映画貧乏日記

映画貧乏からの脱出は可能なのだろうか。おそらく無理であろう。ならばその日々を日記として綴るのみである。

「セブン・シスターズ」

セブン・シスターズ
新宿シネマカリテにて。2017年11月15日(水)午後3時30分より鑑賞(スクリーン2/A-6)。

役者にとっての醍醐味は、何といっても様々な人物を演じ分けられることだろう。一般人ではこうはいかない。例えば、オレが毎回違う人物に扮して誰かの前に現れたならば、それはただのヘンなヤツである。

そんな役者の醍醐味が詰まった映画が「セブン・シスターズ」(WHAT HAPPENED TO MONDAY?)(2016年 イギリス・アメリカ・フランス・ベルギー)である。

「処刑山 -デッド・スノウ-」「ヘンゼル&グレーテル」のトミー・ウィルコラ監督による近未来SFだ。

近未来。地球環境が悪化し、資源が枯渇。おまけに遺伝子組み換え作物の影響による多生児の増加により、食糧不足に陥ってしまう。そこで欧州連邦は、人口抑制のために厳格な一人っ子政策を施行。2人目以降の子供は“児童分配局”に連行されて、食糧の心配がない未来まで冷凍保存されることになっている。

そんな中、ある女性が7つ子を出産する。その女性は出産直後に亡くなるが、その父、つまり7つ子の祖父(ウィレム・デフォー)は、孫たちの存在を秘密にして自分で育てようと決意する。

それから30年後の2073年。成長した7つ子姉妹は“月曜”から“日曜”まで各曜日の名前を持ち、それぞれの曜日に週1日だけ外出し、カレン・セットマン(ノオミ・ラパス)という1人の人格を演じることで、どうにか監視の目を逃れている。

前半は、そんな7人姉妹の日常が描かれる。同時に、かつて祖父が彼女たちを育てていた過去の日々が描かれる。それは生き延びるための厳しい訓練の日々だ。いざという時に備えて隠し部屋に身を隠し、7つ子の痕跡を消す。一人がケガをして指をなくすと、他の子供の指を切り落とす。そんな過激な訓練の裏に、孫たちを何としてでも守ろうという祖父の愛があるのは当然だ。

そうした訓練を経て成人し、銀行員のカレン・セットマンとして生活している7つ子たち。ところが、ある日、そのうちの1人の月曜が忽然と姿を消してしまう。はたして彼女はどうなったのか。その行方を追う残りの6人。

この映画で何よりすごいのが、「ミレニアム」シリーズのノオミ・ラパスが7人姉妹すべてを1人で演じていることだ。何しろ7つ子だけに顔は一緒。しかし、性格や髪型、ファッションはまったく違う。優等生風、ヒッピー風、セクシーガール風、武闘派風などバラバラな個性の人物を全部演じ分けているのだ。「どう? 私、こんな役もできるのよ」とアピールしているかのごとき、圧巻の演技である。これぞまさに役者の醍醐味!!

まもなく失踪した月曜を探しに火曜が街に出る。しかし、彼女も何者かに捕まってしまう。そして、残りの姉妹にも魔の手が迫る。

中盤以降はアクション満載の展開になる。街に出た姉妹と家に残っている姉妹、それぞれに敵が襲う。それと闘い、必死で逃げ延び、真相を暴こうとする姉妹たち。

格闘、銃撃戦など、いずれもド迫力のアクションが展開。この手のアクション映画によくある既視感ある展開とはいえ、やはりここもノオミ・ラパスのキレキレのアクションが炸裂して観客を飽きさせない。「どう? 私、アクションもすごいでしょ」とアピールしているかのごとき、圧巻のアクションである。

まあ、正直なところ冷静に考えればツッコミどころが多いのも事実。例えば、すでに当局に居場所が知られて敵が襲ってくるというのに、姉妹が依然として家にいるあたりは違和感あり。とはいえ、アクションの波状攻撃で、それをあまり感じさせないのが巧みなところだ。

何しろこの映画、ヒロインが7人いるわけだ。普通はヒロインが死んだり消えたら、そこでドラマはストップしてしまうのだが、7人いるからへっちゃら。誰かが消えたり、殺されても、残った姉妹が活躍できるのである。何ともうまいことを考えたものだ。

近未来SFらしくハイテク装置を駆使して、街中と家の名で連携して敵に立ち向かうあたりも、なかなかスリリングで面白い展開だ。

さて、どうやら月曜が失踪した背景には、児童分配局のリーダーで政治的野心を持つ女性ニコレット・ケイマン博士(グレン・クローズ)が関係しているらしいことが判明する。

そんな中、月曜の恋人だったらしい児童分配局の職員ジョーも味方につけて、残った姉妹はいよいよ真実に迫る。そこで明らかになった驚愕の事実。ゲゲゲッ!!!

クライマックスのパーティーシーンで、姉妹たちはその事実を公表しようとする。そして、そこで、最大のアクションの見せ場が登場する。だって、あなた、こんなことは前代未聞ですよ。あの人と、あの人が闘っちゃうんですから……。

ラストはいかにも近未来SFらしいオチ。とはいえ、そこも考えようによってはツッコミどころのある展開。でも、まあ、そんな細かなことは関係ない映画である。とにかく、ノオミ・ラパスの七変化と、キレキレのアクションを堪能する映画なのだ。彼女のために存在する作品といっても過言ではないだろう。恐るべし、ノオミ・ラパス

そんな中でやや影は薄くなってしまったものの、ケイマン博士役のグレン・クローズ、7つ後の祖父役のウィレム・デフォーという2人の超ベテラン名優の存在感も、この映画に花を添えていることを最後に付記しておこう。

●今日の映画代、1000円。新宿シネマカリテの毎週水曜のサービス料金。

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◆「セブン・シスターズ」(WHAT HAPPENED TO MONDAY?)
(2016年 イギリス・アメリカ・フランス・ベルギー)(上映時間2時間3分)
監督:トミー・ウィルコラ
出演:ノオミ・ラパスグレン・クローズウィレム・デフォー、マーワン・ケンザリ、クリスティアン・ルーベク、ポール・スベーレ・ハーゲン
*新宿シネマカリテほかにて公開中。全国順次公開予定
ホームページ http://7-sisters.com/