映画貧乏日記

映画貧乏からの脱出は可能なのだろうか。おそらく無理であろう。ならばその日々を日記として綴るのみである。

「エクストリーム・ジョブ」

「エクストリーム・ジョブ」
グランドシネマサンシャインにて。2020年1月5日(日)午後12時55分より鑑賞(シアター9/d-9)。

~麻薬捜査班がチキン屋に転身!? 無条件に楽しいエンタメ映画で初笑い大成功

遅ればせながら、新年あけましておめでとうございます。

さて、新年に何の映画を観るべきか。悩みに悩んで出した結論は「エクストリーム・ジョブ」(EXTREME JOB)(2019年 韓国)。いや、本当はたまたま上映時間と場所の都合が良かっただけなのだが。

加えて、いつもは重たい人間ドラマなど心を揺さぶられる映画が好きなだけに、新年ぐらいは何も考えなくても楽しめそうな映画も良いかなと思った次第。そして、その期待に見事に応えてくれたのだ。この映画、おバカです。笑えます。アクションも満載です。

班長(リュ・スンリョン)率いる警察の麻薬捜査班がドラマの主役。冒頭で早くも彼らは犯人摘発に乗り出す。ところが、窓から侵入しようとして宙づりになり、逃走した犯人を追走するものの自分たちでは捕まえられず、バスのおかげ(?)でようやく逮捕に成功する始末。要するに、この人たちはダメダメなのだ。日夜駆けずり回るものの、まったく実績をあげられず、麻薬捜査班は解体の危機に直面するのである。

そんな中、コ班長は出世争いで先を越されたライバルから、麻薬を密輸する国際犯罪組織に関する情報を得る。名誉挽回をもくろむコ班長は、チャン刑事(イ・ハニ)、マ刑事(チン・ソンギュ)、ヨンホ(イ・ドンフィ)、ジェフン(コンミョン)の4人のチーム員とともに張り込み捜査を開始する。

さて、その張り込み先が問題だ。それはフライドチキンを売るチキン屋。ちょうどその店は犯罪組織のアジトの前にあり、アジトから配達の注文も受けていた。これ以上張り込みに都合の良い場所はない。だが、なんとその店は営業不振で閉店を決めたという。困ったコ班長たちは、最終的にその店を買い取ることにする。しかも、不審に思われないために偽装営業まで始めるのだ。

ところがである。ただの偽装営業のはずだったのに、絶対味覚を持つマ刑事の思わぬ才能が発揮される。ひょんなことから、「ソース味のチキンを」という客の注文にカルビソースを出したところ、これが大受け。チキン屋は大繁盛してしまうのだ。

というわけで、このあまりにもユニークで奇天烈な設定だけで笑えてしまう映画である。どちらが本職かわからなくなり、まるで本物のチキン屋のごとく、料理や接客に精を出す警官たちを見ているだけで、自然に笑えてしまう。個性的な5人の警官のキャラを活かした笑いも満載で、最初から最後まで笑いが絶えない。それもマニアックな笑いではなく王道の笑いが中心だから、誰でも文句なしに笑えるはずだ。

こうしてメンバーは店の切り盛りに追われ、捜査どころではなくなってしまう。そのためせっかく敵のボスの姿を見つけたのに、店で忙しいメンバーはまったく気づかずに、車で張り込む刑事が一人で敵を追跡するハメになる。やれやれ。何をやってるんだ? この人たちときたら。

さすがに「これはまずい」と、中盤では店に客が来ないようにと努力するメンバーたち。だが、値上げをすれば高級チキンと評判を取るなど、何をやっても裏目に出てしまう。そのあたりのすったもんだも実に楽しいところ。

本作のイ・ビョンホン監督(といっても、あの俳優のイ・ビョンホンとは別人)は、「サニー 永遠の仲間たち」の脚本を手がけている。あちらはコメディー仕立てとはいえ、きちんとした人間ドラマを展開していたが、今回は下手な人間ドラマなど描かずに徹底して笑いを追求している。その潔さが心地よい。

わずかにコ班長と妻子との微妙な関係を通して、家庭より仕事を優先する男の人生の悲哀を感じさせたりはするのだが、それもあまり深入りせずに笑いにまぶして描く。映像もケレンたっぷりで、全体のテンポもメリハリがある。

後半は、犯罪組織の2人のボスの麻薬取引をめぐる争いに、麻薬捜査班のチキン屋の全国チェーン展開の話などが絡み、事態は思わぬ方向に進む。そして、やがて麻薬捜査班は本業に戻って敵との最終決戦に挑む。

全編に渡って随所にアクションが盛り込まれている本作だが、特に終盤は迫力のアクションが怒涛の如く押し寄せる。5人の警官たちそれぞれの過去を明かして、それを生かしたバトルを展開するのも面白い。さらに、ボスの側近のサイボーグのような女など、脇役キャラも効果的に使われる。とはいえ、そこも真面目一辺倒ではなく、あちらこちらに笑いが散りばめられている。

というわけで無条件に楽しいエンタメ映画の快作だ。当然ながらリアルさなど皆無だが、そんなことはどうでもよい。韓国で歴代興行成績No.1に輝いたというのも納得。よくぞ新年に日本公開してくれたものだ。おかげで初笑い大成功である。

 

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◆「エクストリーム・ジョブ」(EXTREME JOB)
(2019年 韓国)(上映時間1時間51分)
監督:イ・ビョンホン
出演:リュ・スンリョン、イ・ハニ、チン・ソンギュ、イ・ドンフィ、コンミョン、シン・ハギュン、オ・ジョンセ
*シネマート新宿ほかにて全国公開中
ホームページ http://klockworx-asia.com/extremejob/