映画貧乏日記

映画貧乏からの脱出は可能なのだろうか。おそらく無理であろう。ならばその日々を日記として綴るのみである。

「ナイスガイズ!」

「ナイスガイズ!」
ヒューマントラストシネマ渋谷にて。2017年2月22日(水)にて午後2時10分より鑑賞

仲間はいいものだ。などという話をよく聞くが、本当に仲間はいいものなのか。仲間などという濃密な人間関係は、かえって面倒くさかったりするのではないか。私生活にずかずか踏み込んできたり、無理な頼みごとをしてきたり。

とまあ、そんなことを言うのも、オレには友達が少ないからだ。ただのやっかみなので、見逃してくだされ。

そんなオレも、バディー・ムービー(主人公が2人1組のコンビで活躍する相棒映画)を観たりすると、「あー、ああいう仲間ならいいかもね」と思ったりするわけだ。「48時間」とか「リーサル・ウエポン」とか、ああいうやつね。

そんなバディ・ムービーの世界に、魅力的な新作が登場した。「アイアンマン3」のシェーン・ブラック監督による「ナイスガイズ!」(THE NICE GUYS)(2016年 アメリカ)である。主人公コンビを演じるのは、言わずと知れたラッセル・クロウと今をときめくライアン・ゴズリング

妻を亡くして酒浸りの日々を送るシングルファーザーの私立探偵マーチ(ライアン・ゴズリング)。ある日、死んだポルノ女優の捜索依頼をきっかけに、腕力で揉め事を解決する示談屋ヒーリー(ラッセル・クロウ)に強引に相棒にされ、失踪した少女の捜索を開始する。そこにマーチの娘ホリー(アンガーリー・ライス)が加わり、3人で捜索を進めていくうちに、巨大な権力の陰謀に絡む事件に巻き込まれていく……。

2人の登場シーンが抜群に良い。冒頭は、事件の端緒となるポルノ女優の事故死が描かれる。続いて、登場するのがラッセル・クロウ演じる示談屋のヒーリーだ。コイツ、強烈なキャラである。何しろ未成年とつきあう男をいきなりボコボコにするなど、腕力にものを言わせて依頼をこなすのだ(それにしてもラッセルの大増量ときたらスゴすぎる。一瞬、本人と気づかないぐらいだ。もちろん役作りで太ったのだろうが)。

その後登場するのがライアン・ゴズリング演じる私立探偵のマーチだ。こちらもヒーリーとは別の意味で強烈なキャラだ。スーツを着たまま、バスタブに浸かって眠っている。彼は奥さんを亡くしてから酒浸りの日々を送るシングルファーザーなのだ。

マーチは、死んだはずのポルノ女優の捜索依頼を受ける。その過程でアメリアという若い娘の存在にたどり着くのだが、自分を探られたくないアメリアの依頼を受けたヒーリーにボコボコにされてしまう。ところが今度は、ヒーリー自身がアメリアを捜す男たちに襲われたことから、ヒーリーは嫌がるマーチを相棒にしてアメリア捜しに乗り出す。

この映画の舞台は1977年。ということで、70年代風のファッションや音楽(アース・ウインド&ファイアーやビージーズなど当時を知る人には涙もの)、風俗、文化などが満載だ。それを今風に描いたりしたら興ざめなのだが、もちろんそんなことはしない。映画全体の作りも70年代風になっている。まるで当時製作された映画のような雰囲気がプンプンなのである。

アクションももちろん70年代風。銃撃も、格闘アクションも、CG全盛の今とは違う荒っぽくてアナログな魅力が満載だ。当時を知る人にとっては懐かしく、そうでない人には新鮮に映るのではないだろうか。

そして何よりも魅力的なのが、マーチとヒーリーの凸凹コンビだ。ひたすら武骨なヒーリーと、気弱だけどなぜか不死身のマーチ。どちらも血の通ったキャラクターで、それぞれの対照的なキャラを活かした会話が、楽しい笑いを生み出していく。

さらに、2人の間でいい味を出しているのが、アンガーリー・ライス演じるマーチの娘ホリー。13歳なのに父親に代わって車を運転し、大人びた会話をする彼女が、ダメダメなマーチとヒーリーを諫めて正しい道に導く。彼女の存在感もこの映画には欠かせない。

前半は映画プロデューサーのゴージャスなパーティーがハイライト。そこで、マーチが死体を発見したことを皮切りに、1本の映画にまつわる連続殺人事件に巻き込まれた2人は、やがて巨大な権力犯罪に行き当たる。

後半のクライマックスは自動車ショーでの大立ち回り。ハラハラの展開が続く。そして、ここでもアナログなアクションが炸裂する。

ストーリー展開はエンタメ映画の王道。「まさかあの人物が……」という意外なワルの素顔など、ありがちな展開が続くものの、それをちっともありがちに思わせないから見事なものだ。笑いとアクションを絶妙に配し、人間ドラマもチラリと見せる。「痛快エンタメ映画」という表現が、これほど似合う映画はそうあるものではない。

映画のラストでは、マーチとヒーリーの似顔絵の入った新しい私立探偵のチラシが披露される。これを見たら、続編を期待するなというほうが無理だろう。ぜひもう一度名コンビぶりを見せて欲しいものである。まあ、そうするとラッセル・クロウはまた増量しなきゃいけないわけだが。

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