映画貧乏日記

映画貧乏からの脱出は可能なのだろうか。おそらく無理であろう。ならばその日々を日記として綴るのみである。

「いぬむこいり」三度

6月27日(火)午後6時から新宿ピカデリーで、映画「いぬむこいり」の一夜限りの上映が行われた。「いぬむこいり」といえば、5月に新宿K’s cinemaで1日1回のみ、約2週間に渡って上映された。その間、劇場は満席かほぼそれに近い入りだったようだ。

それを受けて新宿ピカデリーの大スクリーンでの上映となったわけだが、これはかなり異例のことだと思う。メジャーな映画会社が関係しないインディーズ映画であるうえに、この映画、何と全4章、4時間5分という桁外れの長尺映画なのだ。それを一夜限りとはいえ、超メジャーなシネコンで上映しようというのだから、配給側も、受け入れたピカデリー側も勇気がある。

実のところ前日までの予約状況を見たら、全500席のうち3分の1も埋まっていなくて心配したのだが、当日になったらかなりの賑わいで一安心。む? てことはオレも行ったのか??

そうなのである。この映画、オレの好きなロック・ミュージシャンのPANTAが主要な役で出演。今年結成20周年を迎えたバンド「勝手にしやがれ」の武藤昭平も準主役級で出演。というわけで、映画公開前のプレイベントとして、この2人を中心にしたライブ「勝手にPANTA」が5月上旬に新宿ロフトで開催され、興味を引かれて観に行ったのだ。

その時点では映画を観に行くかどうか迷っていたのだが(なにせ4時間超だし)、ライブが大いに盛り上がったため、その勢いで帰りに鑑賞券&パンフ(サイン入り)を購入してしまったのである。おまけに主演の有森也実も、昔、山田洋次監督の「キネマの天地」で観て以来、好きな女優だったりして……。

となれば、足を運ばないわけにはいかない。どうせならと公開初日に新宿K’s cinemaにて鑑賞。そして度肝を抜かれた。何じゃ? こりゃ。たいていの長尺映画は、ふだんならカットする細かな描写まですくい取ったがゆえに長尺になった……というものなのだが、この映画はまったく異質だった。4時間5分の中に、様々なものがぶちこまれ、まさにカオスのような世界なのだった。

その後、あまりの衝撃に再度K’s cinemaにて鑑賞。そして、今度は貴重な大スクリーンでの上映ということで、ついつい三度目の鑑賞と相成ったのである。いや、そのぐらいクセになる映画なのですよ。少なくともオレにとっては。

映画そのものの詳しいレビューは、以前書いたのでそちらに譲るが、今回大スクリーンで観て最も強く感じたのは、映像の見事さである。特に第3章の舞台となった孤島、第4章の舞台となった戦争が続く島の映像の美しさと迫力は、大スクリーンならではのものだった。この映画のたむらまさき撮影監督は、かつては小川プロで三里塚闘争のドキュメンタリー映像を撮影し、近年は「サッド ヴァケイション」「東南角部屋二階の女」「私は猫ストーカー」「ゲゲゲの女房」などの日本映画の良作を担当している。さすがである。

そして、そんな映像を通して、役者たちの演技も一段と輝き、存在感を増してくるのだった。

上映終了後には、片嶋一貴監督、主演の有森也実をはじめ、武藤昭平、江口のりこ尚玄、笠井薫明、山根和馬韓英恵PANTA柄本明などが登場した豪華な舞台挨拶も行われた。お金や環境に恵まれなくても、監督以下スタッフの思い入れのこもった作品だということがよくわかる上映だった。インディーズ映画のこの熱さがオレは好きだ。

というわけで、直前まで迷っていたのだが、結果的に行って大正解の上映だった。

ちなみに、この映画、今後も散発的に全国各地で公開される模様。その後に、いずれまた東京で上映されたりしたら嬉しいものである。

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