映画貧乏日記

映画貧乏からの脱出は可能なのだろうか。おそらく無理であろう。ならばその日々を日記として綴るのみである。

「告白 コンフェッション」

「告白 コンフェッション
2024年5月31日(金)TOHOシネマズ池袋にて。午後2時より鑑賞(スクリーン8/D-8)

~親友同士だったはずの2人の激しいバトル。スリルと恐怖に満ちた山小屋の密室劇

 

体調が悪い。ブログのタイトルを「映画貧乏日記」から「映画闘病日記」に変更しようかしらん。まあ、それは冗談だが、自然に短い尺の映画を選択してしまうのは事実。この日観たのはなんと74分の映画。山下敦弘監督の「告白 コンフェッション」である。これなら体調が悪くても大丈夫?!

山下監督は好きな映画監督の一人。初期の「ばかのハコ船」「リアリズムの宿」ではダメ人間の生きざまをユーモラスに描いて注目を集めたが、その後は「リンダ リンダ リンダ」「天然コケッコー」で青春を瑞々しく切り取るなど、その作品の幅はどんどん広がりハイペースで映画を撮り続けている。

今年も「カラオケ行こ!」「水深ゼロメートルから」と2本の新作を公開。そして、今年3作目として登場したのが「告白 コンフェッション」だ。福本伸行原作、かわぐちかいじ作画の漫画が原作のホラーテイストを混ぜ込んだサスペンス。山下監督にとって、こういう映画は初めてではないだろうか。

大学山岳部時代からの親友、浅井啓介(生田斗真)とリュウ・ジヨン(ヤン・イクチュン)は、16年前に登山中に行方不明になり事故死とされた同級生の西田さゆり(奈緒)の慰霊登山に毎年出かけている。今年も山に登った2人だが、猛吹雪で遭難してしまう。足に大ケガをして死を覚悟したジヨンは、16年前にさゆりを殺害したと告白する。その直後、2人は山小屋を発見し、そこにたどり着く。そこで救助隊の到着を待つ2人だったが……。

というわけで、序盤で舞台は野外から山小屋に移り、最後までそこが舞台になる。いわゆるワンシチュエーションのドラマである。この閉塞空間を効果的に使った作品だ。

山小屋にたどり着いて命拾いした浅井とジヨンだが、それぞれに立場が違う。ジヨンは自分が死ぬと思って殺人の告白をしたのだが、助かった今は告白を悔やんでいる。その告白を聞いていたのが浅井だ。もしかしたら、ジヨンは自分を殺して口封じするかもしれない。浅井はそう考えて疑心暗鬼になる。

その恐れを裏付けるかのように、ジヨンは奇妙な行動をとる。足が悪いのに突然、浅井の前から姿を消して意外な場所から現れたりする。携帯を置いてきたと言っていたのに、なぜか隠れて通話をしている。怪し過ぎるのだ。

言語の問題もある。原作では日本人2人だったのを、映画では日本人と韓国人の設定に変更。元留学生だったジヨンは日本語も操れるが、時々韓国語で何事かをつぶやく。それが浅井をますます不安にさせる。

閉ざされた空間で繰り広げられる密室劇。外では絶えず吹雪が吹き荒れ、その音が室内でも聞こえる。そこに不穏な劇伴がかぶる。異様な緊張感がスクリーンを覆い、ハラハラのサスペンスが展開する。

そして、途中からはホラー的な味が加わり、親友だったはずの2人が血みどろのバトルを繰り広げるようになる。ジヨンはどんどん暴力的になっていき、髪を振り乱して浅井を追う。それに対して、必死で逃げて身を隠す浅井。逃げる浅井、追うジヨン。両者の攻防が加速していく。

密室とはいえ、そこは山小屋。中2階や階段、様々な部屋、刃物などの小道具を効果的に使い、両者のバトルを盛り上げる。浅井が高山病のせいで時々目が見えにくくなるという設定も、2人の戦いを面白くしている。

そこでは笑いの要素もある。まるで死霊のように匍匐前進でジョンが浅井に迫ったり、ジヨンの関節が奇妙な動きをする場面もある。やりすぎ感満載で思わず笑ってしまうのだ。これがスリルと恐怖の良いアクセントになっている。

終盤はさらにホラー映画の色彩が強くなり、もはや収拾のつかない世界へ。そこで、今度は浅井に関する驚愕の事実が明らかになる。ええ?! ホントかよ……。

そして到着する救助隊。これはいったいどういう決着になるのか。と思ったら夢オチかよ! な~んだ。

いや、そうではなかった。その先にはもうひとヒネリあって、この映画で最も凄まじい場面が映し出されて映画が終わる。

漫画が原作のせいか、「それはいくら何でも強引でしょ」と言いたくなる場面もある。サブストーリーとして、浅井、ジヨン、西田の関係性をもう少し詳しく描いてほしかった気もする。

それでも、74分という短い尺を一気呵成に駆け抜ける圧倒的な迫力とパワーには素直に感服。ハラハラのスリルと恐怖感はかなりのもので、見終わってお化け屋敷を出てきたような感覚を覚えた。これ以上長かったらグッタリ疲れたかも。エンドロールで流れるマキシマム ザ ホルモンの曲も壮絶。

濃密な演技を披露した生田斗真とヤン・イクチュンの演技合戦も本作の見もの。特に硬軟自在なヤン・イクチュンの演技は素晴らしい。まさに怪演。監督・主演作「息もできない」、日本映画「あゝ、荒野」などで知られるが、やはり良い俳優だと再認識した次第。

わずかな出演だが、ほぼ顔の表情だけで感情を表現した奈緒の演技も良かった。

◆「告白 コンフェッション
(2024年 日本)(上映時間1時間14分)
監督:山下敦弘
出演: 生田斗真、ヤン・イクチュン、奈緒
*TOHOシネマズ 日比谷ほかにて公開中
ホームページ https://gaga.ne.jp/kokuhaku-movie/

 


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