読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

映画貧乏日記

映画貧乏からの脱出は可能なのだろうか。おそらく無理であろう。ならばその日々を日記として綴るのみである。

「角川映画祭」その4~「犬神家の一族」

角川映画祭」その4~「犬神家の一族
2016年8月12日(金)角川シネマ新宿にて。午後2時より鑑賞。

あのスケキヨである。映画「犬神家の一族」(1976年)を観たことがなくても、ゴムマスクの不気味な人物に恐怖を覚えた経験のある人は多いことだろう。今回の角川映画祭にあたって、角川シネマ新宿のロビーにはスケキヨが鎮座ましまして、記念写真の格好のターゲットになっているわけだ。

そんな「犬神家の一族」をなぜ今観ようと思ったのか。市川崑監督のこだわり抜いたであろう映像を大スクリーンで確認したかったからだ。今まではテレビ画面でしか観ることがなかったので。

日本の製薬王といわれた犬神佐兵衛が亡くなる。その遺産相続にまつわる争いを予期した弁護士の助手は、探偵・金田一耕助石坂浩二)を招くが、何者かに毒殺されてしまう。そんな中、佐兵衛の遺言状が公開されるが、莫大な遺産の相続者は佐兵衛の恩師の孫娘である野々宮珠世(島田陽子)と結婚した者と記されていた。佐兵衛の孫にあたる3人の男、佐清、佐武、佐智は珠世との結婚を目論むが、その過程で次々に奇怪な殺人事件が起きる。金田一はその謎を探るのだが……。

というわけで、ゴムマスクのスケキヨとは佐兵衛の孫、佐清のこと。戦争で顔に深い傷を負い、マスクをかぶっているという仕掛けだ。彼がホンモノの佐清なのかどうかというのが、ミステリーとしての大きなポイント。いかにも横溝正史原作らしく、おどろおどろしい一族の愛憎関係をバックに、コワ~イ話が進行する。

今回初めてスクリーンで観て感じたのは、やはりビジュアルのインパクトの強さである。スケキヨのマスク姿に加え、菊人形に擬せられた生首、水面から突き出た足など、印象的なビジュアルの連続。それ以外にも細かなショットで、市川崑らしいこだわりが十二分に発揮されている。

一番笑ったのが、金田一が走るシーン。コマ割りでその疾走を描くのだが、これって同じ市川崑によるテレビドラマ「木枯し紋次郎」の紋次郎の疾走シーンとそっくりじゃん!

箏曲を使った映画音楽も耳に残る。舞台となる戦後の時代の雰囲気も巧みに表現しているし、あらゆる意味で市川崑でなければできない作品と言えるだろう。キネ旬のベストテンで第5位に入ったと作品と聞いて、最初はぴんと来なかったのだが、あらためてスクリーンで観て納得できた。

それにしても相変わらずの角川映画の俳優陣の豪華さよ。飄々とした味わいで金田一耕助を演じた石坂浩二に加え、名優や実力者ぞろいの脇役陣も素晴らしい。そんな中、金田一が宿泊する旅館の女中役の坂口良子のコミカルな演技がいい味を出していた。若くして亡くなっただけになおさら印象的でした。

何にしても角川映画を代表する作品のひとつであり、市川崑の世界が如実に表れているだけに、観る価値は十分にあると思う。