映画貧乏日記

映画貧乏からの脱出は可能なのだろうか。おそらく無理であろう。ならばその日々を日記として綴るのみである。

「共犯」

「共犯」
2020年4月12日(日)GYAO!にて鑑賞。

~女子高生の変死をめぐる3人の男子高校生の光と影

映画館休館中の特別企画「おウチで旧作映画鑑賞シリーズ」(いつの間にそんな名になったのだ?)第2弾は、「共犯」(共犯/PARTNERS IN CRIME)(2014年 台湾)。前回取り上げた「ももいろそらを」に続いてこちらも青春映画である。

どんだけ青春映画が好きなのだ?と言われそうではあるが、こちらは「ももいろそらを」とはずいぶん違うタイプの作品。何しろ女子高生の変死体がドラマの起点なのである。

同じ高校に通っているものの、口もきいたことがなかった男子高校生、ホアン(ウー・チエンホー)、リン(チェン・カイユアン)、イエ(トン・ユィカイ)は、通学途中、偶然同じ時刻に通りかかった路地で、女生徒のシャー(ヤオ・アイニン)が変死しているのを発見する。この一件を機に親しくなった2人は、シャーの死の真相を調べ始める。そこに、シャーが同級生からいじめられていたという疑惑が浮上する。

前回の「ももいろそらを」でも述べたが、青春映画の肝は瑞々しさにある。本作もまた瑞々しい青春映画。地味な印象のホアン、不良のリン、優等生のイエというまったく個性の違う男子高校生が偶然知り合い、友情を深めていく様子が瑞々しく描かれている。

思えば、台湾映画には瑞々しさにあふれた青春映画の名作が多数ある。「恋恋風塵」(1987年)、「牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件」(1991年)、「藍色夏恋」(2002年)、「あの頃、君を追いかけた」(2011年)などはそのほんの一例。本作も、そうした数々の台湾青春映画の名作に連なる作品といえるだろう。

とはいえ、そこは変死体を巡る話だけに瑞々しいだけではない。前半は3人の高校生たちが事件の真相を探るミステリー劇の様相を呈する。シャーが内緒でつけていた日記に手がかりがあるのではないかと考えた3人は、日記を探しに彼女の部屋へ忍び込む。そこからスリリングな犯人捜しのドラマが展開する。

そもそもシャーはかなり風変わりな生徒だった。母子家庭らしいが母親は仕事で留守がちでいつも孤独。学校でも浮いた存在で、これといった友達もいないらしかった。そんな中で浮上するのが、シャーがある同級生からいじめられていたのではないかという話だ。

それを聞いた3人は、その生徒に対してシャーに代わって復讐を果たそうとする。だが、そこで新たな悲劇が起こる。

犯人探しから復讐譚に突き進むかと見せて、意外な方向へと転がるドラマ。そこからタイトルにある「共犯」という言葉が意味を持ち始める。共犯関係をひた隠しにする生徒、一人で罪を被ろうとする生徒、それぞれの葛藤が交錯し、予想外の展開が現出する。

本作では、SNSによってどんどん噂が拡散していく世界、いじめ問題、孤独な心といった現在の高校生たちを取り巻く状況が、ドラマの背景としてリアルに取り込まれている。単なる青春ミステリードラマを超えた魅力を持つ作品である。

鮮烈な映像も目を引く。冒頭で登場する水中を男子生徒の死体が漂う幻想的で美しいシーンをはじめ、鮮烈な映像が満載だ。それに加えて、ほとんど演技経験のない若い役者たちの能力をうまく引きだすなど、チャン・ロンジー監督の手腕はなかなかのものだ。

ドラマの終盤になって、シャーの死と、それにまつわる犯人捜しに関わる意外な真相が明らかになる。実は本作の冒頭近くでは、ホアンに関わるあるシーンが登場する。それが伏線となって、彼の心の内が明らかになる。何とも苦い結末である。

青春といえば甘酸っぱい思い出を連想しがちだが、大きな心の傷を負いがちな時期でもある。そんな青春の光と影の両面を見せてくれる作品である。

 

◆「共犯」(共犯/PARTNERS IN CRIME)
(2014年 台湾)(上映時間1時間29分)
監督:チャン・ロンジー
出演:ウー・チエンホー、チェン・カイユアン、トン・ユィカイ、ヤオ・アイニン、ウェン・チェンリン、サニー・ホン、リー・リエ、アリス・クー
*動画配信サイトにて配信中。マクザムよりDVD発売中
ホームページ http://www.u-picc.com/kyouhan/

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