映画貧乏日記

映画貧乏からの脱出は可能なのだろうか。おそらく無理であろう。ならばその日々を日記として綴るのみである。

まえがき・・・のようなもの

貧乏だ。どう考えても貧乏だ。金がない……。
周囲の同じようなフリーランス諸君もけっして裕福ではないようだが、それにしたってここまで貧乏なのは不可思議だ。
いったい稼いだ金はどこに消えているのか?
よくよく考えてみたが、結論は0.5秒で出た。映画だ。映画に決まっている。稼いだ金は、映画という暗黒のブラックホールに吸い込まれていくのだ。

いつからこんなことになったのだろうか。
昔はバンド活動なんぞというものをしていたから、映画館に通う時間もなかった。それが年を経るとともに、周囲からバンド仲間が少しずつ消えていった。「いい年して、こんなこと、もうやってられまへ~ん!」ということらしい、
そうすると必然的に、土日にやることがなくなってしまった。なにせオレはベーシストだ。「はなわ」(漫才「ナイツ」の塙宣之は弟だよ)みたいにベース漫談でもやればピンでも活動できるだろうが、そんな器用なことはオレにはできん。
超絶テクのベースなら、どっかのバンドから声もかかるだろうが、オレのベースはひたすらゴリゴリとルート音を弾きまくるだけだ。
なので、休日にやることがなくなってしまった。

さ~て、休日になにしよう~。
と考えているうちに思いついた。何を隠そう、オレはもともと脚本家志望だったのだ。実際に何本か脚本を書いて、映像化されたこともある。なのに、なのに、オレは映画というものをほとんど観ていなかったのだ。
これは由々しき事態である。テレビドラマはけっこう観ていたが、やはりテレビはテレビである。映画を学ばずして、脚本は書けんだろう。それで何が脚本家だ。バッカモーン!!!

オレの頭の中でメラメラとそんな考えが燃え盛り、とりあえず映画館に足を運ぶようになった。20年ほど前のことである。
最初は月に1本、それが月に2本になり、3本になるのに時間はかからなかった。1本、2本、3本、4本、うらめしや~。まるで「番町皿屋敷」ではないか。
映画という魔界に引き込まれていったオレは、ズブズブと底なし沼に引き込まれて、二度と抜けられなくなってしまった。

映画ごときで貧乏になるはずがない。そう考えるのは素人だ。酒やバクチや女で身を持ち崩す輩がいて、映画で貧乏にならない輩がいないわけがない。
何しろ近年、オレは年間120~130本の映画を観ている。映画料金は当日料金だと1,800円。前売り券なら1,400円~1,500円。その他会員割引などを使うともっと安くなる場合もあるが、平均するとやはり1,400円程度にはなるだろう。
だとすれば
1,400円×120本=168,000円
こんなに映画に金遣ってるのか。この親不孝者めが!

これを20年間以上続けてきたわけである。いや、最初のうちはここまでたくさん観てはいなかったから、単純に20倍はできないが、14倍ぐらいにはなるだろう。
というわけで、168,000円×14=2,352,000円
に、にひゃくさんじゅうごまんにせんえんだとぉ~。この人でなしが!
年収1,000万円のエリートサラリーマンならいざ知らず、公表できるほどの年収もないオレにとって、これはあまりにも重たい現実である。妻子もおらぬ気楽な独り暮らしにしても、だ。

ならば、この地獄から脱出は可能なのだろうか。おそらく無理であろう。何しろ映画という魔界にはまってしまったのだから。
となれば、ここはその行く末を記録しておこうと考えた。このまま貧乏街道をまっしぐらに突き進み、決定的な破滅を迎えるのか。それとも違う展開があるのか。

さーて、いかなる結末が待っておりますやら。