読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

映画貧乏日記

映画貧乏からの脱出は可能なのだろうか。おそらく無理であろう。ならばその日々を日記として綴るのみである。

「PARKS パークス」

「PARKS パークス」
テアトル新宿にて。2017年5月10日(水)午後1時50分より鑑賞(D-19)。

井の頭恩賜公園(井の頭公園)は、東京都武蔵野市三鷹市にまたがる都立公園だ。園内は三代将軍徳川家光が命名したとされる井の頭池とその周辺、雑木林と自然文化園のある御殿山、そして運動施設のある西園と、西園の南東にある第二公園の4つの区域に分かれている。また、吉祥寺通りを挟んで井の頭自然文化園という動物園があり、日本で飼育されたゾウの長寿記録を持つ「はな子」がいたが、惜しくも2016年5月26日に69年に及ぶ生涯を閉じた。合掌。

などと偉そうに言っているが、ただの受け売りである。実のところオレはほとんど、この地に足を運んだことがない。別に避けていたわけではない。同じ東京でも生活圏が違うし、近隣に知り合いもいなかっただけだ。

そんな井の頭公園は、1917年(大正6年)5月1日が開園日。つまり、今年は開園100周年。それを記念して映画「PARKS パークス」が製作された。企画したのは、公園に近い吉祥寺で長らく営業していた(2014年6月閉館)映画館バウスシアターの元総支配人、本田拓夫氏だ。

この映画は、井の頭公園と吉祥寺の街を舞台に、50年前に恋人たちが作った曲と、現代に生きる3人の若者たちがつながっていく様子を描いた青春音楽ドラマである。

主人公は井の頭公園のそばにあるアパートに住む女子大生の純(橋本愛)。恋人にフラれ、大学からは留年通知が届き途方に暮れていた。そんな中、見知らぬ女子高生ハル(永野芽郁)が突然訪ねてくる。亡き父・晋平について小説を書くために、晋平の恋人・佐知子の消息を求めて、彼女の住んでいた住所にやって来たというのだ。

ゼミのレポートの題材になればと考え、純は佐知子探しを手伝うことにする。やがて2人は佐知子の孫トキオ(染谷将太)と出会い、佐和子が亡くなったことを知らされる。数日後、トキオは祖母の遺品の中からオープンリールテープを発見する。再生してみると若い頃の晋平と佐知子の歌声が入っていた。興奮した3人は、劣化して途中で切れているその曲を完成させようとするのだが……。

正直なところご都合主義が目につくドラマだ。純の住むアパートは、ハルの父・晋平の恋人・佐知子が50年前に住んでいたところ。それにしてはきれいすぎだろッ! リフォームしたのか? 建て替えたのか? おまけに、そこで出会ったばかりの純とハルがすぐに親しくなって、一緒に佐和子探しを開始しただけでなく、挙句は一緒に住むというのも都合よすぎでしょ。

とまあ、ツッコミどころは満載なのだが、前半はそれを上回る魅力がある。何よりも50年前の1本のテープに録音されたラブソングを、現代の若者たちがよみがえらせることで、過去と未来をつなぐ発想が秀逸だ。3人の若者は曲を仕上げるために、公園の音を録音したり、当時の出来事を調べたり、50年前の恋人たちの心情に思いをはせたりと奮闘する。

そんな彼らの姿を、「嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん」の瀬田なつき監督が軽快に、生き生きと、そしてユーモラスに描写する。3人のセリフはまるでアドリブのように自然だ。それもまた青春映画としての瑞々しさを際立たせている。

若者たちが完成を目指す曲をはじめ、劇中の楽曲も魅力的だ(音楽監修はトクマルシューゴ)。いかにも昔のフォークソング風な曲が、ラップも加わった現代風の曲によみがえったのには驚かされた。

もちろん開園100周年記念映画だけに、井の頭公園や吉祥寺の風景もふんだんに織り込まれている。特に井の頭公園の四季折々の豊かな表情が素晴らしく、この場所に縁遠い人オレも心を動かされてしまった。

さて、映画の後半では、吉祥寺で開催される音楽フェスに純たちが出演して、そこで例の曲を披露することになる。メンバーを集めて、バンドを組んで、着々と準備を進める。当然ながら、そこには困難もあるだろう。しかし、彼らはそれも乗り越えて、クライマックスのステージで大燃焼、という展開を期待したのだが……。

これから観る方もいると思うので詳しいことは伏せておくが、後半は青春映画としての魅力が失速してしまう。ステージ直前のメンパーの食中毒、曲に不満を持つハル、過去のトラウマに悩まされる純? 何だかいろんなものがごちゃごちゃと登場して、まとまりがないのだ。その後の純とハルの亀裂も不自然に思える。

昔の恋人と今の若者が会話をするような実験的映像もたくさんあるのだが、後半はそれがうわっ滑りしているような感じを受けた。ありきたりの青春映画にしたくないという意図はわかるのだが、何だかとっ散らかってグダグダになってしまった印象がぬぐえない。個人的には、そのあたりをもう少し練り上げて欲しかった気がする。

それでも例の曲に乗って、街の人たちが踊るMV風の映像などは盛り上がるし、井の頭公園や吉祥寺の街の魅力は十分に伝わってきた。作り手の熱い思いが感じられる。そういう意味ではあと味は悪くないし、一見の価値がある映画といえるかもしれない。3人の若者たちを演じた橋本愛永野芽郁染谷将太の生き生きとした演技も魅力である(染谷将太はラップを披露)。

ちなみに、「井の頭公園のボートにカップルで乗ると別れる」という噂があるのだが(劇中にもその話が登場)、本当だろうか。昔から一度試してみたいと思いつつ、そのチャンスがないまま今日まで来てしまったのが残念である。

●今日の映画代、1100円。毎週水曜のサービスデー料金。