「サムジンカンパニー1995」
2021年7月22日(木・祝)シネマート新宿にて。午後2時50分より鑑賞(C-15)
~不正に立ち向かった女性たちの痛快エンターティメント
完全に快復したわけではないものの、おかげさまでだいぶ良くなりました。
というわけで、約1か月ぶりの映画館。鑑賞したのは韓国映画「サムジンカンパニー1995」。3人のOLが会社の不正に気づき、社会正義のために立ち上がるドラマである。
1995年。グローバル化が意識され始めた韓国・ソウル。大企業のサムジン電子で働く3人の女性社員、生産管理部のジャヨン(コ・アソン)、マーケティング部のユナ(イ・ソム)、会計部のボラム(パク・ヘス)、は、それぞれに優秀な能力を持ちながらも、高卒というだけでお茶くみや書類整理ばかりさせられていた。
そんな中、会社がTOEIC600点以上で「代理」に昇進させる方針を打ち出し、ジャヨンたちはステップアップを夢見て英語を懸命に学んでいた。ところがある日、自社工場から汚染水が川に流出している事実を知り、会社の不正を見過ごすことはできないと、3人は力を合わせて真相究明に乗り出すのだが……。
シリアスな話かと思えばさにあらず。社会問題を抱腹絶倒のエンタメ映画で描くのは、韓国映画お得意のパターン。この作品も、ひたすら明るく、コミカルな王道のエンターティメント映画に仕上がっている。
オープニングで軽く当時の社会状況を説明した後、英語教室で3人が自己紹介するシーンが登場。ジャヨン、ユナ、ボラムそれぞれのキャラの個性が際立ち、その後のドラマに起伏を与える。
3人に共通しているのは一流企業に勤務し、一見キャリアウーマン風なこと。ところが、実際は高卒でお茶くみと書類整理しかさせてもらえず、大卒の女子社員からもバカにされている。大卒女子社員が私服なのに、彼女たちは制服を着させられているのだ。
そんな彼女たちに転機が訪れる。ジャヨンがたまたま出かけた自社工場で、近くの川で大量の魚が死んでいるのを発見する。自社工場から汚染水が流出していたのだ。3人は正義感からその真相を究明し始める。
その真相究明劇が傑作だ。検査書類が偽造されていたことを突き止めた彼女たちは、探偵かスパイのような行動までとりながら、事件の黒幕を探す。その様子をテンポよく、そしてコミカルに描き出す。
3人以外も個性的なキャラが続々登場。英語を巧みに操るエリート社長、会長の息子のボンクラ常務、末期がんで会社を去った部長など、個性的&訳ありのキャラが脇を固める。しかも、どれひとつを取っても無駄なキャラがないのである。敵か味方かわからないままにうごめく彼らが、真相追跡劇の興趣を盛り上げ、サスペンス的な魅力を高めている。
数々の伏線が張られているのもこのドラマの特徴。しかも、そのどれもが後に見事に回収される。「なるほどそうだったのか!」と思わされることも、たびたびだった。
数々の困難にあいつつも、隠蔽を図る会社側に立ち向かい、じりじりと真実に迫る3人。そして、ついに真相を解明する。しかし……。
ここに至って、「ああ、やっぱり世の中はそんなに甘くないのだな」と思ったものの、このドラマに似合わない暗い結末だとも感じたのだが、何のことはない。まだまだドラマは終わらないのである。
単純な公害問題かと思いきや、社内の権力争いの様相を呈し、さらに外資による会社乗っ取り劇に突入。二転三転するドラマはまったく先が読めない展開だ。その中で、3人のヒロインたちは何度挫折してもくじけず、力強く立ち上がるのである。
主演は「グエムル -漢江の怪物-」のコ・アソン、「愛のタリオ」のイ・ソム、「スウィング・キッズ」のパク・ヘス。それぞれの魅力がいかんなく発揮されている。
最後は3人が、他のOLや男性社員も巻き込んで繰り広げる最後の戦い。その果てには想像を超えた逆転劇が……。胸のすくラストに思わず大拍手! これぞ痛快エンターティメント!!
理不尽な権力に対して、正義を貫こうとした女性たちの連帯のドラマだ。今よりも男女格差がひどかった時代のドラマとはいえ、今に通じる要素も多々あるだろう。そういう意味でも面白い映画だった。
いかにも当時のゲームを再現したようなエンドロールまで含めて、ひたすら楽しく痛快なドラマなのであった。
◆「サムジンカンパニー1995」(SAMJIN COMPANY ENGLISH CLASS)
(2020年 韓国)(上映時間1時間50分)
監督:イ・ジョンピル
出演:コ・アソン、イ・ソム、パク・ヘス、チョ・ヒョンチョル、キム・ジョンス、キム・ウォネ、ペ・ヘソン、デヴィッド・マクイニス、ペク・ヒョンジン、パク・クニョン、イ・ソンウク、チェ・スイム、イ・ボンリョン、イ・ジュヨン
*シネマート新宿ほかにて公開中
ホームページ https://samjincompany1995.com/