映画貧乏日記

映画貧乏からの脱出は可能なのだろうか。おそらく無理であろう。ならばその日々を日記として綴るのみである。

「ベイビーガール」

「ベイビーガール」
2025年4月17日(木)TOHOシネマズ池袋にて。午後2時25分より鑑賞(スクリーン1/D-5)

~女性視点のエロティックスリラー。ニコール・キッドマンの大胆なチャレンジ

 

今年のアカデミー主演女優賞は「ANORA アノーラ」のマイキー・マディソンが受賞したわけだが、下馬評では「ベイビーガール」のニコール・キッドマンも有力だと言われていたようだ。いったいどんな映画なのか。公開から20日ほど経ってようやく観ることができた。

ハリナ・ライン監督によるオリジナル脚本作品だ。ライン監督はオランダ生まれ。主な監督作品にA24製作の「BODIES BODIES BODIES/ボディーズ・ボディーズ・ボディーズ」がある。本作もA24製作だ。また、俳優としてもポール・ヴァーホーヴェン監督の「ブラックブック」、トム・クルーズと共演した「ワルキューレ」などに出演している。

ニューヨークで大企業のCEOとして活躍するロミー(ニコール・キッドマン)は、舞台演出家の夫ジェイコブ(アントニオ・バンデラス)や子どもたちに囲まれて幸せな生活を送っていた。そんなある日、ロミーはインターンとして働く青年サミュエル(ハリス・ディキンソン)と出会い、目が離せなくなる。サミュエルはそんな彼女の心を見抜いて、挑発的なアプローチを繰り返す。いつしか2人の力関係は逆転し、ロミーはサミュエルに性的に服従していく……。

エロい映画だ。いきなりロミーとジェイコブ夫婦のエッチシーンから映画が始まる。だが、何やらおかしい。ロミーは性的に満足していないらしい。彼女は特殊な嗜好を持っていた。性的に相手に支配してほしかったのだ。いわゆるM女というやつかもしれない。

ロミーは夫と子供と幸せな日々を送る一方、ニューヨークの大企業(物流ロボットの会社?)のCEOとして活躍している。そんな中、会社にインターンとしてサミュエルという青年が入ってくる。

この男、見るからに怪しいのだ。最初から結構横柄な態度を取る。ロミーにも臆することがない。彼はメンターとしてロミーを指名する。ロミーは知らなかったのだが、部下が「CEOから直接学ぶのも有益だろう」とロミーの名前をリストに加えたらしい。しかし、いきなりCEOをメンターに指名するというのも大胆な行動だ。ロミーは最初、彼と会うのをためらう。実はロミーはサミュエルが気になっていたのだ。

というわけで、そこから先はロミーとサミュエルの不倫劇が始まる。そこでは性的な要素が大きなカギを握る。サミュエルはロミーがM女的な嗜好を持つのを見抜いて、S男的な振る舞いをする。要するに性的に主導権を握り、あれこれ指示するわけですな。ロミーはためらいつつ、それに従う。

言い忘れていたが、この映画はR18+でも、R15+でもなく、PG12だ。つまり、「12歳未満の方は、保護者の助言・指導が必要です」。というわけで、エロいのはエロいのだが、きわどいところは映らないように工夫している。ロミーとサミュエルのプレーも、サミュエルの行為にはピントを合わせず、ロミーの喘ぎ声と顔だけを映す。なるほど、これならPG12か。さすがA24。と変なところに感心するのだった。

それはともかく、2人の関係は職場ではロミーが上司でサミュエルは部下。しかし、性的にはサミュエルがロミーを支配するようになる。それが、やがて面倒な事態を招く。サミュエルは次第にロミーの家庭にも近づいてくる。

さらに、サミュエルはロミー以外の女性とも付き合うようになる。有能なロミーの部下、エスメだ。サミュエルはエスメに対してはノーマルに接しているという。「彼女はそれを望んでいないから」と言うのだ。ロミーはエスメに嫉妬する。こんな感じでロミーの周辺は、しっちゃかめっちゃかになるわけだ。

このドロドロの不倫劇のどこが目新しいかというと、従来この手のエロティックスリラーは「氷の微笑」に象徴されるように、男目線で描いた作品が多かったのに対して、本作は完全に女性目線で描かれていること。男性が魔性の女に翻弄されてとんでもないことになるのではなく、その逆なのである。いわば従来の固定観念を崩した作品といえるだろう。

もう1つ、従来の固定観念を崩したといえば、女性の性的な嗜好を前面に出していることだろう。ロミーは子供のころから、そういう性癖を持ち、治そうとしても治せなかったという。だが、夫のジェイコブは「そんなものは妄想だ」と断固として否定する。

冷静に考えれば、M男が存在するわけだから、M女がいてもおかしくはない。ロミーは「自分はノーマルじゃない」と言うが、そもそも何がノーマルかは曖昧だ。しかし、古い固定観念からすれば「女性がそんな性癖を持つはずがない」ということになるのだろう。そんな固定観念を突き崩し、女性を性的に解放しようとしたドラマともいえる。

しかし、まあ、19年間も夫婦をやっていて、妻のそういう性癖を知らなかったというのも何だかなぁ~。と思わないでもないが、謎の青年サミュエルの怪しさもあって、スリリングなサスペンスが展開する。会社の運命を左右するような大事件に発展するわけではないが、ロミー、サミュエル、ジェイコブが入り乱れて、凄いことになってしまうのだ。

結局、最後は落ち着くところに落ち着くのだが、そこでもまたこの映画らしい展開が待っている。ロミーの会社では女性の進出がさらに進み、ロミーは株主らしき男性に啖呵を切る。そして、ラストシーンはまたもやエッチシーン。だが、これが何とも面白いのだ。ロミーのエッチシーンとサミュエルが犬を相手にするシーンを重ねて、観客に様々な想像をさせる。ちょっとユーモラスで意味深なエンディングなのだった。

どちらがオスカーにふさわしいかはともかく、ニコール・キッドマンの大胆な演技には驚かされる。もともと単なるスター俳優というよりも、色々とチャレンジングな役を演じてきた人だが、それにしてもここまでやるか。その迫力に圧倒されてしまった。

◆「ベイビーガール」(BABYGIRL)
(2024年 アメリカ)(上映時間1時間54分)
監督・脚本:ハリナ・ライン
出演:ニコール・キッドマン、ハリス・ディキンソン、ソフィー・ワイルド、アントニオ・バンデラスエスター・マクレガー、ヴォーン・ライリー、ヴィクター・スレザック、レスリー・シルヴァ、ハイテ・ヤンセン、ロバート・ファリアー
*TOHOシネマズ 日比谷ほかにて公開中
ホームぺージ https://happinet-phantom.com/babygirl/

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