映画貧乏日記

映画貧乏からの脱出は可能なのだろうか。おそらく無理であろう。ならばその日々を日記として綴るのみである。

「SCOOP!」

「SCOOP!」
新宿バルト9にて。2016年10月1日(土)午後2時より鑑賞。

オレが福山雅治のようなルックスをしていたら、人生は大きく変わっていただろう。それがいいことか悪いことかはわからんけどね。まあ、そのぐらいカッコいい男の代名詞になっている人物なわけだ。たかだか結婚したぐらいで、「ましゃロス」とかいって女性ファンが大騒ぎする。歌はうまいし、演技もできる。これ以上何を望むというのかッ! あ、ただの嫉妬になってますか(笑)。

そんなカッコいい福山に限らず、日頃は二枚目や善人の役が多い役者は、悪役やゲスな役をやりたがるといわれる。その心理は何となく理解できる。そして、大根仁監督の「SCOOP!」(2016年 日本)は、そんな役者の欲求を満たすような映画なのだ。

主人公の都城静(福山雅治)は、かつては報道カメラマンとして伝説的なスクープを手がけた人物。しかし、今は芸能人のスキャンダルを追いかけるパパラッチとして、借金と酒にまみれた生活を送っていた。そんなある日、ひょんなことから写真週刊誌に配属された新人記者・行川野火(二階堂ふみ)とコンビを組むハメになる。最初はギクシャクする2人の関係だが、やがて大きなネタを追うことになる……。

この映画は、1985年の原田眞人監督の『盗写 1/250秒』を基にしているらしい。ただし、残念ながらオレは未見なので(ていうか入手困難って噂もあるんですけど)、それとの比較はできない。

映画の冒頭はいきなり女の喘ぎ声が映画館にこだまする。おいおい、18禁映画じゃねえんだぞ! なんと福山演じる都城静が路駐(仕事中らしい)の車に女を呼んでカーセックスに励んでいるのだ。もうこれだけでコイツがゲスな野郎であることがわかるではないか。芸能人のスキャンダルを追いかける彼は、酒と女にだらしなく借金まみれ。しかし、ひょんなことから週刊誌の新人記者の行川野火と組まされることになる。

前半はメチャクチャな静と、何も知らない野火が反発し合いながらも、スキャンダルを追いかける姿が描かれる。これはハリウッド映画なんかでもよくあるパターン。例えば、ベテラン刑事のデンゼル・ワシントンと新人刑事のイーサン・ホークがコンビを組んだ「トレーニングデイ」などもそうだろう。まったく資質の違う2人が、反発し合いながらも少しずつ距離を縮め、そして新人は成長していくわけだ。

というわけで、手垢のついたストーリーといえないこともない。おまけに、よくよく考えればステレオタイプだったり、都合よすぎの展開も多い。だが、観ている間はそれをあまり感じさせない。そう。大根監督の演出のなせる業である。筋運びのテンポがいいし、コミカルな要素もいい味付けになっている。おまけに映像の鮮度が高いので、つい引き込まれてしまう。そして何よりも福山が嬉々としてゲスを演じているのが魅力的だ。まさしく「サイテー」を絵に描いたような演技なのである。

そして、大根監督の映画らしく、いろんな意味でサービス精神満点だ。静がリリー・フランキー演じる協力者とともに、いかがわしい店でお姉ちゃんとイヤラシイことをするシーンなどエロいシーンも登場する。中盤では派手なカーチェイスまで描かれる。そこで銃撃戦が展開されるのかと思いきや、出てきたのは花火(盗撮用の小道具)。もう笑っちゃうしかないのである。

その後に、野火があわやの目に遭うというのもこの手の話の定番だ。ヤラれちゃうのか? 二階堂ふみ。そこで当然救世主が現れるわけだが、これが誰もが予想した静でないのが面白いところ。意外な人物の意外な大暴れに口アングリなのだ。

こうして野火が記者として成長していく中で、後半は静の変化が描かれる。かつては報道の世界で花形カメラマンとして活躍していた静。それが今はこの体たらく。ということで、「このままでいいのだろうか?」という彼の悩みを背景に、野火とともに社会派のネタに迫っていく姿が描かれる。この一件のクライマックスシーンでの出来事も爆笑モノ。秘密の作戦があれだとはねぇ。

こうして大団円が訪れるかと思いきや、そこで突然飛び出す静と野火の濡れ場。なんだよ、またエロかよ。そりゃあ、下着姿の二階堂ふみのきわどいシーンには興味がないこともありませぬが。エヘヘヘヘ……。あ、失礼! それにしたって、何の意味があるのだ? ただのファンサービスか? と思ったら、実はこれ、ラストの伏線になっていたのですね。

つまり、その後にはもう一つのヤマ場が用意されているのだ。それはあまりにも衝撃的な事件。そして、そこでは福山演じる静の壮絶なるシーンが描かれる(詳しく書くとネタバレになるのでやめておきますが)。ここに至って、最初はとんでもないゲス野郎だった静が、いつのまにかカッコいい男へと転化する。彼の生きざまがスクリーンにきっちりと刻まれ、同時に二階堂ふみ演じる野火の記者としての成長もクッキリと見えてくる。写真を使って余韻を漂わせるシーンといい、なかなかの終盤なのである。

いやぁ~、それにしても大根監督は役者を輝かせるのがうまい。『モテキ』では長澤まさみなど女優をキラキラさせていたが、今回は福山を思いっきり輝かせる。二階堂ふみも実にいい感じで映し出されている。さらに静とワケありらしい編集者を演じる吉田羊、そのライバル編集者役の滝藤賢一にもきちんと見せ場を用意。リリー・フランキーもド派手に活躍。こりゃあ、役者が大根監督の映画に出たがるのも当然だろう。

うーむ、もうお腹いっぱいです。元ネタの映画があるせいか、ちょっと説明不足のところもあったりするが(静が昔起こした事件ってナニ?)、あんまりそういうところを感じさせないのが見事。エンターティメントとしての面白さはかなりのものだと思う。

●今日の映画代1000円(毎月1日は映画サービスデーじゃよ!)