映画貧乏日記

映画貧乏からの脱出は可能なのだろうか。おそらく無理であろう。ならばその日々を日記として綴るのみである。

「逆光の頃」(再鑑賞)

逆光の頃
2020年4月27日(月)GYAO!にて鑑賞。

~二度観てもノスタルジックで甘酸っぱい京都を舞台にした青春ドラマ

映画館に行けないので、うちでたくさん映画を観ようと思うのだが、現実にはなかなかそうならない。そこでようやく気づいたのだ。自分は映画はもちろん好きなのだが、何よりも映画館で映画を観るのが好きなのだと。ああ!映画館に行きたい。

そんな中、特別企画「おウチで旧作映画鑑賞シリーズ」第4弾として、「逆光の頃」(2017年 日本)を鑑賞。公開時に、劇場(新宿シネマカリテ)で鑑賞したのに続く二度目の鑑賞です。

原作は漫画家タナカカツキによるコミック。ちなみに、タナカカツキは人気を集めたフィギュア「コップのフチ子」の原案者でもあるとか。そして監督・脚本は、このシリーズ第1弾で取り上げた「ももいろそらを」の小林啓一

とくれば、本作も青春映画である。古都・京都を舞台にした男子高校生の日々を切り取ったドラマ。原作の第3話「僕は歪んだ瓦の上で」、第5話「銀河系静電気」、第6話「金の糸」をもとに構成されている。

主人公は、京都で生まれ育った高校2年生の赤田孝豊(高杉真宙)。どこにでもいそうな普通の高校生だが、思春期だけに将来への漠然とした不安を抱いている。そんな彼の日常を切り取っていく。

本作にとりたてて大きな事件は登場しない。バンドをやっている公平(清水尋也)との交流と別れ、不良の小島(金子大地)とのケンカ、幼なじみのみこと(葵わかな)へのひそかな恋、伝承工芸である截金職人の父(田中壮太郎)との絆の確認などを経て、孝豊は少しずつ、しかし確実に成長していく。それを瑞々しく描写していく。

はい!また出ました。「瑞々し」さ。だけど、仕方がないのである。何度も言うようだが、青春映画は瑞々しくなければ話にならない。いわば青春映画の必須条件と言ってもいいだろう。それがリアルタイムの青春世代以上に、とっくに青春を過ぎた大人たちの心に、甘酸っぱくノスタルジックな感情を湧き上がらせるのだ。

舞台となる京都の街の映像も素晴らしい。「そうだ!京都へ行こう」。待て待て、今は行くな。行くんじゃない。しかし、まあ、そのぐらい京都が魅力的に映った映画でもある。花街、鴨川を渡る四条大橋、五山の送り火、寺院、ライヴハウスなど、京都の様々な風景が美しくリアルに映される。特に、夏の鴨川の納涼床(たぶん)の鮮やかさは絶品。

また、両親のかつてのエピソードをはじめ何カ所かでアニメを使うなど大胆な演出も目につく。

印象的な場面はいくつもある。孝豊と公平が川に入ってはしゃぐ場面、夜の学校で月をバックに孝豊とみことに奇跡が起きる場面、激しい雨中の孝豊と小島との殴り合いの場面、そしてその後に孝豊とみことが自然に手をつなぐシーンなどなど、どれも鮮烈なショットである。

それらを見ているうちに、自分にもあんな時代があったのだと懐かしい気分にさせられるのだ。いや、実際には高杉真宙のような美男ではなかったし、葵わかなのような可愛い彼女もいなかったし(そもそも男子校だったし)、自分の高校生活とは全然違うのだが、そういう錯覚をさせるようなマジックがそこにあるのです。

ラストの橋の上での孝豊とみことのシーンも、微笑ましくてほのぼの。「重ね合わせるのです。いつかの僕とここにいる僕を」という孝豊のモノローグも余韻を残す。

というわけで、さすがにキラッと光る青春映画を撮り続けている小林監督らしい作品。今や売れっ子俳優の高杉真宙、NHK朝ドラのヒロインも務めた葵わかなの初々しい演技も見もの。1時間6分という中編でもあるし、青春映画好きならずとも一見の価値はあります。

◆「逆光の頃
(2017年 日本)(上映時間1時間6分)
監督・脚本:小林啓一
出演:高杉真宙葵わかな清水尋也、金子大地、桃月庵白酒佐津川愛美、田中壮太郎
*動画配信サイトにて配信中。東映ビデオよりDVD発売中
ホームページ http://gyakko.com/

 

gyakko.com

ちなみに、公開時に最初に鑑賞した時のレビューが下記。言っていることが今とほとんど今と変わらない。そりゃそうですよね。まだあれから3年も経っていないわけだし・・・。

 

cinemaking.hatenablog.com