「プロフェッショナル」
2025年4月14日(月)池袋HUMAXシネマズにて。午後3時15分より鑑賞(シネマ3/E-12)
~ジャンル映画の枠を超えた佳作。哀愁漂うリーアム・ニーソンの演技が魅力

かつては重厚な人間ドラマなどで性格俳優として活躍していたリーアム・ニーソンだが、いつの頃からかジャンル映画のスターに様変わりした。新作の「プロフェッショナル」もジャンル映画には違いないが、そこには彼ならではの個性が発揮されている。
ちなみに邦題の「プロフェッショナル」は、同時期に公開の「アマチュア」を意識したものだろうか。原題の「IN THE LAND OF SAINTS AND SINNERS」のほうが、この映画を端的に表していると思うのだが。
ある老いた殺し屋のドラマである。テロに揺れる1970年代の北アイルランド。長年殺し屋として活躍してきたフィンバー・マーフィー(リーアム・ニーソン)は、引退を決意して、海辺の町グレン・コルム・キルで静かに暮らそうと考えていた。そんなある日、首都のベルファストで爆破テロ事件を起こしたアイルランド共和軍(IRA)の過激派グループのメンバーが町に逃げ込んでくる。そのうちの1人の男が地元の少女を虐待していると知ったフィンバーは、男に制裁を下す。だが、そのことでテロリストたちと壮絶な戦いを繰り広げることになる……。
映画は緊迫した場面で幕を開ける。IRAのテロリストたちが、ベルファストのパブを爆破しようとしているのだ。だが、そこにある母子がやって来る。それを見たテロリストの一員、デラン・マッキャン(ケリー・コンドン)は母子に逃げるように促す。しかし、その前に爆弾が爆発する。
このシーンは、このドラマの背景に北アイルランド紛争があることを示すとともに、デランが単なる極悪非道なテロリストではなく、複雑な内面を持つ女性であることを示唆している。よく考えられたオープニングだ。
このドラマの主人公フィンバーは、海辺の町グレン・コルム・キルで本を販売して暮らしている。地元の警察官ビンセント(キアラン・ハインズ)と仲良しで、隣人たちとも親しく交流している。だが、その実、彼には裏の顔があった。殺し屋だ。
ある人物の殺害を依頼されたフィンバーは、手際よく相手を町はずれに連れて行き、穴を掘らせ、殺害しようとする。だが、それを実行する際には、一瞬躊躇し、悲しい表情を見せる。彼はもう殺し屋生活に耐えられず、引退しようとしていることがわかる。
この時のリーアム・ニーソンの演技が絶品だ。表情だけで多くを物語る。さすが元性格俳優。哀愁漂う演技だ。亡き妻のことを語る時の演技にも哀愁が漂う。そういえば彼は、実生活でも奥さんをスキー事故で亡くしているんだよなぁ。
引退して花でも育てようとするフィンバー。静かな暮らしが待っているはずだった。ところが、知り合いの地元の女の子の体に傷があることを発見する。どうやら虐待されているらしい。最初は母親を疑うがどうもそうではないようだ。すると、遠い親戚の男が家に出入りしていることを知る。虐待をしていたのは彼だった。
フィンバーは彼に制裁を下す。いや、簡単に殺しすぎでしょ、と思わないでもないのだが、相手の男がろくでもないヤツなのに加えて、フィンバーの怒りの炎がメラメラと燃え上がるので、つい納得してしまう。ここでもリーアム・ニーソンの演技力が功を奏する。
実は男はIRAのテロリストの一員でデランの弟だった。彼らはベルファストでの爆弾テロでお尋ね者となり、この町に逃げてきたのだ。デランは弟が行方不明になり必死で消息を追う。そして、やがてフィンバーのことを知り、フィンバーとIRAのメンバーが対決することになるのである。
冒頭で描かれたようにデランは複雑な内面を持つ。テロリストの冷酷さを持ち合わせる半面で、父親が死んだ際に弟のことを託され、彼を何が何でも守ると決意していた。平気で人を殺す一方で、殺害した相手の母親までは殺さずに見逃す。このあたりのキャラもよく考えられている。
フィンバーの後釜の殺し屋として登場するケビン(ジャック・グリーソン)のキャラも秀逸だ。最初は殺しなどなんとも思わない男として登場し、フィンバーと対立するが、実は不幸な家庭に育ち、いつかミュージシャンになってカリフォルニアに渡りたいと思っていることがわかる。フィンバーとそこはかとない交流を持つようになる。
ケビンが音楽好きということもあり、音楽ネタも話の中に出てくる。劇中で、突如としてギルバート・オサリバンの「ゲット・ダウン」が流れるのは、70年代という時代を象徴しているのだろうか。
本作はアクション映画に位置づけられる作品だと思うが、けっしてド派手なアクションを期待してはいけない。すでに70歳を超えたリーアム・ニーソンに、アクションの乱れ打ちなど望めない。その代わり、いや、だからこそ逆に彼の渋い枯れた味わいの演技が堪能できるのである。
それでも、クライマックスのパブ店内でのアクションシーンは、なかなかの迫力だった。フィンバーとIRAのメンバーが、大勢の店の客を巻き込みながら対決する。一度死んだと思われた相手が撃ってくるなど、ありがちな構成ではあるけれど、ツボを押さえた見せ方でハラハラドキドキ度はかなりのもの。
その後の教会でのフィンバーとデランとの対峙も味わい深い。そういえばデランを演じるケリー・コンドンは「イニシェリン島の精霊」でアカデミー賞助演女優賞にノミネートされたっけ。この人もいい役者です。
ラストも実に渋くてカッコいい。フィンバーがビンセントに送ったドストエフスキーの「罪と罰」が何とも言えない味わいを醸し出す。ビンセントを演じたキアラン・ハインズの渋すぎる表情もいいよなぁ。この人も、「ベルファスト」でアカデミー賞助演男優賞にノミネートされた。
ドラマの背景として随時顔を覗かせる北アイルランドの海や草原の風景も、ドラマに独特の情趣を加えている。
監督は長年、クリント・イーストウッド監督とタッグを組んできたロバート・ロレンツ。撮影もイーストウッド作品の撮影を手掛けてきたトム・スターンが務めた。そりゃあ、B級アクション映画と思って観るとヤケドするわな。
というわけで、アクション映画という先入観で観れば物足りないかもしれないが、実力派俳優たちの競演で哀切感たっぷりの見応えある映画になっている。何よりリーアム・ニーソンの存在感が抜群。これはもはやジャンル映画を超えた、リーアム・ニーソン映画なのだ。彼の演技を堪能すべし!
◆「プロフェッショナル」(IN THE LAND OF SAINTS AND SINNERS)
(2024年 アイルランド)(上映時間1時間46分)
監督:ロバート・ロレンツ
出演:リーアム・ニーソン、ケリー・コンドン、ジャック・グリーソン、キアラン・ハインズ、デズモンド・イーストウッド、コルム・ミーニイ
*TOHOシネマズ 日比谷ほかにて公開中
ホームぺージ https://professional-movie.jp
(外部のサイトに移動します。外部のサイトの内容については責任を負いませんので)
*はてなブログの映画グループに参加しています。よろしかったらクリックを。
*にほんブログ村に参加しています。こちらもよろしかったらクリックを。