「ミッキー17」
2025年4月1日(火)イオンシネマ板橋にて。午後3時45分より鑑賞(スクリーン9/F-10)

4月1日はエイプリルフール。以前は映画サイトなどでも、派手に嘘の情報を乗せたりして面白かったのだが、最近はあまり見なくなった。普段でも偽の情報が飛び交うネット社会だけに、致し方ないところかもしれない。ちょっと寂しいけれど。
というわけで、4月1日に観た映画は「ミッキー17」。ポン・ジュノ監督がアメリカで撮った映画だ。エドワード・アシュトンのSF小説「ミッキー7」の映画化で脚本も自ら担当。ブラッド・ピットの製作会社「プランB」が製作にかかわり、ブラピがプロデューサーに名を連ねている。ちなみに、ポン・ジュノが最初にアメリカで撮った映画「スノー・ピアサー」もSFだった。
地球で多額の借金を抱えたミッキー(ロバート・パティンソン)は、一発逆転を狙って氷の惑星へ移住し、「夢の仕事」に就くことを計画する。だが、契約書をよく読まずにサインしてしまったその仕事は過酷な任務で、死んでしまうと新たなクローン体として再生し、何度でも同じ任務に挑むというものだった。ところがある日、手違いによってミッキーの前に彼自身のコピーが同時に現れたことから、彼の運命は大きく変わり始める……。
映画の冒頭、いきなりミッキーが死にかけている。氷の惑星で穴に落下したのだ。同僚が救助に来るが、本気で助ける感じではない。ミッキーもそれを受け入れているようだ。
実はミッキーは、命がけの仕事をして死んでも何度でも自身のコピーが作成され、再び危険な仕事をするという任務に就いていたのだ。コピーのたびに番号が更新され、今の彼は「ミッキー17」だった。
そこから話はさかのぼり、彼がなぜこんな立場になったのかが描かれる。「これからはハンバーガーではなくマカロンの時代」と言われ(なんじゃそりゃ)、友達とともにマカロンの店を出店したものの、多額の借金を背負ってしまったミッキー。闇金のボスは冷酷な男で、返済が滞った者は容赦なく殺される。ミッキーはそこから逃れ、氷の惑星への移住計画に応募したのだ。しかも、何でもいいから地球を脱出したいという思いから、契約書をよく読まずに現在のような過酷な仕事に就くことを了承してしまったのである。
そして、場面は再び現在。ミッキーが落下したそばには、この惑星の先住生物「クリーパー」がいた。きっとクリーパーに食べられて死ぬに違いない。ミッキーはそう覚悟した。ところがなぜかクリーパーはミッキーを助ける。
ミッキーは基地に戻る。だが、そこにはなんと「ミッキー18」が存在していた。同僚の報告でミッキー17は死んだと思われて、新しいミッキーのコピーが生成されていたのだ。コピーの重複は両者とも抹殺されることになっていたから、さあ大変。はたして2人のミッキーはどうするのか……。
本作は全編ブラックな笑いにあふれた映画だ。私はほとんどのシーンを笑って観ていた。しかし、ただ笑えるだけではない。そこには現代社会を投影したような場面がたくさんある。
例えば、借金から逃亡して最下層の仕事に就いたミッキーは、過酷な労働環境で働かされる。まさに搾取のターゲットだ。それは現在の構図と何ら変わるところがない。今も最下層の人々は格差社会で搾取され、貧困から抜け出せずにいる。
また、この氷の惑星への移住計画を推進するのは、マーク・ラファロ演じる入植司令官マーシャルと、トニ・コレット演じるその妻。その横暴ぶりはまさしく独裁者。彼らの姿はトランプ大統領をはじめとする現代の独裁的な政治指導者を連想させる。もっとも、この夫婦、アホアホで悪趣味ゆえに笑いを誘ってしまうのだが。
そして、この映画はクリーチャー映画でもある。クリーパーという謎の生物が登場し、人間を混乱に陥れる。マーシャル司令官は、クリーパーが攻撃していないにもかかわらず、彼らをせん滅することを命じる。このあたりは、世界各地で先住民を迫害してきた歴史を想起させる。
ポン・ジュノの映画は、こうして社会の現状を様々な形で投影させているのが特徴だ。それが私がポン・ジュノの映画が好きな大きな理由でもある。
本作は、「スノー・ピアサー」「グエムル -漢江の怪物-」「パラサイト 半地下の家族」など過去のポン・ジュノ映画のエッセンスが詰まっているように思える。ある意味、彼の集大成的な映画と言えるかもしれない。
後半、2人のミッキーが対立する。彼らはコピーなのに、それぞれ性格が微妙に違うのだ。恋人のナーシャにとって、どちらのミッキーも魅力的で一人を選べないというのも面白い。
その2人のミッキーを軸に、終盤は大迫力のバトルが繰り広げられる。いかにもSFアドベンチャーらしい展開だが、そこでもユーモアがタップリ。そのため緩いと感じてしまう人もいるかもしれないが、これもまたポン・ジュノの持ち味なのだ。最後の後日談まできっちり語ってドラマは終わる。
2人のミッキーを演じ分けたロバート・パティンソン、恋人役のナオミ・アッキー、同僚役のスティーヴン・ユァン、司令官夫妻役のマーク・ラファロ、トニ・コレットがいずれもいい味を出していた。
「グエムル -漢江の怪物-」が公開された時に、日本では怪獣映画ファンを中心にイマイチ評判が悪かった印象がある。しかし、怪獣映画に詳しくない私は、単なる怪獣映画を超えた文脈で観てとても面白かった。今回もクリーチャーの造形なども含めて、いろいろと評価は分かれるだろうが、私のようなポン・ジュノのファンにとっては十分に楽しめる映画だと思う。やっぱりポン・ジュノはポン・ジュノなのだ。
◆「ミッキー17」(MICKEY 17)
(2025年 アメリカ)(上映時間2時間17分)
監督・脚本:ポン・ジュノ
出演:ロバート・パティンソン、ナオミ・アッキー、スティーヴン・ユァン、トニ・コレット、マーク・ラファロ、アナマリア・ヴァルトロメイ、キャメロン・ブリットン、パッツィ・フェラン
* TOHOシネマズ 日比谷ほかにて公開中
ホームぺージ https://wwws.warnerbros.co.jp/mickey17/
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