映画貧乏日記

映画貧乏からの脱出は可能なのだろうか。おそらく無理であろう。ならばその日々を日記として綴るのみである。

好きなものはしょうがない

映画館に行く時間のなかった昨日、またしても「もらとりあむタマ子」を観てしまったのだ。Gyao!で。

これで何回目なのだ?

確か2013年の劇場公開時に2回観ているし、その後は配信サイトで3~4回は観ているな。だって面白いんだもの。ダメ映画の傑作なんだもの。

知らない人のために言うと、「もらとりあむタマ子」は、東京の大学を出たものの、父親がひとりで暮らす甲府の実家に戻ってきた23歳のタマ子の日々を、春夏秋冬に渡って描いた作品。監督は山下敦弘。脚本は向井康介

何よりも素晴らしいのが、主演の前田敦子のダメっぷりだ。就職もせず、家業のスポーツ店も手伝わず、ただひたすら自堕落な生活を送る。やることといったら漫画を読むか、テレビを見るか、食べて寝るかである。その全身からやる気のなさや、気怠さが伝わってくる。この人は本当の怠け者ではないのか、とさえ思ってしまうほどの名演技なのだ。

タマ子がテレビのニュースを見ながら「ダメだな。日本は」とつぶやくシーンがある。「いや、お前がダメなんだよ」と誰しもがツッコミを入れたくなる名シーンである。

それを見守る父親役の康すおんは、最近では「ヤクザと家族 The Family」で時代に取り残されたヤクザを見事に演じていたが、この映画でもなかなかの存在感を示している。自堕落な娘に対して、時には声を荒げるものの、基本は温かく見守る。いつか自立するだろうと期待し、その時を待つ。タマ子が芸能界を目指しても、「父さんはいいと思うよ」などと理解を示す。まあ、その態度が逆にタマ子をイラつかせるのだが。

その父親に再婚話が持ち上がり、タマ子の心がざわつき始める(お相手の富田靖子がこれまた良い!)。そんなこんなで、タマ子はわずかな一歩を踏み出す。

いや、踏み出すまでも行かないのだが、そのほんの少しの前向きさを印象付けるラストシーがこれまた絶妙だ。

とにかくダメ映画好きの私にとって、何度観ても素晴らしい映画なのである。

2月15日までGyao!で無料配信中なのでよろしかったら。

 


映画『もらとりあむタマ子』予告編