映画貧乏日記

映画貧乏からの脱出は可能なのだろうか。おそらく無理であろう。ならばその日々を日記として綴るのみである。

「グッド・ナース」

「グッド・ナース」
2022年10月31日(月)シネ・リーブル池袋にて。午後4時より鑑賞(スクリーン2/E-4)

ジェシカ・チャステインエディ・レッドメインの演技合戦に目を凝らせ!

有料動画配信サイトには一切入っていない。月額料金を払うぐらいのお金はあるが、もしも沼にはまったら映画館に行けなくなるではないか。映画は映画館で観るもの、という苔むした固定観念をいまだに持っている私には、そんなおぞましいことはとてもできないのである。

Netflixにも当然入っていない。でも、たまにNetflixで配信される映画を劇場でも公開してくれたりするから、それは観に行くわけだ。というわけで、Netflixで2022年10月26日から配信中の「グッド・ナース」。10月21日から劇場で公開中だ。

300人以上の患者の死に関わったとされる連続殺人犯といわれるチャールズ・カレン。その実像に迫ったチャールズ・グレーバーのノンフィクションの映画化だ。

2人の子を持つシングルマザーの看護師エイミー(ジェシカ・チャスティン)は、心臓病を抱えながら過酷な夜勤を続けていた。そんなある日、彼女の部署に親切で優しい青年チャーリー(エディ・レッドメイン)が配属される。2人は心を通わせるようになる。だが、病院でインスリンの大量投与による患者の突然死が相次ぎ、チャーリーがその容疑者として浮上する……。

このドラマ、冒頭で時間をさかのぼって過去の殺人が描かれることもあって、誰が犯人かは簡単に察しが付く。いや、そもそも作り手は犯人探しに主眼を置いていない(監督は「偽りなき者」「アナザーラウンド」などの脚本で知られるトビアス・リンホルム)。緊迫感あふれる映像などの効果もあるが、サスペンスとしての魅力はそれほどない。

その代わりにじっくり描かれるのが、ジェシカ・チャステインエディ・レッドメインという2人の実力派俳優の演技合戦である。

序盤、病を抱え勤務を続けるエイミーの疲れ切った顔だけで、彼女の置かれた環境の過酷さを物語るジェシカの演技がすごい。

一方、心優しいチャーリーを演じつつ、その目の奥で何か不可解なものを抱えていることを見せつけるエディの演技も見事。どちらも滑り出しから迫真の演技である。

そして、事件が起きる。まもなく2人の刑事が捜査を始める(このコンビがなかなかいい味を出している)。その結果、どうもチャーリーが怪しいと疑い始める。

だが、病院は徹底的に事実を隠蔽しようとする。資料をなかなか出さなかったり、刑事を出入り禁止にして真相を薮の中に隠そうとする。刑事たちは悪戦苦闘する。

その間に、エイミーは親しかったチャーリーが怪しいとわかって、心乱れる。

実はエイミーは心臓の手術が必要だった。アメリカの保険制度には詳しくないのだが、この当時、エイミーの勤務する病院は1年間勤務しないと保険に入れないことになっていた。それにはエイミーはあと4か月の勤務が必要だった。何とか無事に勤めたい。できれば波風は立てたくない。それがさらに彼女の心を乱す。

だが、そうするうちにもチャーリーは、相変わらず自分や子供たちに接近してくる。それはエイミーにとって、まさに戦慄としか言いようのない恐怖だった。

エイミーは刑事に協力して真相を突き止めることを決意する。

このあたりの心の揺れ動きも、ジェシカが巧みな演技であますところなく表現している。一方、ほとんど無表情で淡々と勤務を続けるチャーリーの秘めたる狂気も、エディが絶妙な演技で見せてくれる。

終盤にはその両者の対決が見られる。1度目はダイナーで。非協力的な病院の態度もあって、明確な証拠がつかめない刑事たちは、エイミーを使って自白を引き出そうとする。何とかして自白させようとするエイミー。なかなかそれに乗らないチャーリー。手に汗握るようなじりじりした展開が続く。

その後、刑事たちはイチかバチかチャーリーを逮捕する。そこでの刑事とチャーリーのやりとりが、これまた破格の迫力なのだ。目の表情のわずかな変化で、感情を表現するエディの素晴らしい演技が炸裂する。

さらに、最後にはエイミーとチャーリーの最終対決も用意されている。それはそれは壮絶なバトル、いや表面的には派手なことは何もないのだが、心の奥底で火花を散らし合う心理戦が展開されるのだ。

映画の終わりには、事件の顛末と現在のエイミーとチャーリーがどうなっているかが紹介される。

というわけで、ジェシカ・チャステインエディ・レッドメインの演技合戦が最大の見どころの映画。Netflixでなくて劇場の大スクリーンで観る価値は十分にある。いや、そもそも私はNetflixは見られないのだが。

さらに、アメリカの医療システムや病院の隠蔽体質を告発するなど(男女差別に触れたところもある)、なかなか骨太なドラマだった。

 

◆「グッド・ナース」(THE GOOD NURSE)
(2022年 アメリカ)(上映時間2時間2分)
監督:トビアス・リンホルム
出演:ジェシカ・チャステインエディ・レッドメイン、ンナムディ・アサマア、ノア・エメリッヒ、キム・ディケンズ、マリク・ヨバ
*シネマート新宿、シネ・リーブル池袋ほかにて公開中
ホームページ https://www.goodnurse-jp.com/

 


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