「フロントライン」
2025年6月30日(月)ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後3時より鑑賞(スクリーン6/C-8)
~未知のウイルスの最前線で戦う人々を描いた迫真の映画

やっと観たぞ「フロントライン」。「国宝」はまだです。3時間はなぁ。間で休憩を入れてくれないと腰が痛くなっちゃってさぁ。全身病気持ちの私だからねぇ。
まあ、それはともかくとして、「フロントライン」は日本で初めて新型コロナウイルスの集団感染が発生した豪華客船「ダイヤモンド・プリンセス」での実話を基にしたドラマ。いわばその後のコロナ禍の序章ともなった出来事である。
2020年2月3日、乗客乗員3711名を乗せた豪華客船「ダイヤモンド・プリンセス」が横浜港に入港した。船内では100人以上が新型コロナウイルス感染の症状を訴えていた。日本には大規模なウイルス対応を専門とする機関がないため、災害派遣医療チーム「DMAT」が急きょ出動することになるのだが……。
ドラマの中心はDMATの医師や看護師たち。ふだんは様々な病院等に勤務しているが、災害時には集結してその対応にあたる。とはいえ、相手にするのは災害でウイルス感染ではない。その方面の専門家もいない。
というわけで、DMAT統括の結城(小栗旬)は最初は出動要請を断る。だが、神奈川県と厚生労働省の強い要請により、結局は引き受けることになる。結城は船外に置かれた対策本部から、船内の指揮所で指揮を執る仙道(窪塚洋介)、隊員の真田(池松壮亮)らに指示を出し、難問の解決にあたる。対策本部には、厚生労働省の担当官の立松(松坂桃李)も詰めており、結城らと協力して対応にあたる。この4人を中心にドラマは展開する。
DMATの医師や看護師たちは、前代未聞の感染症に混乱しながら、フロントライン、まさに最前線で奮闘する。そこでは様々な対立や迷いもある。もちろんそれらを乗り越えた融和もある。そうした様子をテンポよく、緊張感タップリに映し出していく。人物のキャラも明確だし、実話ベースとはいえドラマ的な盛り上がりもある。医師の家族たちとのドラマなど、人間ドラマも適度に配置されている。序盤では観戦して重症になったアメリカ人の夫とその妻の愛情物語なども描いて、エンタメ性も担保している。
中心となるのは4人の男性だが、森七菜が演じる乗員や美村里江が演じる子連れの乗客など、女性も様々な形で存在感を発揮している。また、劣悪な環境下で感染して苦しむ東南アジア系の外国人乗員なども取り上げる。そうした人々も含めて多面的に描き出すことで、新型コロナに対する不安や恐怖、それに立ち向かっていく勇気などをスクリーンのこちら側に疑似体験させることに成功している。
DMATの医師や看護師にとって、最大の難問はあまりにも多くの感染者がいるということだ。重症の者もいれば軽症の者もいる。既往症を抱えた人もいれば、高齢者もいる。それらすべての乗客を一度に救うことはできない。そこで、東日本大震災での経験を教訓に「救える命を救う」ことを最優先にする。
途中からは、面白おかしく事態を取り上げようとするマスコミと厳しい指摘をする感染症の専門家に、結城たちは悩まされることになる。まあ、ここで出てくる視聴率万能主義のテレビ局員の轟(光石研)は、いくらなんでもステレオタイプで「現実にはいないだろう」と思わないでもないのだが、彼と対立する女性記者を登場させてうまくバランスを取っている。
この映画で何より感心するのは、DMATの人々を過大に英雄視していないことだ。混乱の中、彼らのやることがすべて正しかったわけではない。後から考えれば問題視されるようなこともあったに違いない。それでも、彼らはその時点で最善と思われる策を講じたのだと強く訴えかける。
終盤の愛知県に位置する藤田医科大学の関連施設への乗客の搬送も、過剰にヒロイックに描くことなく、DMATのメンバーがただベストを尽くそうとしていることを印象付ける。そうした努力こそが、この後のさらに恐ろしいコロナ禍への対応にも役立ったのだろう。
俳優陣もそれぞれが存在感を発揮しつつも、けっして大仰な演技をせずに抑制的に演じている。脇役に配した利重剛、滝藤賢一もいい味を出している。
この映画を実現させたのは、企画・脚本・プロデュースを担当した増本淳。発生から間もない事象を映画にするのは難しい。取材はもちろん各方面の根回しなどにかなりの労力がいる。劇中でも、「こんなことを描いて大丈夫なのか」と思うようなところが何か所かあったが、それでも本作を実現できたのは(しかも、インディーズ映画ではなくメジャーな作品として)彼の熱意のなせる業だろう。
それがあったとはいえ、監督の関根光才の演出も光る。趣里主演の「生きてるだけで、愛。」、杏主演の「かくしごと」など良質だが比較的小ぶりな映画のイメージが強い彼が、こういう大作でも持ち前の演出力を発揮していることには正直驚いた。
社会派エンタメとして、また知られざる出来事の記録として見応えは十分にある映画だ。
◆「フロントライン」
(2025年 日本)(上映時間2時間9分)
監督:関根光才
出演:小栗旬、松坂桃李、池松壮亮、森七菜、桜井ユキ、美村里江、吹越満、光石研、滝藤賢一、窪塚洋介
*TOHOシネマズ 日比谷ほかにて全国公開中
ホームぺージ https://wwws.warnerbros.co.jp/frontline/
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