映画貧乏日記

映画貧乏からの脱出は可能なのだろうか。おそらく無理であろう。ならばその日々を日記として綴るのみである。

「金髪」

「金髪」
2025年11月21日(金)グランドシネマサンシャイン池袋にて。午後3時20分より鑑賞(シアター9/c-8)

~シニカルな笑いがたっぷり詰まった学園暴走ドラマ

 

笑えるかどうかは人によって違う。他人が笑えるものも、こちらにとってはちっとも面白くなかったりする。逆に、こちらが笑い通しの映画も、近くの人を見たら全然笑っていなかったということもある。

先日、芳根京子&高橋海人主演の「君の顔では泣けない」が公開になったばかりの坂下雄一郎監督は、かなりシニカルなコメディを得意とする監督。私はその笑いが好きで過去作もけっこう観ている。その本領発揮ともいうべき映画が「金髪」だ。坂下監督のオリジナル脚本による作品で、今年の東京国際映画祭で観客賞を受賞した。

映画の序盤で「これは金髪の話ではなく私の話である」という主人公・市川の独白が入る。

とはいうものの、このドラマはブラックな校則、事なかれ主義、管理教育、過酷な教員の労働環境といった教育を巡る諸問題、SNSやマスコミの暴走といった社会問題などを背景にしていることは間違いない。それをシリアスに捉えるのではなく、シニカルなコメディーとして軽快に描いている。

主人公の市川は中学教師(岩田剛典)だが、事なかれ主義の典型。生徒にも教師にもいい顔をして、意見を聞かれれば両論併記のような当たり障りのないことを言う。極力自分を前に出さない。

だが、実は内心では、とてつもなく自意識過剰で、自分に対して自信満々で、周囲に対して常に毒を吐きまくる。その心の声を独白の形で延々と述べる。そうした言動と内心のあまりのギャップが笑いの種になる。

個人的には、脚本における独白の多用は好きではなく、コンクールの審査をする時もマイナス点をつけるのだが、こういう使い方をされれば文句は言えまい。とにかく笑ってしまったのだ。

そんな市川のクラスの生徒たちが、こぞって金髪にして登校する。その中心人物は板緑(白鳥玉季)という生徒。彼女たちは、他クラスの生徒が髪色について指導され、不登校になったのが許せずに抗議行動に出たのである。それによって校則を変えることを希望している。

この一件は、学校内はもちろんSNSなどを通じて世間の知ることとなり、教育委員会も乗り出してくる。それに対しても、市川はわかったようなわからないようなことを言う。

そんな中、事態を知った文科大臣の言葉で事情は急変。教育委員会や学校側は文科大臣の言葉を忖度して、校則を変えることにする。そのためのアンケートなども行い、いよいよ校則を変えようとなった時に、今度は総理大臣がテレビでひと言。それによって校則を変える話は、急遽取りやめになってしまうのである。

政治に翻弄される教育現場は、もはや情けないのを通り越して笑うしかないが、いずれにしても市川はこの一件に翻弄される。一時は収まりかけた金髪騒動は再び再燃し、なんと今度は市川の生徒への暴力疑惑が持ち上がる。彼は窮地に追い込まれる。

このドラマのもう一つの大きなポイントは、市川が大人になり切れていないことだ。友人と酒を飲みながら、すっかりオジサンになっちまった、昔はよかったと愚痴を言うのだが、そのくせ本心では大人の自覚もなく、自分は今でも若い、まだまだ行けると思っていた。それを恋人の赤坂(門脇麦)からズバリと指摘されてしまう。それをきっかけに赤坂は家を出てしまう。市川は私生活でも窮地に立つ。

その後もストーリーは意外な展開を見せる。「ええ!そんなことになるのか?」と驚いてしまった。ちょっとまあ、暴走気味で支離滅裂な感じだ。それでも相変わらずシニカルな笑いで面白いのは面白い。

そして最後には、生徒たちの成長に加えて、市川自身が自分と向き合い成長したさまを記す。暴走気味でも、押さえるべきところは押さえている。

映画の最後には、またしても「これは金髪の話ではない。私の話だ」という独白が入るのだが、それが「私の話」ではなく「私の白髪の話」になるのがミソ。最後の最後まで笑わせてくれる。

主演の岩田剛典は、三代⽬J SOUL BROTHERSということで、時代の先端を行くイメージがあるが、それがオジサンというギャップが面白い。生徒役の白鳥玉季の抜群の存在感も見逃せない。恋人役の門脇麦も安定の演技だ。

坂下監督らしい映画だと思う。ストレートな笑いではなく、毒気を含んだシニカルな笑いなので、誰でも笑えるわけではないだろうが、好きな人にはたまらないはず。私はこういう笑いが好きなのでそれなりに楽しめた。欲を言えば、もう少し話を整理したほうが良かったと思うが、そのとっ散らかった感じも坂下監督らしいところかもネ。

◆「金髪」
(2025年 日本)(上映時間1時間43分)
監督・脚本:坂下雄一郎
出演:岩田剛典、白鳥玉季、門脇麦山田真歩、田村健太郎、内田慈
*新宿バルト9ほかにて公開中
公式ホームページ https://kinpatsumovie.com/
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