映画貧乏日記

映画貧乏からの脱出は可能なのだろうか。おそらく無理であろう。ならばその日々を日記として綴るのみである。

8年目の「ヘヴンズストーリー」

昨日、12月15日(土)は、新宿K’s cinemaで2010年の映画「ヘヴンズストーリー」を鑑賞してきた。公開翌年から毎年年末にアンコール上映され、今年でなんと8年目のアンコール上映が実現したのだ。

とにかく凄い映画である。上映時間は実に4時間38分(間に一度休憩があるけれど)。その分、普通の映画ならほんの少ししか描かれなかったり、割愛するようなところまでじっくり描かれるので、密度の濃い世界が創出されるのだ。

物語の基本は復讐物語。両親と姉を殺された幼いサトという少女が、妻子を殺されたトモキという男が「犯人を殺す」と言い放つのを見て、彼をヒーローとして崇め、やがて彼の復讐を後押しするドラマである。

この2人を中心に、彼らに絡む様々な人物を描き出す。トモキの妻子を殺した青年、その青年を家族として迎える女性、一人息子を育てながら副業に復讐代行業をする警官、その警官に父を殺された女などなど。20数名もの登場人物の人生が交錯する。

罪と復讐という重たいテーマのドラマで、そこには憎しみが渦巻いている。だが、それでも根底には人間に対する愛や優しさが感じられる。全9章立て。アニメや幻想的なシーン、人形劇なども登場する巧みな構成もあって、重苦しいだけのドラマでは終わらない。

かつての炭鉱町の風景をはじめ、1年に渡って撮影された四季を映した映像、俳優陣の渾身の演技など見どころはタップリだ。

すでにDVDも発売になっているのだが、それでもスクリーンで観たいという観客が、今年もたくさんやってきた。今どき貴重な35mmフィルムでの上映ということもあるのだろう。

個人的には、2010年の公開時には鑑賞したものの、その後のアンコール上映に駆けつけることができずに、ようやく今回が2回目の鑑賞となった。そして改めて思った。「瀬々敬久監督、凄い映画を撮っちまったなぁ」。

まあ、とにかく、圧倒されまくりの映画である。21日までの公開なので、お時間のある方はぜひぜひ劇場へ。4時間38分がちっとも長く感じられないはず。8年もアンコール上映が続く理由が理解できるのではないだろうか。

上映後には、瀬々監督とキャストの寉岡萌希忍成修吾村上淳山崎ハコ、栗原堅一、大島葉子片岡礼子川瀬陽太による舞台挨拶があった。スタッフ、キャスト、そして観客の熱い思いが感じられる時間だった。

 

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