映画貧乏日記

映画貧乏からの脱出は可能なのだろうか。おそらく無理であろう。ならばその日々を日記として綴るのみである。

「ハッピーニューイヤー」

「ハッピーニューイヤー」
2022年12月15日(木)グランドシネマサンシャイン池袋にて。午後1時10分より鑑賞(シアター1/e-4)

~年末のホテルで繰り広げられる14人の恋愛模様。韓国版「ラブ・アクチュアリー

この間、ある人から「楽しい映画を紹介してくれ」と言われて愕然とした。観る映画のほとんどは、暗かったり(微かな希望はあるにしても)、色々と考えさせられたり、重たい映画ばかりで、楽しい映画などほとんど観ていなかったのだ。

こんなことではいかん!というわけではないが、何か楽しい映画はないかと思ったら、あるじゃないですか。韓国映画「ハッピーニューイヤー」。噂に聞けば、誰もが幸せな気分になれる映画らしい。よし!これにしよう。

クリスマス頃から大晦日にかけてのドラマである。ホリデームードに浮き立つ高級ホテル「エムロス」を舞台に、様々な男女の恋愛模様が描かれる。

男友達への告白を15年間もためらっているホテルのマネージャーのソジン(ハン・ジミン)は、「今年中に告白される」という占いの結果を知らされ、ウキウキし始める。ところが、相手の男・スンヒョン(キム・ヨングァン)は別の女性(コ・ソンヒ)と婚約したという。

ホテルのCEOヨンジン(イ・ドンウク)は、自宅のボイラーが故障したためホテルのスウィートルームに滞在することになる。そこで、ミュージカル女優志望のホテル従業員のイヨン(ウォン・ジナ)と知り合う。

公務員試験に合格できず、恋人にもフラれたジェヨン(カン・ハヌル)は、自殺を決意してホテルに滞在するが、ホテルのモーニングコール担当(ユナ)の声に癒される。

ホテルのドアマンのサンギュ(チョン・ジニョン)は、40年前の初恋の女性キャサリン(イ・ヘヨン)に再会する。

長い下積みを経てスター歌手となったシンガーソングライターのイ・ガン(ソ・ガンジュン)は、長年のマネージャー、サンフン(イ・グァンス)との契約満了が近づいていた。

ソジンの弟の高校生セジク(チョ・ジュニョ)は、アヨン(ウォン・ジアン)に片思いしているが、恥ずかしくて告白できない。

毎週土曜、「エムロス」でお見合いをする整形外科医ジンホ(イ・ジヌク)は、イケメンなのになぜか毎回フラれていた。

えーっと、これで全員かな。とにかくなんと14人もの男女の恋愛模様(1組だけ友情物語だけど)が描かれるのだ。

普通、これだけの人物のドラマを描いたら、混乱して何が何だかよくわからなくなってくるもの。しかも、彼ら彼女らの恋愛模様だけでなく、サブストーリーまで色々と組み込んでいるのだ(イヨンと認知症の母の関係とか、ヨンジンの亡き父との確執のドラマとか)。

ああ、それなのに、それなのに、ほとんど混乱することもなく、きっちりと、軽快な運びでドラマを最後まで持っていくのである。日本でも「猟奇的な彼女」でおなじみのクァク・ジェヨン監督の職人技が光りまくるではないか。

笑いはもちろんたっぷりある。自殺志願のジェヨンを、あの手この手で思いとどまらせようとするホテル側の作戦は爆笑もの。感動させるところは感動させるし、はしゃぐところは思いっきりはしゃぐ。すべて観客の期待に応えているのだ。

登場人物の年齢がバラバラなのも面白い。下は10代のロマンスから、上は熟年のロマンスまで、様々な年齢層の恋愛ドラマが展開される。なので、観客は自分の年齢に見合ったロマンスに感情移入できるわけだ。このあたりも、なかなか周到に考えられている。

音楽の使い方もうまい。スター歌手のウ・ガンの曲ばかりでなく、全編で様々な音楽が巧みに使われている。

終盤は、スンヒョンの結婚式から、熟年カップルの降雪エピソード、さらに大晦日のパーティー、エムロスの臨時株主総会と怒涛の展開で見せ場たっぷり(実際に大晦日に結婚式や株主総会が開かれるとは思わないが)。ラストは見事に大団円を迎えて、その上エンドロールでその後の恋の行方を見せる。最後の最後まで抜かりがないのだった。

本作に出演している俳優たちは、「虐待の証明」「密偵」のハン・ジミン(魅力十分!)、「ビューティーインサイド」のイ・ドンウク、「ミッドナイト・ランナー」のカン・ハヌル、「あなたの顔の前に」のイ・ヘヨンなど、若手からベテランまで韓国の映画やテレビドラマで活躍する人気者が揃っている。あのクォン・サンウも本人役でカメオ出演している。それもまたこの映画にはふさわしい。

いわば韓国版「ラブ・アクチュアリー」といったところ。クリスマス時期にハッピーな気分にさせて欲しいという観客の期待に応えて、その狙い通りに仕上げられた映画である。年末年始に何にも考えずに観るには最適な一本だろう。

と言いつつ、次からはまた重たい映画を観そうな気がするなぁ……。

◆「ハッピーニューイヤー」(HAPPY NEW YEAR)
(2021年 韓国)(上映時価2時間18分)
監督:クァク・ジェヨン
出演:ハン・ジミン、イ・ドンウク、カン・ハヌル、イム・ユナ、ウォン・ジナ、イ・ヘヨン、チョン・ジニョン、キム・ヨングァン、ソ・ガンジュン、イ・グァンス、コ・ソンヒ、イ・ジヌク、チョ・ジュニョン、ウォン・ジアン
新宿ピカデリーほかにて公開中
ホームページ https://gaga.ne.jp/happynewyear/

 


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