「プレゼンス 存在」
2025年3月11日(火)ヒューマントラストシネマ渋谷にて。午後2時30分より鑑賞(シタアー1/C-10)
~全編を幽霊視点のカメラで描いたソダーバーグ監督のホラー映画

スティーヴン・ソダーバーグ監督といえば、「トラフィック」「オーシャンズ」シリーズをはじめ、多様なジャンルの映画を監督していることで知られる。一時は映画監督を引退してTVの世界に行ったが、その後は再び映画監督に復帰しユニークな作品を送り出している。
とはいえ、最近は彼の監督作を観ていないなと思ったら、ついに出ました新作映画。それも初のホラー映画「プレゼンス 存在」だ。
ある屋敷に4人家族が引っ越してくる。母レベッカ(ルーシー・リュー)、父クリス(クリス・サリヴァン)、長男タイラー(エディ・マデイ)、長女クロエ(カリーナ・リャン)。彼らはそれぞれに秘密を抱えているらしかった。そんな中、10代の少女クロエは、家の中に自分たち以外の何かが存在しているように感じる……。
典型的なお化け屋敷の話だ。その屋敷は大きな家だが、別に薄気味悪いわけではない。きれいな家でとてもお化けなど出そうにない。その家の中だけが舞台のドラマだ。
映画の冒頭、その家の中をカメラが動き回る。広角レンズの手持ちカメラで、揺れる映像が映し出される。何だ? これは。
そんな中、この家を内覧に来る家族がいる。母、父、息子、娘の4人家族だ。特に母がこの家を気に入り、契約することにする。そこで業者が入り、壁の色を塗り替える。そして、いよいよ家族が引っ越してくる。
この家族は、それぞれに問題を抱えて崩壊寸前らしい。母親は息子を溺愛し、娘をあまり気にかけない。しかも、彼女は何やら不正を働いているらしい。父はそんな母親に疑念を抱き、2人の仲は微妙な感じらしい。一方、兄は水泳の選手だが、こちらも裏で良からぬことをしているらしい。
そして、一番問題なのが娘のクロエだ。彼女は精神のバランスを崩している。その原因はどうやら親友が死んだことにあるようだ。彼女にとっては不可解な死だった。
ある時、クロエは家の中に「何か」が存在しているように感じる。もしかしたら、それは亡くなった親友の幽霊ではないのか? 彼女はそう思うようになる。
とまあこんな感じのストーリーで、ドラマ自体は王道のホラー映画の様相だ。だが、コワさはあまりない。ホラー映画としての見せ場はせいぜいポルターガイスト現象ぐらい。背筋ゾクゾクもののコワさとは無縁なのだ。
では、この映画はつまらないのか?
答えは否だ。最初に疑問を抱いたカメラの動きは、なんと幽霊視点の映像。幽霊が動き回り、登場人物を見つめるのだ。人物視点のカメラを使うことはよくあるが、全編にわたって、しかも幽霊視点のカメラでドラマを追うというのは、あまり聞いたことがない。それだけでこのドラマは抜群に面白くなる。
撮影を担当するのはピーター・アンドリュース。何のことはないソダーバーグの別名だ。つまりソダーバーグ自身がカメラを操っているのだ。家の中を部屋から部屋へ、人物から人物へと縦横無尽にカメラは動く。
その中で、焦点を当てるのはやはりクロエだ。幽霊はクロエに親近感を抱き彼女を見守る。ある時は遠くから、ある時はクローゼットの中から、そして至近距離から。そこにはのぞき見的な描写に加えて、ユーモアや独特の情趣も漂っている。それが、このドラマをさらに盛り上げる。
終盤になって謎の霊能者が現れたあたりからドラマは大きく動く。両親が家を留守にする間、兄とクロエに恐ろしい魔の手が迫る。スリリングな展開で目が離せない。そして思うのだ。本当に怖いのは幽霊より人間かもしれない、と。
俳優陣では、「キル・ビル」「チャーリーズ・エンジェル」などでおなじみのルーシー・リューが息子を溺愛する母親レベッカを演じている。最後のシーンでの彼女はさすがの演技。また、娘クロエを演じたカリーナ・リャンも印象的な演技だった。
幽霊視点のカメラで、幽霊屋敷のドラマを撮影するというアイデアが秀逸なドラマだ。編集もいいセンスをしている。常に人を驚かせることをしてきたソダーバーグらしいホラー映画といえるだろう。
◆「プレゼンス 存在」(PRESENCE)
(2024年 アメリカ)(上映時間1時間24分)
監督:スティーヴン・ソダーバーグ
出演:ルーシー・リュー、クリス・サリヴァン、カリーナ・リャン、エディ・マデイ、ウェスト・マルホランド、ジュリア・フォックス
*TOHOシネマズ 日比谷ほかにて公開中
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