映画貧乏日記

映画貧乏からの脱出は可能なのだろうか。おそらく無理であろう。ならばその日々を日記として綴るのみである。

「最後まで行く」

「最後まで行く」
2023年5月20日(土)ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後1時20分より鑑賞(スクリーン7/D-9)

~刑事VS監察官の迫力のバトル。息をもつかせぬ韓国映画のリメイク

この前の日曜の21日。渋谷の入管法改悪反対デモに参加してきた。参加者なんと7000人。それがサウンドカーのノリのいい音楽とパーカッションに乗せて、シュプレヒコールを叫びながら渋谷・表参道を行進する。道行く通行人や外国人観光客はカメラを向け、私はすっかりスター気分! いや、そんなことを言っている場合ではなかった。とにかく反対の声は急激に広がっているゾ。

 

その前日には藤井道人監督の「最後まで行く」を鑑賞。「ヴィレッジ」をはじめ公開作が相次ぐ藤井監督は、今乗りに乗っている監督の1人だろう。その藤井監督の今回の新作は、フランスや中国など各国でもリメイクされた2014年の韓国映画の日本版リメイク。

年末の4日間を描いたドラマだ。12月29日の夜。危篤の母の元へと車を走らせる刑事の工藤(岡田准一)。別居中の妻から母が亡くなったとの知らせを受け、気が動転した彼は車の前に現れた1人の男をはねてしまう。工藤は男の遺体を車のトランクに入れて、その場を立ち去る。

冒頭から不気味なBGMが流れ、尋常でない緊張感がスクリーンを包む。その中で工藤は焦りまくっている。母が危篤というだけでなく、署の裏金疑惑を週刊誌が嗅ぎつけたらしいとの情報が入ったのだ。彼はヤクザの親分から裏金をもらっていた。

そんな中で起こした事故。必死に隠ぺいを図る工藤。しかし、まもなく飲酒検問に引っかかる。車のトランクで死んだ男のスマホが鳴り、あわや一巻の終わりという瀬戸際まで行く。

そこに現れたのが県警本部の監察官・矢崎(綾野剛)だ。彼は工藤の署を調べるためにやってきたという。矢崎は工藤に必ず署に戻ることを約束させ、その場は彼を解き放つ。

その後、工藤は母の葬儀場にたどり着き、男の遺体を母の棺桶に入れ、母とともに斎場で焼こうと試みる。その時、工藤のスマホに一通のメッセージが入る。「お前は人を殺した。知っているぞ」。送り主は矢崎だった。工藤は矢崎から追われる身になってしまう……。

不勉強ながらオリジナルの韓国版は観ていないのだが、大筋はオリジナルをなぞりながら、細部を色々と手直ししているらしい。

冒頭の緊張感はその後も持続する。あわやの場面の連続だ。裏切り、騙し合い、危機の波状攻撃が襲ってくる。まさにノンストップの犯罪サスペンス。展開も二転三転する。よくよく考えれば、無理筋だったり偶然の出来事が多いのだが、それを力技でねじ伏せる。息もつかせぬ展開で押し切ってしまう。

序盤は小悪党の刑事・工藤を冷徹な観察官・矢崎が追い詰める展開。だが、実は矢崎もとんでもない悪党であることが中盤になってから露見する。そこからは、それまで工藤の視点から描かれたドラマをもう一度矢崎の視点から描き直す。このあたりの展開はオリジナルに沿っているのだろうが、なかなか良く考えられている。

ドラマの背景として、権力の腐敗ぶりや、それにマネーロンダリングという形で協力する宗教法人(お寺)の無法さを織り込むなど、社会の裏側に焦点を当てたところもいかにも藤井監督の映画らしい。

崩壊寸前の工藤の家庭や、出世のために手段を選ばない矢崎の人間関係なども、それなりにドラマに盛り込まれている。

緊張感は後半になっても失速しない。工藤VS矢崎のバトルはどんどん白熱していく。そこにヤクザの親分(柄本明)も絡んでくる。

こちらかと思えば、またあちら。話はどんどん転がり、二転三転どころでは済まなくなる。特に終盤は「これで終わりだろう」と思ったところから、またドラマが始まる。それも何度も繰り返すのだ。工藤と矢崎の悪党比べは果てることがない。

アクションもテンコ盛りだ。工藤と矢崎のバトルは肉弾戦、銃撃戦とどれも迫力満点。それ以外にも日本映画には珍しい壮絶なバイオレンスシーンなど、バラエティー豊かなアクションの見せ場の連続だ。

そして、面白いことに笑いの要素もある。工藤と矢崎を演じた岡田准一綾野剛が、わざと大げさな演技をしていることもあって、極限状態に追い込まれた2人のたたずまいや行動が、なぜか笑いを誘ってしまうのだ。

大金も絡んでどんでん返しの連続の終盤は、まるでゾンビ映画のようでさすがにやり過ぎの気もするが、まあ面白いのは面白い。

というわけで、緻密な脚本とスピード感あふれる演出、そして岡田准一綾野剛の迫力の演技で、上出来の熱いエンターティメント映画になっている。リメイク映画としてはなかなかのものだと思う。

◆「最後まで行く」
(2023年 日本)(上映時間1時間58分)
監督:藤井道人
出演:岡田准一綾野剛広末涼子磯村勇斗駿河太郎山中崇黒羽麻璃央、駒木根隆介、山田真歩、清水くるみ、杉本哲太柄本明
*TOHOシネマズ 日比谷ほかにて全国公開中
ホームページ https://saigomadeiku-movie.jp/

 


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