11月5日まで東京・六本木を中心に第32回東京国際映画祭が開催中。毎年、皆さまのご厚意により関係者パスをもらって、たくさんの映画を鑑賞しているオレ。今年も同様に出かけたのだが、鑑賞本数は8本と激減(例年は20本前後を鑑賞)。
それというのも仕事に加え、母親の緊急入院→容体急変という予期せぬ事態に直面したため。現在は何とか持ち直して小康状態にあるものの、何時また急変しないとも限らない。そんな時に映画を観ている場合か!? 別に映画で飯を食っているわけじゃないんだから。
そんな事情で8本のみ鑑賞。その感想を簡単に下記にメモしておきます。
コンペティション部門
●「ネヴィア」(Nevia)(2019年 イタリア)
イタリアの貧困家庭の少女がサーカスとの出会いに希望を見出すドラマ。主人公の苦境とそこから抜け出そうとする奮闘ぶりをリアルかつ繊細に描く。主演のヴィルジニア・アピチェラの目の表情が印象的。映画初出演とは思えない堂々たる演技。
日本映画スプラッシュ部門
●「花と雨」(2019年 日本)
日本のヒップホップ界の名盤SEEDAのアルバムにインスパイアされた作品とのこと。何もかもうまくいかずヤクの売人に身を落とす主人公の転落のドラマが、意外にも終盤には切なく心温まる姉弟愛のドラマに転化。姉役の大西礼芳の自然な演技が素晴らしい!
コンペティション部門
●「ラ・ロヨーナ伝説」(La Llorona)(2019年 グアテマラ・フランス)
中米グアテマラでの先住民虐殺事件を背景に、追い詰められ錯乱する将軍とその家族を描く。現地に伝わる伝説をもとに謎の先住民の女を登場させ、怪しくて怖いホラータッチで描いた点が秀逸。水などを効果的に使った鮮烈な映像も魅力。
コンペティション部門
●「湖上のリンゴ」(Aşık)(2019年 トルコ)
トルコの辺境の地で伝統音楽の修業をする少年の淡い恋を描く。古い因習にとらわれる人々やそれに反発する子供たちなど、村の様々な表情を背景に寓話的な世界が展開。タイトル通りにリンゴが印象的に使われる。ユニークな伝統音楽も聴きどころ。
アジアの未来部門
●「夏の夜の騎士」(夏夜騎士)(2018年 中国)
1997年の中国。祖父母の家に預けられた小学生のひと夏の出来事を描く。従兄とともに自転車泥棒を捕まえようとするなど様々な経験を通して、少年の心理を瑞々しくリアルに表現。周辺の大人たちの事情も盛り込まれドラマに厚みを加えている。
コンペティション部門
●「戦場を探す旅」(Vers La Bataille)(2019年 フランス・コロンビア)
19世紀半ばのメキシコ。フランス軍の戦いぶりを取材に来た仏人報道カメラマンの苦難の旅と、その中で生まれた先住民の男との友情を描く。敵味方に関係なく戦争の愚かさや残虐性が伝わってくる。やらせ写真など今の報道につながるエピソードも。
コンペティション部門
●「ジャスト 6.5」(Metri Shesh Va Nim)(2019年 イラン)
イラン映画には珍しいドラッグ・ウォーもの。麻薬組織を狙う警察の捜査、両者の虚々実々の駆け引きをスリリングに描くとともに、警察官同士の対立なども盛り込む。終盤は麻薬問題の背景にある貧困問題などにも言及。社会性も持つエンタメ映画。
コンペティション部門
●「マニャニータ」(Mañanita)(2019年 フィリピン)
顔に大きなケロイドのある女性スナイパーのドラマ。彼女の日常を極端な長回しで淡々と映しだし、その心の孤独と過去の傷、深い苦悩をあぶりだす。地元警察によるユニークな麻薬撲滅作戦も効果的に使われる。主演のベラ・パディーリャの演技が見事。主人公の心理を的確に表現した音楽も素晴らしい。