続編登場だ。しかも、ダニー・ボイル監督、脚本のジョン・ホッジ、主演のユアン・マクレガーなど主要スタッフ、キャストが再結集した奇跡のような映画である。これを見逃す手はない。さあ、映画館にGO!

というところで大変なことに気づいてしまった。よくよく考えたらオレ、前作を観てないじゃん。なにせ周囲であれだけ話題になっていたので、すっかり観た気になっていたのだ。やれやれ面目ない。

そこでさっそく近所のレンタル店でDVDを借りようと思ったら貸し出し中。そりゃそうだよね。しょうがない。動画サイトで観るか。と検索してみたら、なんとGyaO!で無料視聴できるではないか! まあ、有料より画質は落ちるし、途中で何度かCMが入るが、なんたってタダですからね。贅沢は言えません。

こうして20年越しで鑑賞コンプリート。いやぁ~、これは人気になるはずだ。閉塞感漂う社会を背景にドラッグと犯罪に走る若者たちを、ぶっ飛んだ映像と音楽で描いた青春ドラマ。まさに最低のやつらを描いた最高の映画なのだ。20年越しでファンになってしまったオレなのである。今さらかよッ!

そんなこんなで、ようやく観に行った「T2 トレインスポッティング」(T2 TRAINSPOTTING)(2017年 イギリス)。前作のラストで仲間たちを裏切り、麻薬取引で得た大金を持ち逃げしたマーク・レントンユアン・マクレガー)。オランダにいた彼が20年ぶりに故郷のスコットランジ・エディンバラに帰ってきたところからドラマが動き出す。実家では母はすでに亡くなり、年老いた父親が一人暮らし。

一方、かつての仲間たちはどうなっているかといえば……。ジャンキーだったスパッド(ユエン・ブレムナー)は妻子に愛想を尽かされ、自殺まで考えている。シック・ボーイ(ジョニー・リー・ミラー)はパブを経営しながら売春や恐喝(ほぼ美人局)で稼いでいた。そして、一番血の気の多かったベグビー(ロバート・カーライル)は刑務所に服役中。マーク自身も最初は幸福そのものだと自慢していたものの、実はそうでないことがわかる。こうして相変わらずな悲惨な人生を送る4人だったが……。

映画全体のタッチは前作と同じだ。ぶっ飛んだ映像、前作でも効果的に使われたイギー・ポップアンダーワールド、ブロンディーをはじめ新旧様々なアーティストによる音楽(今回もサントラは絶対に買い!)など、アバンギャルドな世界観が健在だ。

毒に満ちた笑いも満載。マークとシック・ボーイが盗みに入ったパーティー会場で、歌を歌わせられるはめになる(しかもカトリックプロテスタントの対立をネタにした歌)シーンでは、思わず爆笑してしまった。20年前と変わらないダニー・ボイルの若々しい演出は驚異的でさえある。

とはいえ、さすがに年をとったかつての若者たち。冴えない日々なのは昔と同じでも、昔のような輝きや未来への可能性はない。そこには中年の悲哀や焦りがジワジワとにじみ出す。シック・ボーイの彼女だという東欧から来た女が、マークにこう言うシーンがある。「あなたたちは過去に生きている」と。

昔の輝きを取り戻そうとばかりに、マークはシック・ボーイと組んでひと儲けしようとする。それにスパッドも協力する。しかし、なかなかうまくいかない。そのダメダメさとポップなタッチのコントラストが、絶妙の味を生んでいる。

味といえば、役者たちもいい味を出している。主要キャストは当時はまだ駆け出し。しかし、いまやスターとなったユアン・マクレガーをはじめ、ユエン・ブレムナージョニー・リー・ミラーロバート・カーライルのいずれもが、個性的な役者に成長している。そのキャリアの積み重ねが演技に奥行きを与えている。

例えば、劇中でユアン・マクレガーがSNSの普及など現在の社会への皮肉をまくしたてるシーンがあるのだが、それが結局自分自身の惨めな現在につながってしまう。そのあたりで漂う哀愁がたまらないのである。

そんな中、刑務所を脱走したベグビーは、大金を持ち逃げした宿敵マークの帰郷を知り激怒する。終盤はついにマークとベグビーの対決だ。それにスパッドが書いた小説が絡み、脇役だと思っていたシック・ボーイの彼女が重要な役割を果たす。何ともケレン味にあふれた展開が心を躍らせる。

その後、前半でマークが一度かけてすぐにやめたレコードに、ラストでもう一度針を落とすシーンが心憎い。あの名曲が鳴り響き、ポップな映像が流れた瞬間、思わず拍手しそうになってしまった。これぞ快作!!

前作は正直なところドラマ的には、それほどの深みはなかった。アバンギャルドなタッチが破格の魅力を醸成し、観客をすっかり酔わせていた。まるでドラッグのように。

今作は、そんな前作の良さをきっちり押さえつつも、さらにドラマ性が高まってパワーアップしている。前作のファンは、続編ができると聞いて期待するのと同時に、「大丈夫なのか?」という危惧もあっただろうが、これなら安心、というか大満足だろう。

ちなみに、この映画には前作を踏まえたシーンや展開がたくさんある。そこに関しては、前作の映像をそのまま使うなどして配慮しているので、前作を観ていなくても楽しめるだろう。それでも前作を観ておけば、なおさら楽しめるのは間違いない。

なんて、直前にようやく観たオレが偉そうに言える筋合いじゃないんですが……。

●今日の映画代、1400円。事前にムビチケ購入済み。