映画貧乏日記

映画貧乏からの脱出は可能なのだろうか。おそらく無理であろう。ならばその日々を日記として綴るのみである。

「パーム・スプリングス」

「パーム・スプリングス」
2021年4月9日(金)新宿ピカデリーにて。午後1時20分より鑑賞(シアター1/I-21)

~ちょっぴり変わったリゾート地のラブコメはタイムループもの

レギュラー仕事が終わって暇になったのだ。代わりの仕事が見つかるまで当面は暇なのだ。このままずっと暇だったらどうするんだ?という危惧もないわけではないが、とりあえずこんな時にはおバカな映画でも観るに限るぜ。何の脈絡もないけれど。

「パーム・スプリングス」はおバカなラブコメだ。しかも、タイムループもののラブコメだ。タイムループとは、登場人物が過去に舞い戻って、何度も同じ時間を生きるという設定。SFの定番の一つである。有名な作品に1993年のビル・マーレイ主演の「恋はデジャ・ブ」などがある。

砂漠のリゾート地、パーム・スプリングスで行われた妹の結婚式に参加したサラ(クリスティン・ミリオティ)は、そこで知り合った風変わりな青年ナイルズ(アンディ・サムバーグ)と意気投合する。すると突然、ナイルズは謎の老人に襲撃され、ボーガンの矢で肩を射抜かれる。逃げ出したナイルズを追って洞窟に入ったサラは謎の光に包まれる。サラが目覚めると、結婚式当日の朝に戻っていた。困惑するサラがナイルズを問いただすと、彼はすでにずっと前からタイムループを繰り返しているという……。

ありきたりのタイムループものなれど、太陽がさんさんと降り注ぐリゾート地での出来事ゆえに、なんだか緩いムードが全編に漂う。最初から下ネタも全開だ。アホな登場人物がアホな言動で笑いを取る。

イムループものなので、結婚式当日が何度も繰り返されるのだが、毎回それが微妙に違っている。何しろナイルズもサラも、それがタイムループであることを知っているのだ。

その中で、いろいろなことが明らかになってくる。ナイルズとサラが初めてセックスしたと思ったら、実は何千回もやっていたとか、サラが妹の新郎と関係を持っていたとか。巧妙に仕組まれた伏線が、観るたびに新しい発見をもたらす。

ナイルズは典型的なお調子者だ。彼はタイムループにハマっているが、そこから抜け出せないと諦めている。それならば、永遠に続く他人の結婚式の一日を適当に楽しく過ごそうと決めている。

そこに同じくサラがタイムループにハマる。こちらは心にトラウマを抱え、問題行動ばかり取っている女性だ。彼女は最初はループから抜け出そうとするが、何度やっても抜け出せない。そこで、ナイルズに感化されて「どっちみち抜け出せないのなら」とハチャメチャをやるようになるのだが、目覚めるとすべてがリセットされている。こうして本来なら絶望的状況であるはずのタイムループを、楽しんでしまうのがこの映画の面白いところ。

そして、もう1人タイムループにハマっているのがロイ(J・K・シモンズ)という謎の老人。彼はナイルズのことを恨んでいて、不定期に襲撃に来るのだという。

そのロイをサラがダマして車でぺしゃんこにし、続いて自らも車に引かれるという破天荒な場面もある。だが、もちろんいくらやっても大丈夫。目が覚めれば元通りにリセットされているのだ。

ナイルズとサラは、タイムループの世界で2人で過ごすうちに、次第に打ち解け幸福を感じるようになる。このままここにとどまれば幸せは続くのだ。

ところが、ある時、サラは忽然と姿を消す。いったい彼女はどこに行ったのか……。

終盤は、タイムループからの脱出を図るサラの突破力が際立つ。恋を犠牲にしてでも、この世界から抜け出そうと決意したその凛々しさが光る。一方のナイルズはそれに右往左往するばかりだ。生ぬるいけれど心地よいこの世界に留まりたいという思いが消えない。

まあ、この手の映画の定番パターンで、最後はハッピーエンドになるのだが、いかにもラブコメらしいエンディングで観客を楽しませてくれる。

2人のロマンスにそれほど深みがあるわけでもない。途中でややズルズルの展開になったりもする。それでも心に問題を抱えていた女性が、タイムループを経験して成長するという成長譚の視点で見ると、それなりのドラマになっているのではないか。

主演のアンディ・サムバーグとクリスティン・ミリオティの演技も、なかなかの演技だった。特にミリオティは今後活躍するかもしれない。J・K・シモンズもタイムループの世界に住む悲哀を見せるなど、相変わらずいい味を出している。

 

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◆「パーム・スプリングス」(PALM SPRINGS
(2020年 アメリカ)(上映時間1時間30分)
監督:マックス・バーバコウ
出演:アンディ・サムバーグ、クリスティン・ミリオティ、ピーター・ギャラガー、J・K・シモンズ、メレディス・ハグナー、カミラ・メンデス、タイラー・ホークリン
新宿ピカデリーほかにて公開中
ホームページ http://palm-springs-movie.com/