映画貧乏日記

映画貧乏からの脱出は可能なのだろうか。おそらく無理であろう。ならばその日々を日記として綴るのみである。

映画館が遠い近況報告

皆さま、いかがお過ごしでしょうか。

新型コロナ禍の中、思うように行動できない、このもどかしさときたら……。

思い返せば3月1日に亡くなったウチの母も、「もしかしたらコロナだったんじゃね?」という疑念が頭をもたげたりするものの、今さら確かめる術もないわけで、そんなことを考えても致し方ないのだが。

それにしても大変なのは映画館。自粛ムードの中、週末は多くの映画館が休館を余儀なくされ、平日も客席はガラガラの状態。シネコンのような大資本の映画館はともかく、ミニシアター系は青息吐息の模様。早晩、潰れるところが出てくるのではないかと危惧しているのは、ワタシだけではないだろう。

しかし、これだけ閑古鳥が鳴きまくって空席が多ければ(席を空けて販売している映画館もあるし)、コロナ感染のリスクも低いのではないだろうか。「ソーシャルディスタンス」を充分に満たしているのではないだろうか。ならば、ミニシアターを応援しに映画館に足を運ぼう!

とは思うものの、現実には映画館から足が遠のいている状況なのである。

なぜかといえば、ここ数日喉が痛いからだ。やや倦怠感もある。「これはコロナに違いない!」といったんは思ったものの熱は平熱。というか、朝計ったら35.1℃しかなかった。ワタシは低温動物か!?

とはいえ、コロナに感染しても無症状の人もいるわけで、もしも感染していたら他人に迷惑をかけてしまう。自分が感染するのは自己責任だから仕方ないが、人に感染させることは絶対にしたくない。ということで、念のため映画館に行くのは自重しているところなのである。

そんな中、普段は映画館優先であまり観ない動画配信サイトで、2本映画を鑑賞してみた(ただし、Gyao!で無料にて鑑賞)。

◆「殺人者の記憶法(MEMOIR OF A MURDERER)
(2017年 韓国)(上映時間1時間58分)
~獣医のビョンスはアルツハイマー病に侵されていた。そんな中、偶然出会った男テジュに対して殺人犯であるという確信を抱く。実はビョンス自身もかつて連続殺人を犯していたのだ。やがて、テジュはビョンスのひとり娘ウンヒのそばをうろつくようになる……。

いかにも韓国映画らしい「濃い」ミステリーサスペンス。話のポイントは主人公ビョンスの記憶がアルツハイマーによって曖昧になっているところ。しかも、彼はかつて殺人を犯していた。自らの殺人と、眼前で起こる殺人が混然として、いったい何が真実かわからなくなるところが本作の肝だ。

何といっても見どころは名優ソル・ギョングの凄まじい演技。忌まわしい過去の記憶にとらわれつつ、現在進行形の恐怖にもだえ苦しみ混乱する姿を、圧倒的な迫力で演じている。混乱の極致に陥った末に訪れる衝撃的な結末。さらに、最後の最後に冒頭のシーンに返って、その結末さえも曖昧にする力技に恐れ入る。

◆「0.5ミリ」
(2013年 日本)(上映時間3時間16分)
~介護ヘルパーの山岸サワは、派遣先である事件に巻き込まれ全てを失ってしまう。人生の崖っぷちに立たされたサワは、押しかけヘルパーとして訳ありの老人を見つけては介護を買って出る……。

キネ旬の年間第2位にランクされるなど高評価の映画だったが、公開時には見逃してしまった。なるほど、3時間を超える長尺ながらまったく飽きなかった。これは何とも刺激的な映画である。恐ろしく説明の少ないドラマで、サワコをはじめ登場人物の背景などは語られないのだが、その分こちらの想像力が刺激される。そして、明確なメッセージ性があるわけではないのに、観終わると何やら前向きな気持ちにさせられる。不思議な魅力を持った作品だ。

最大の魅力は何といっても安藤桃子監督の実妹安藤サクラだろう。彼女がそばに近づいた老人たちは一様に生き生きとしてくる。謎めいた力の持ち主で現実というよりファンタジックな存在だが、それでいて地に足がついている。坂田利夫草笛光子津川雅彦らが演じる老人たちとの交流が微笑ましく、味わいがある。唯一無二の個性を持った作品である。

その他にも、3月25日(水)にはマスコミ試写で香港映画「追龍」を観たのだが、その感想はそのうち映画レビューで書く予定。

それにしても、早く普通の日常が戻らんかなぁ~。