映画貧乏日記

映画貧乏からの脱出は可能なのだろうか。おそらく無理であろう。ならばその日々を日記として綴るのみである。

「ザ・マミー 呪われた砂漠の王女」

「ザ・マミー 呪われた砂漠の王女」
新宿ピカデリーにて。2017年8月1日(火)午前9時20分より鑑賞(シアター8/F-9)。

昔、アメリカに「ザ・マミー」という覆面レスラーがいた。全身を包帯で覆った格好で、ホラー映画のミイラ男をネタにしたものだった。昔の写真か何かで見た記憶があるのだが、不気味さ満開のレスラーだった。

そんなミイラ男ならぬミイラ女が登場する映画が「ザ・マミー 呪われた砂漠の王女」(THE MUMMY)(2017年 アメリカ)である。ユニバーサル・スタジオが昔のモンスターたちを再生させる “ダーク・ユニバース” プロジェクトの第一弾で、1932年の「ミイラ再生」をリブートしている。

ちなみに、この「ミイラ再生」は、1999年の「ハムナプトラ 失われた砂漠の都」でもリブートされている。

いかにも謎めいた出だしの映画だ。まず描かれるのは12世紀のイギリスで、十字軍の兵士たちが埋葬されるところ。続いて、現代のイギリスで地下の鉄道工事中に、その墓所が発見される。

さらに話は飛んで、5000年前の古代エジプト。王女アマネット(ソフィア・ブテラ)は次期女王になるはずだったのに、王に王子が誕生したため約束が反故にされる。怒り狂った彼女は死の神“セト”と契約を交わし、王や王子を殺害するが、セト神を蘇らせる儀式の途中に捕えられ、生きながらミイラにされてしまう。

そして、舞台は再び現代へ。今度は激しい戦闘中の中東イラクだ。米軍関係者でありながら、古代の遺品の横流しに手を染めるニック(トム・クルーズ)は、相棒とともに反政府軍の真っただ中に飛び込んで、遺物をかっさらおうとする。

というわけで、ニックを演じるのはトム・クルーズ。とくれば、これはもうアクション全開と相場が決まっている。弾丸飛び交い、爆発も起きる中、体当たりのアクションを披露する。この映画の最大の見どころは、このド迫力のアクションだ。

そんな中、地中に埋もれていた古代の遺跡が偶然現れる。ニックが考古学者のジェニー(アナベル・ウォーリス)とともに探索すると、そこは何やら墓のようだ。そうである。そこには生きながらミイラにされた古代エジプトの王女アマネットの棺があったのだ。

ジェニーとニックは、その棺を調査するために飛行機でイギリスに運ぼうとする。しかし、突然、飛行機に異常が起きてしまう。あわや墜落という中、ここでもトム・クルーズとジェニーを演じるアナベル・ウォーリスによる、ハラハラドキドキ感満載のアクションが展開する。

とはいえ、アクションだけの映画ではない。さすがに“ダーク・ユニバース”というだけに、ホラー的な要素もタップリある。飛行機が墜落して死んだはずのニックだが、なぜか無傷のまま遺体安置所で目を覚ます。そして、彼は幻覚のようなものの中で王女アマネットと遭遇し、その言葉に導かれるように行方不明になった棺の行方を捜す。

そして、そして、ついにアマネットの復活だ!!! ただし、ミイラ男のような包帯姿ではない。5000年の眠りから甦った彼女の容貌ときたら、この世のものとは思えない気色の悪さだ。ミイラというよりは完全にモンスター。まさにホラー映画にふさわしい造形なのだ。

気色悪い容貌といえば、毒蜘蛛に噛まれたニックの同僚も恐ろしい姿に変身する。その姿はまるでゾンビだ。さらに、アマネットによって甦った死体たちも、完全にゾンビ軍団である。というわけで、ホラー的な要素もちゃ~んと追求されている映画なのである。

中盤から後半にかけては、考古学者ジェニーの背後にある秘密組織のボス、ジキル博士(ラッセル・クロウ)も登場し、事態をますます複雑にさせる。

ドラマ全体の柱は、ニックVSアマネットの対決だが、単純な善悪で括れるものではない。もっと複層的な様相を呈している。アマネットが持つセトの剣と宝石の話なども絡んでくるなど、ディテールもかなり凝っている。

ただし、いろんな話が詰め込まれているので、ボーッとしているとよくわからなくなるかもしれない。正直、オレもよく理解できないところがあった。それはラッセル・クロウ演じるジキル博士のキャラクターだ。彼はいったい何を狙っていたのだ??? 何だか変な注射をして変身するようなのだが、そのあたりのキャラがイマイチ理解できなかったのである。

ともあれ、クライマックスは盛り上がる。もちろん、アマネットとニックの決戦だ。ニックはアマネットを倒して瀕死のジェニーを救えるのか???

ちなみに、最初はモンスターのようだったアマネットだが、徐々に王女っぽいルックスに戻ってくる。そのあたりの加減がなかなか良い。演じるソフィア・ブテラが、エロいオーラを出していたりもするので、なおさら怪しさが漂っている。

正直観終わっても何も残らないし、ドラマ的な深みがあるわけでもない。ホラー映画として突き抜けた怖さも感じられない。

それでもアクションとホラーを巧みにブレンドしたエンタメ映画として、難しいことを考えずに観れば十分に楽しめそうである。そういう意味で夏休みにはピッタリかも。テーマパーク感覚で、お気楽にご鑑賞くださいませ。

●今日の映画代、1100円。毎月1日はたいていの映画館がサービスデー料金。