映画貧乏日記

映画貧乏からの脱出は可能なのだろうか。おそらく無理であろう。ならばその日々を日記として綴るのみである。

「ザ・メニュー」

「ザ・メニュー」
2022年11月18日(金)ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後1時より鑑賞(スクリーン9/E-14)

~ミステリー?ホラー?高級レストランを舞台にしたドラマは痛烈な社会風刺劇

先週の土曜日にTOKYO DOME CITY HALLでの伊藤蘭のコンサートに行ってきたのだ。何と前から2列目の席で、数メートル先の伊藤蘭の歌い踊る姿を目撃してきたのだ。イェーイ!

そんなことはどうでもいい。今日取り上げる映画は「ザ・メニュー」。高級レストランを舞台にしたドラマだ。美味しい料理とともに、そこに集った人々の人間模様が浮かび上がる。それを観ているうちに感動の涙が……。

などというのは大ウソです。実はこの映画、サスペンスであり、スリラーであり、ホラーであり、感動するどころか怖くておぞましい怪映画なのだ。

太平洋の孤島に、なかなか予約が取れない高級レストランがある。有名シェフのジュリアン・スローヴィク(レイフ・ファインズ)が腕を振るう「ホーソン」という店だ。この日は選び抜かれたセレブな招待客を招いて、究極のフルコースが振舞われようとしていた。

招かれたのは、かつてスローヴィクを激賞した料理評論家と編集者、落ち目のスター俳優とそのアシスタント、裕福な熟年夫婦、若いIT成金のトリオなど。その中には、若いカップルのタイラー(ニコラス・ホルト)とマーゴ(アニャ・テイラー=ジョイ)もいた。

一行は船で島を訪れる。まずは名前のチェック。ここで、実はタイラーは別の女性と訪れることになっていたことがわかる。どうやらお目当ての女性に逃げられ、マーゴを代わりに連れてきたらしい。

このあたりまでは、何やらアガサ・クリスティーのミステリーを想起させるような滑り出しだ。しかし、その先にはまったく違う展開が待っている。

その後、一行は女性スタッフの案内で島の施設を見て回る。そのあたりから早くも不穏な空気が流れ始める。

そして、いよいよレストランの店内へ。ここからは前菜を手始めに順に料理が出され、それに沿って様々な秘密が暴露されていく。この店の秘密と同時に、招待客の秘密も暴露されていくのだ。

その際に登場するのがシェフのスローヴィクである。料理が一品出てくるたびに、彼がそれについての講釈を述べる。彼が手をパンと打つとスタッフは一斉に動きを止めて、直立不動になる。彼の問いかけには即座に「イェッサー!」と返す。まるで軍隊の幹部か新興宗教の教祖である。とにかく怪しすぎる人物なのだ。

彼の作る料理は見た目も美しく、食べても美味しい。彼の信奉者であるらしいタイラーは、感動して涙まで流す。一方、マーゴはそんな状況に違和感を持つ。そんな中、少しずつ異変が起き始める。

最初の異変は、本来ならパンが出てくるはずの皿だ。スローヴィクは「パンは貧しい人々の食べ物だ」という理由で、パンを出さない。その代わり、パンにつけるはずのソースだけを出す。みんなは「なんとしゃれた趣向だ!」とソースを食べる。マーゴだけが「何じゃ、そりゃ」とばかりに、口にするのを拒む。

そして、まもなくさらなる異変が起きる。副シェフが作ったという料理が出される直前に、とんでもないことが起きる。それはもはや狂気と呼ぶにふさわしい世界だ。

そこからどんどん狂気が加速していく。何しろこの日のディナー自体が、スローヴィクによるある計画のもとに企図されたものだったのだ。

その後は阿鼻叫喚の修羅場の連続。これはスローヴィクによる復讐劇なのだろうか。早いうちから不穏な空気が漂っていたとはいうものの、こんな展開は予想だにしなかった。ドラマは完全にサスペンスからホラーへと転換する。

はたして、参加者たちはこの修羅場から脱出できるのか。あるいは全員討ち死にか。

というところで、最後にマーゴが繰り出す作戦が傑作すぎる。まあ、詳しいことは書かないが、皮肉極まりない結末。「どんな高級料理よりもチーズバーガーが最高だぜッ!」とつくり手が大見得を切っているようだ。

劇中随所に見られたブラックなユーモアが全開になったラストを見て思った。これはサスペンスやスリラー、ホラーの形を借りて、金持ち連中(高級レストランをありがたがるような)を痛烈におちょくっている映画なのではないか。現在の格差社会を皮肉たっぷりにこき下ろした映画ではないのか。

スローヴィクがこういう行動を起こす動機が説明不足だったり、後半はかなりハチャメチャな展開ではあるものの、痛烈な社会風刺ドラマと見て取れば、なかなかに面白い作品だと思ったのである。まあ、好き嫌いは別れそうですが。

主演のレイフ・ファインズは、さすがにクセモノ役が似合う。そこに立っているだけで、全身から怪しさや不穏さを醸し出している。ほぼ一人芝居ともいえる彼の演技が堪能できる映画だ。

一方、アニヤ・テイラー=ジョイはとにかく華がある。今回は終盤では迫力のアクションも披露。ノリにノっている。まさしくスターのオーラを放っている俳優だ。しかし、よく見ると本当に目が大きいな、この子。

 

◆「ザ・メニュー」(THE MENU)
(2022年 アメリカ)(上映時間1時間47分)
監督:マーク・マイロッド
出演:レイフ・ファインズ、アニャ・テイラー=ジョイ、ニコラス・ホルト、ホン・チャウ、ジャネット・マクティア、ジュディス・ライト、ジョン・レグイザモ
*TOHOシネマズ 日比谷ほかにて全国公開中
ホームページ https://www.searchlightpictures.jp/movies/themenu

 


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