映画貧乏日記

映画貧乏からの脱出は可能なのだろうか。おそらく無理であろう。ならばその日々を日記として綴るのみである。

「犬も食わねどチャーリーは笑う」

「犬も食わねどチャーリーは笑う」
2022年9月24日(土)TOHOシネマズ池袋にて。午後2時50分より鑑賞(スクリーン5/D-8)

~夫婦はウナギのつかみ取り。笑えてちょぴり考えさせられるコメディー

なんと近所の映画館でもウォン・カーウァイの4K上映をやると聞いて、また「恋する惑星」を観に行ってしまった。この間、観たばっかりなのに。どんだけ好きやねん!でも、フェイ・ウォンはやっぱり可愛かった。

そんなことはどうでもよい。その翌日はまた映画館へ。市井昌秀監督の「犬も食わねどチャーリーは笑う」を観てきたのである。

市井監督はインディーズ作品「無防備」で、奥さんの実際の出産場面を撮影してクライマックスに据えて話題になった。その後も作家性の強い作品を撮るかと思いきや、商業映画デビューしてからは、星野源夏帆による恋愛ドラマ「箱入り息子の恋」、草彅剛主演のコメディー「台風家族」といったエンタメ性の高い映画を監督している。

今回は夫婦のバトルをめぐるコメディー映画だ。結婚4年目の裕次郎香取慎吾)と日和(岸井ゆきの)。表向き仲良し夫婦の2人だったが、実は日和は鈍感な裕次郎に日々イライラを募らせ、妻たちが旦那への恨みつらみを書き記すSNSの「旦那デスノート」に、投稿を繰り返していたのだ。ペンネームはチャーリー。裕次郎と日和が飼っているフクロウの名前と同じだった。まもなく裕次郎はそれが妻の投稿らしいと知ってしまう……。

何よりビックリしたのは香取慎吾の普通のダメ夫っぷりだ。これまでは、けっこう癖のある役を演じることが多かっただけに、最初に見た時は香取だと気づかなかったぐらいだ。でも、それがなかなか板についていた。本当にどこにでもいそうな夫をちゃんと演じていた。

その香取と妻役の岸井ゆきの(相変わらず可愛い)、井之脇海的場浩司余貴美子などの俳優たちとの掛け合いが絶妙だ。ブラックコメディーというほど毒気はないけれど、かなり笑えるコメディーに仕上がっている。

冒頭は裕次郎と日和の出会いの場面。ホームセンターの店員と客として電撃的な出会いをする。

そして、次に映るのは現在の裕次郎と日和。裕次郎は副店長を務め、日和はコールセンターで働いていた。平凡だが幸せそうに見える2人。だが、日和は夫への鬱憤を旦那デスノートに投稿していた。

この旦那デスノートがかなり過激で、笑えるのだ。そこには妻の本音が余すところなく綴られている。例えば「旦那だけ カミナリ直撃 良い意味で」チャーリー。書籍化の話が持ち上がり、何人かの投稿者が集まる場面があるのだが、それがまあユニークな面々ばかりで、これまた笑ってしまうのである。

その旦那デスノートの存在を、裕次郎が知ったことから始まるスッタモンダを描いた本作。起きることは夫婦によくある定番ネタばかりとはいえ、巧みなディテールを用意して飽きさせない。

ドラマ的に効果的なのが、合間に何カ所か入る回想。冒頭の出会いから、裕次郎と日和が接近して恋人になるまでが描かれる。裕次郎は数々のウンチクを披露して、日和を楽しませる。ビニール袋を2人で追いかけたエピソードなども微笑ましく、2人の初々しい恋が刻まれる。

それに対して今はどんどん2人に亀裂が入る。その対比が何とも切ない。そして、裕次郎の前には別の女の影もちらつく。日和はますますイライラする。

両者がモヤモヤを抱えたまま、はたして夫婦の行方はどこに行くのか。やがて裕次郎の後輩の結婚披露宴が行われる。この後輩がマリッジブルーになり(新郎です)、妻に尻を叩かれて式に出てくるというのが笑える。

そして、この席で裕次郎は日和の助けを得て、素晴らしいスピーチをする。ここは素直に感動して、思わずウルッときてしまった(ちなみに、人間は自分の肘を絶対になめられないって知ってました?)。

まあ、ヒネリがあんまりなくて物足りない感じはするものの、それなりに気持ちのいい大団円であった。

と思ったら、ここからもうひとひねりが用意されていた。日和にはある出来事によって心に大きな傷があり、その出来事の際の裕次郎の態度がどうしても許せなかったのだ。それをダメ押しするような事態が起きて、2人の亀裂は決定的な局面に至る。

そんな騒動の最中に、余貴美子演じるホームセンターの同僚が言うのだ。「夫婦ってウナギのつかみ取りみたいなもの」。うまいこと言うなぁ。至言だよなぁ。まさに夫婦を言い当ててるよなぁ。結婚したことないから知らんけど(笑)。

そして、クライマックスはいかにもコメディー映画らしいドタバタ喜劇風な展開と、途中で出てきたビニール袋のエピソードを使い、はっちゃけつつも心温まる雰囲気を醸し出す。

オーラスにはフクロウのチャーリーを映してジ・エンド。このチャーリー君、存在するだけでいい味を出しています。

言っていることは「夫婦は他人なんだから、ちゃんと向き合って話さなくちゃダメよ」という当たり前のこと。そんなのもっと早く気づけよ!という気がしないでもないが、あれこれ工夫して面白くしています。というわけで夫婦関係について色々と考えさせられるコメディー映画なのであった。

主要な役者以外にも、きたろうが本人役で出ていたり、浅田美代子裕次郎の母役でチラッと出たりとなかなか遊び心のあるキャスティングも楽しめます。

◆「犬も食わねどチャーリーは笑う」
(2022年)(上映時間1時間57分)
監督・脚本:市井昌秀
出演:香取慎吾岸井ゆきの井之脇海、中田青渚、小篠恵奈、松岡依都美、田村健太郎森下能幸的場浩司眞島秀和徳永えり峯村リエ菊地亜美、有田あん、瑛蓮、きたろう、浅田美代子余貴美子
*TOHOシネマズ日比谷ほかにて全国公開中
ホームページ https://inu-charlie.jp/


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