「KIDDO キドー」
2025年5月2日(金)新宿シネマカリテにて。午後2時30分より鑑賞(スクリーン1/A-6)
~疎遠だった母娘の不器用な交流とすれ違いを独特のタッチで描いたロードムービー

今年のアカデミー監督賞を受賞した「ANORA アノーラ」のショーン・ベイカー監督が絶賛したという映画が「KIDDO キドー」だ。オランダのザラ・ドヴィンガー監督の長編デビュー作でベルリン国際映画祭に出品された。母と娘によるロードムービーである。
オランダの児童養護施設で暮らす11歳の少女ルー(ローザ・ファン・レーウェン)のもとに、離ればなれになっていた母のカリーナ(フリーダ・バーンハード)が突然やって来る。自称ハリウッドスターだというカリーナは、再会を喜ぶルーを勝手に施設から連れ出して、「ポーランドに住むおばあちゃんのところへ行く」と言う。カリーナの破天荒な言動に戸惑いながらも、一緒にいたい一心で着いていくルーだったが……。
どうやらルーのいる施設は劣悪というわけではなさそうだ。集団生活の厳しさはあるにしても、友達とも仲良くやっている。だが、それでも満たされない思いがルーにはあるらしい。それは母親への思いだ。ルーの母親カリーナは「ハリウッドに行く」と言ってルーのもとを去ってから、ずっと姿を現さなかった。
そんな中、突然カリーナから施設に電話がかかってくる。明日の10時に施設に来るというのだ。ペットの蛇(と言っても小型の蛇)と遊びながら、知らせを聞いたルーはウキウキになる。だが、翌日、時間になっても母は来ない。ルーは落胆する。ところが、その翌日、何の前触れもなくカリーナはやって来る。そして、ルーを連れ出すのだ。
ドアもまともに開かないおんぼろの車で、カリーナとルーは出かける。ルーは夕方までに帰ってくるつもりだった。だが、カリーナはボーランドの祖母の家へ行くと言う。そこに金が隠してあるので、それを取ってくる。その金で家を買おうなどと言うのだ。ルーは戸惑いつつも、久しぶりに会った母親と一緒にいたい思いだけで、カリーナに着いていく。
カリーナはハリウッドスターを自称するがどうも怪しい。それでもぶっ飛んだ女性なのは間違いない。「人生はゼロか100か」をモットーに、破天荒な言動を繰り返す。「1日1回叫ばないといられないから」と絶叫したりもする。
最初は控えめだったルーも、そんな母親に付き合ううちに次第に影響されていく。ウィッグをかぶり、派手な服を着て歩く。カリーナはルーに「私たちはボニー&クライドだ」と言う。
そんな2人の不器用な交流をドヴィンガー監督は生き生きと描き出す。ダスティ・スプリングフィールドの「Stay Awhile」やペニー・アンド・ザ・クォーターズの「You and Me」など1960~70年代の音楽が多用されることもあり、全体の雰囲気はかつてのアメリカン・ニューシネマを想起させる。映像もちょっと古びた懐かしい感じがする。その中でカリーナもルーも輝いて見える。
同時にポップなタッチも目に付く。アニメを使ったり、文字や音を登場させたり、遊び心満点の仕掛けがあちこちに散りばめられている。
まあ、カリーナのやっていることはメチャクチャなんですけどね。店に入って食い逃げまでする。もちろんルーも引き込んで。その挙句に追いかけられて車を暴走させる。そんなことをしているうちに、最初は無条件に母を慕っていたルーも、次第に違和感を抱くようになるのだ。
映画の後半で吐露するのだが、カリーナは「母親になりたかった」と言う。過去によくないことがあって、人生を行き直すために母親という地位を欲したのかもしれない。しかし、長らく離れていたこともあって、うまくルーと接することができない。もちろんルーも母親を欲していた。だが、それは「普通の母親」だ。ルーのような破天荒すぎる母親ではない。その両者のすれ違いが徐々に大きくなっていったわけである。
シリアスな場面は少ないドラマだが、だからこそカリーナとルーそれぞれの心情がうかがい知れる場面が心を突き刺す。
波乱に満ちた2人の旅。車は故障し、2人はヒッチハイクで目的地を目指す。そして到着した祖母の家。
ラストはハッピーエンドとはいかないが、ルーの成長を確実に記して終わる。彼女は自分で自分の道を決断したのだ。そして、エンドロールではあの蛇が効果的に使われる。爽快とは言い難いが、余韻を残す印象的なエンディングだった。
ルー役の映画初主演のローザ・ファン・レーウェンが、生き生きとルーを演じていた。ルーの心の内面をきっちり表現していた。一方、カリーナ役のフリーダ・バーンハードは、派手で破天荒な表情の裏で時折見せる疲れた表情が印象的だった。こちらも存在感ある演技だった。
ショーン・ベイカー監督が絶賛しただけあって、ザラ・ドヴィンガー監督の才能を感じさせる映画だった。今後のドヴィンガー監督に注目したい。
◆「KIDDO キドー」(KIDDO)
(2023年 オランダ)(上映時間1時間31分)
監督:ザラ・ドヴィンガー
出演:ローザ・ファン・レーウェン、フリーダ・バーンハード、マクシミリアン・ルドニツキ、リディア・サドウカ、アイサ・ヴィンテル
*新宿シネマカリテほかにて公開中
ホームぺージ https://culturallife.co.jp/kiddo_film/
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