映画貧乏日記

映画貧乏からの脱出は可能なのだろうか。おそらく無理であろう。ならばその日々を日記として綴るのみである。

「アステロイド・シティ」

「アステロイド・シティ」
2023年9月14日(木)池袋HUMAXシネマズにて。午後4時から鑑賞(スクリーン3/E-13)

~笑いと視覚的な魅力や驚きに満ちたウェス・アンダーソン印の映画

ウェス・アンダーソン監督といえば独特の作風を持つ映画監督。もはや映画作家と言ったほうがいいかもしれない。「グランド・ブダペスト・ホテル」や近作「フレンチ・ディスパッチ」など、とにかくその世界観はユニークだ。

最新作「アステロイド・シティ」も彼の持ち味を十二分に発揮した作品。時代は1955年。舞台は、人口わずか87人のアメリカ南西部の砂漠の町アステロイド・シティ。隕石でできた巨大なクレーターが観光名所のこの町で、ジュニア宇宙科学賞の式典が行われ、表彰式に5人の天才少年少女とその家族が招待される。だが、式典の最中に大変なことが起こり……。

この映画の見どころは、ウェス・アンダーソンの美意識に基づいて細部までこだわり抜いた映像。スペインに大がかりなセットを建てて、そこに砂漠の町を再現し、モーテルや小さなダイナー、天体観測所などを点在させる。彼の作品ではおなじみのシンメトリーの構図と独特の配色がここでも健在。それが実に魅力的だ。

ドラマの内容は群像劇のコメディー。主な登場人物は、宇宙科学賞で表彰される息子と3人の幼い娘たちとやって来た戦場カメラマンのオーギー・スティーンベック(ジェイソン・シュワルツマン)。彼は今まで言い出せなかった母の死を、子どもたちにようやく告げる。

そんなオーギーは、同じく受賞者である娘と町に来ていた映画スターのミッジ(スカーレット・ヨハンソン)と出会う。彼女は明らかにマリリン・モンローを意識した存在で、思わせぶりな態度でオーギーを惑わせる。

その他にも様々な人物が登場して、シニカルな笑いを振りまいていく。だが、それだけではないのだ。

このドラマは入れ子構造になっていて、全体は舞台劇の製作の裏側を描いたテレビ番組という設定になっている。そのパートはモノクロで描かれる。そこでは天才劇作家や演出家、俳優が登場して舞台劇の顛末を演じる。その舞台劇が「アステロイド・シティ」というわけ。

舞台劇「アステロイド・シティ」では、オーギーの義父(トム・ハンクス)が孫たちを迎えに来たり、オーギーとミッジが怪しい関係になったり、すったもんだの大騒ぎ。子供たちの授賞式では突如として宇宙人が現れ、この町の観光資源である隕石をかっさらっていく。慌てたアメリカ政府は町を封鎖し、宇宙人到来の事実を隠蔽しようとする。

その間にも、舞台劇製作の裏側を描いたテレビ番組が随所に挟み込まれる。そこでは劇作家の離婚話が展開したり、俳優が役にまつわるあれこれを披露する。

何じゃ? こりゃ。

うーむ、何を言いたいのかさっぱりわからんぞなもし。いったい何を描きたかったのだ。というか、いくら何でも詰め込み過ぎでしょう。これは。人物もエピソードも……。

過去作もそういう傾向はあったものの、今回はそれがエスカレートして、私のようなバカ者にはさっぱりワケがわからないのでした。

とはいえ、笑えるのは笑えます。子供たちがやる人名ゲームなんて、ナンセンスの極みでバカバカしくて大笑いしてしまった。彼らの発明もおバカです。

出演しているのは、ジェイソン・シュワルツマンなどアンダーソン組の常連に加え、スカーレット・ヨハンソントム・ハンクスティルダ・スウィントンウィレム・デフォーマーゴット・ロビーなどなど。けっこう出番の多い人はいいけれど、スティーヴ・カレルあたりは完全に無駄遣いだろう(笑)。

しかし、まあ、こんな超豪華なキャストを実現させるのだから、ウェス・アンダーソンの威光は相当なものですなぁ。そういう超有名役者たちが、真面目にアホアホな役を演じているから、つい笑ってしまうのである。

そんな笑いと視覚的な魅力や驚きは十分に堪能できるはず。おまけに、核実験のキノコ雲だの、宇宙開発だの、キテレツな宇宙人騒動だの、1950年代の雰囲気はたっぷりあるので、そのあたりに興味のある人は楽しめそう。

まあとにかく良くも悪くも紛れもないウェス・アンダーソン印の映画なので、それを承知の上でご覧くださいませ。

◆「アステロイド・シティ」(ASTEROID CITY)
(2023年 アメリカ)(上映時間1時間44分)
監督・脚本・製作:ウェス・アンダーソン
出演:ジェイソン・シュワルツマンスカーレット・ヨハンソントム・ハンクスジェフリー・ライトティルダ・スウィントンブライアン・クランストンエドワード・ノートンエイドリアン・ブロディリーヴ・シュレイバーホープ・デイヴィス、スティーヴン・パーク、ルパート・フレンド、マヤ・ホーク、スティーヴ・カレルマット・ディロン、ホン・チャウ、ウィレム・デフォーマーゴット・ロビートニー・レヴォロリ、ジェイク・ライアン、ジェフ・ゴールドブラム
*TOHOシネマズ シャンテほかにて公開中
ホームページ https://asteroidcity-movie.com/

 


www.youtube.com

にほんブログ村に参加しています。よろしかったらクリックを。

にほんブログ村 映画ブログへ にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村

はてなブログの映画グループに参加しています。よろしかったらクリックを。