映画貧乏日記

映画貧乏からの脱出は可能なのだろうか。おそらく無理であろう。ならばその日々を日記として綴るのみである。

「東京国際映画祭」もあと少し・・・

前回のブログに書いたように、現在、六本木を中心に第31回東京国際映画祭が開催中。会期は3日までなのであと少しというところ。

今年は仕事その他でスケジュールが厳しくて、あまり足を運べないのが残念だが、前回報告した26日に続いて、28日(日)と30日(火)にも顔を出してきた。28日には4本、30日には1本の映画を観たので、その感想を簡単に紹介しておく。

28日
・アジアの未来部門「ミス・ペク」
韓国映画。母親から虐待された過去を持ち心に傷を抱えて生きる女性が、同じ境遇の少女と出会い、やがて彼女を救おうとするのだが……。ハン・ジミン演じる主人公の揺れ動く心理描写が絶品。少女とのぎこちない交流が心に染みる。テーマは深刻だが韓国映画らしく見せる工夫も随所にある。ラストの後日談には思わず感涙。ぜひ日本公開を!

コンペティション部門「翳りゆく父」
ブラジル映画。母を亡くした幼い娘と父親。2人の傷心のドラマだが、それを呪術や霊などの不可思議な世界と融合させているところがユニーク。古いホラー映画なども散りばめながら、不穏で妖しい雰囲気を醸し出している。憔悴していく父を前に、呪術による母の再生を願う娘の姿がひたすら哀しい。

・ワールド・フォーカス部門「靴ひも」
イスラエル映画。母の急死によって、離婚して疎遠だった父親と暮らすことになる発達障害の青年。最初はギクシャクしていた父と息子が心を通わせていく姿をユーモアたっぷりに描く。タイトルの「靴ひも」をはじめ様々な伏線も効果的に使われる。ハートウォームなドラマだがラストは少しビター。それでもあと味はさわやか。

・特別招待作品人魚の眠る家
東野圭吾の原作を堤幸彦監督が映画化。脳死状態になった幼い娘と両親の姿を通して、人間の死とは何なのか、テクノロジーの発展は人間を幸福にするのかを問う。狂おしいほどの親の情愛を余さずに描いた人間ドラマでありながら、テーマ性も明確。切ないクライマックスも見もの。何よりも篠原涼子の渾身の演技に心を動かされた。

30日
コンペティション部門「半世界」
阪本順治監督によるオリジナル作品。山村を舞台に40歳を目前にした旧友三人組と、周囲の人々の人間模様を描く。それぞれに悩みや葛藤を抱えつつも、ささやかな日常を紡いでいくことの大切さが伝わってくる作品。主人公の炭焼き職人を演じた稲垣吾郎をはじめキャストの演技も魅力的。悲劇も起きるが後味は温かい。

ちなみに、「半世界」は阪本監督と稲垣吾郎による記者会見も拝見。阪本監督は、日中戦争の従軍カメラマン、小石清氏が中国で撮影した写真集にインスパイアされてこの映画を作ったとのこと。タイトルもそこから取っている。一方、稲垣吾郎は男3人の友情を描いた作品であることに関連して、「新しい地図」の香取慎吾や草彅剛との絆の話をするなど、なかなかに興味深い会見であった。

それにしても、「半世界」の感想をtwitterでつぶやいたら、「いいね」が400回以上、リツィートも200回以上あった。ふだんのオレのつぶやきなんて、せいぜい10回程度しか反応がないのだから驚異的な数字だ。稲垣吾郎の人気の高さと、この映画に対する注目度の高さを改めて実感した次第である。公開は来年2月だそうです。

さぁーて、残りの会期中にあと3本ぐらい観たいとは思うものの、どうなりますやら。