映画貧乏日記

映画貧乏からの脱出は可能なのだろうか。おそらく無理であろう。ならばその日々を日記として綴るのみである。

「ロボット・ドリームズ」

「ロボット・ドリームズ」
2024年11月21日(水)ヒューマントラストシネマ有楽町にて。午後6時45分より鑑賞(シアター1/E-12)

~セリフもナレーションもないアニメだが、感情の揺れ動きを繊細に伝える

 

アニメはあまり観ない。別に嫌いなわけではなく、実写を追いかけるだけで大変だからだ。それでもかなり高評価のアニメ映画があると聞いたので、観に行ってみた。

2013年に「ブランカニエベス」という映画が公開されて話題になった。グリム童話「白雪姫」と闘牛を織り交ぜたダークファンタジーで、モノクロ&サイレントで描いたユニークな作品だ。私も鑑賞したがなかなか面白かった。

その監督であるスペインのパブロ・ベルヘルは、その後日本公開作がなく、いったい何をやっているのかと思ったら、いきなりのアニメ監督初挑戦である。アメリカの作家サラ・バロンによる同名グラフィックノベルを映画化した。

舞台は1980年代のニューヨーク。そこでは擬人化された動物たちが暮らしていた。マンハッタンで孤独な日々を送っていたドッグは、たまたま目にしたCMでロボットの存在を知り、さっそく注文。送られてきたロボットを組み立てて、それからは毎日一緒に過ごすようになる。街に繰り出して楽しい時間を過ごし、友情をはぐくむドッグとロボット。

だが、夏になってビーチで海水浴した帰りに、ロボットはさびて動かなくなってしまう。何とか修理しようとするドッグだが、ビーチはシーズンオフになって閉鎖されてしまう。2人は離れ離れになってしまう……。

この映画にはセリフもナレーションもない。それなのに登場人物たちの感情の揺れ動きを繊細に伝える。先日取り上げた「ゴンドラ」もセリフなしの映画だったが、あちらは実写映画。アニメで同じことをやるのは相当にハードルが高そうだが、それを軽々とやってのけている。

序盤はドッグの孤独を浮き彫りにする。一人でテレビゲームをして、テレビを見て、電子レンジでレトルト食品を温めて食べる。何とも味気ない毎日だ。そんな中で、ロボットのCMを観て「友達になれるかも」と思い、さっそく購入する。

それからは今までとは全く違う、楽しい日々が待っていた。2人で地下鉄に乗って出かけ、街でローラースケートを楽しんだりする。家に帰ってももう一人ではない。そこにはロボットがいる。そんなキラキラした日々を、ベルヘル監督は生き生きと描き出す。

ところがビーチで海水浴をした帰りに、ロボットは動かなくなる。ドッグは修理しようとしたが、ビーチはオフシーズンになり閉鎖。それでもドッグは侵入を試みるが、あえなく捕まってしまう。なす術がなくなったドッグは、来年ビーチがオープンするのを待つことにする。

それからはビーチに取り残されたロボットが、夢を見る様子が描かれる。何とか動くようになってビーチを抜け出し、ドッグの家に帰る夢だ。

しかし、現実は過酷だ。ロボットは片足を奪われ、雪に覆われて埋もれてしまう。それでも彼はドッグのもとに帰る夢を見る。なんとも切なく哀しい日々で感情を揺さぶられる。

だが、つらいエピソードばかりではない。小鳥の親子との交流なども描かれる。そのユーモラスな場面では、ほっこりと温かな気持ちになれる。

一方、ドッグは来年のビーチのオープン日をメモして貼り出し、忘れないようにする。ロボットとまた一緒に過ごしたいという思いは強い。それでも彼に変化が訪れる。ダック(つまりアヒル)と仲良くなるのだ。一緒にパイクに乗って釣りに出掛け、楽しい日々を送る。

この映画では80年代のニューヨークの様々なアイテムが精緻に描かれている。壁に貼られたポスターや街並みなどが、いずれもリアルに描かれている。それが独特のノスタルジックな雰囲気を生み出している。

音楽の使い方も絶妙だ。特にアース・ウインド・アンド・ファイアーの「セプテンバー」が効果的に使われる。

キャラクターの造形はシンプル。アニメとはいえ、今どきのリアルなキャラクターとはまったく違う。それでも表情は豊かで、多くのことを物語っている。

終盤、ロボットの運命は大きく変転し新たな再生を果たす。そんな中で彼はついにドッグと遭遇する。はたして、その時ロボットはどうしたのか……。

最後のほうは切なさが最高潮に達して、涙を誘われる人も多いはず。そして、ちょっぴりほろ苦くも、ハッピーなラストを観て安心するだろう。

この映画を観て「パスト ライブス/再会」を思い起こした人も多いという。なるほど、あの切なさは共通するものがあるなぁ。

というわけで、アニメ映画で久々に感動したのであった。本当によくできた作品だ。

◆「ロボット・ドリームズ」(ROBOT DREAMS)
(2023年 スペイン・フランス)(上映時間1時間42分)
監督・脚本:パブロ・ベルヘル
*ヒューマントラストシネマ有楽町ほかにて公開中
ホームページ https://klockworx-v.com/robotdreams/

 


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