映画貧乏日記

映画貧乏からの脱出は可能なのだろうか。おそらく無理であろう。ならばその日々を日記として綴るのみである。

「ライフ」

「ライフ」
新宿ピカデリーにて。2017年7月10日(月)午前11時30分より鑑賞(シアター6/E-10)。

連日暑くてたまらない。こう暑いと、できるだけ涼しい場所に避難したくなる。そういうわけで、ますます映画館に行く回数が増えて、ますます貧乏になるオレなのだった。

そして、これだけ暑いと観たくなるのが、背筋ゾクゾクもののスリラー映画だ。そこで観に行ったのがSFスリラー映画「ライフ」(LIFE)(2017年 アメリカ)である。監督は「デンジャラス・ラン」「チャイルド44 森に消えた子供たち」のダニエル・エスピノーサ

冒頭に描かれるのは宇宙空間の映像だ。星々がひしめくその姿は美しいというよりも、何やら不気味だ。まもなく、そこに飛んでくる飛行物体。しかし、何かの物体と衝突する。

続いて登場するのは国際宇宙ステーション(ISS)である。そこでは、世界各国から集められた6人の宇宙飛行士が活動している。

宇宙に473日間も滞在しているアメリカ人医師デビッド・ジョーダン(ジェイク・ギレンホール)、疾病対策センターから派遣された検疫官のミランダ・ノース(レベッカ・ファーガソン)、エンジニアのローリー・アダムス(ライアン・レイノルズ)、ロシア人女性司令官のエカテリーナ・“キャット”・ゴロフキナ(オルガ・ディホヴィチナヤ)、日本人システム・エンジニアのショウ・ムラカミ(真田広之)、宇宙生物学者のヒュー・デリー(アリヨン・バカレ)。

ある日、彼らは火星から帰還した無人探査機を回収するミッションに挑む。そう。それが冒頭に登場した飛行物体だ。しかし、冒頭で描かれたように、その探査機は衝突により軌道が変わってしまう。そのため、デビッドが船外に出て、ロボットアームを操作してキャッチしなければいけない。それはかなり危険な任務だ。はたしてデビッドは無事に帰還することができるのか???

ハラハラドキドキ感あふれる展開である。しかし、これはまだ序の口だ。続いて、その無人探査機が採取した火星の土壌の分析が始まる。そして、そこに生命体が存在していることが判明する。とはいえ、いわゆる宇宙人のようなものではない。肉眼では見えない細胞だ。

その細胞は全く動かない。死んでいるのか? 担当のヒュー・デリーは温度を変えたりして、何とか動かそうとする。はたして生命体は動くのか???

こうしてまたまたハラハラドキドキの展開になるわけだ。それは映画の最初から最後まで続く。このハラハラドキドキ感の波状攻撃こそが、本作の最大の魅力なのである。

「火星で生命体発見!」のニュースは、地球で大反響を巻き起こす。宇宙飛行士たちは中継でテレビにも出演する。彼らは勇んで研究に着手する。ところが、まもなく、またしてもハラハラドキドキの展開が訪れる。しかも、今度はけた外れだ。

最初はただの単細胞と思われた生命体。しかし、もっと複雑であることがわかる。その生命体は宇宙飛行士たちの予想を遥かに超えるスピードで成長し、高い知性も見せ始める。そんな中、生命体はひょんなことからまた動かなくなってしまう。それを動かそうとして、乗組員が電気ショックを加えたところ……。ギャー!!!

そこから始まる恐怖のドラマ。生命体はどんどん成長し、凶暴化して、ISSの船内はもちろん、船外でも宇宙飛行士たちを襲い始める。それに対して様々な方法を駆使して、必死に逃げようとする宇宙飛行士たち。

何といっても生命体のビジュアルが強烈だ。最初はミクロの細胞だったのが、クリオネのような小動物になり、やがてヒトデかタコのような怪異な外見へ変貌を遂げていく。どんな攻撃をしても彼らは死なない。まさに不死身の怪物だ。その魔手から逃れようと、密閉されたISS内をあの手この手で逃げ回る乗組員たち。しかし、あまりにも無敵で何をやっても死なない生命体によって、1人、また1人と殺されていく。

正直、この映画を観る前は、それほど期待はしていなかった。何しろ襲いくる謎の宇宙生命体VS人類のバトルというネタは、「遊星からの物体X」(1982年)や「エイリアン」(1979年)といった過去のSF映画と同じようなもので、既視感は否めない。

それでも最新のビジュアルを使いつつ、あの手この手でノンストップの緊張感と恐怖を生み出している。その手際が実に鮮やかだ。そして密閉されたISS内のドラマということで、「ゼロ・グラビティ」(2013年)と共通するヒリヒリするような緊張感にも満ちているのである。

その一方で、深い人間ドラマこそないものの、軍人としてシリアに赴いた経験を持つデビッド、子供が誕生したばかりのムラカミ、難病で下半身マヒのデリーなど、宇宙飛行士たちが背負ったものを少しだけ見せて、彼らのその後の言動に説得力を持たせるあたりも、なかなか抜かりのない演出だと思う。

観終わってあとあとまで残るような作品ではないし、よく考えればツッコミどころもありそうだ。だが、それでも観ている間は余計なことを考えさせずに、スクリーンにずっと釘付けにしてくれるのだから、見応えは十分だろう。少なくとも入場料分ぐらいは元が取れる映画だと思う。

この映画で最も怖いのは、エンディングかもしれない。なにが起きるかは伏せるが、「おいおい勘弁してくれよ!」と言いたくなるような結末だ。最近、人類の注目が火星に集まり、移住計画まで進行しているらしい。だが、はっきり言おう。火星に移住するのはやめた方がいい。そこには絶対に何か恐ろしいものがいる!……な~んてことを思ってしまう映画なのだった。

●今日の映画代、1400円。事前にムビチケ購入済み。