「ドント・ブリーズ」
TOHO シネマズ シャンテにて。2017年1月14日(土)午後1時5分より鑑賞。
痛いのは嫌いだが、怖いのも嫌いである。子供の時にはお化け屋敷に入ったものの、あまりの怖さに入ってすぐに飛び出てしまったという情けない思い出もある。まあ、さすがに今はそこまで怖がりではないと思うが。
それでも「怖いもの見たさ」を地でいくように、時々ホラー映画の類を鑑賞したくなるという困った性癖もある。例えば、あの「エクソシスト」だって、ちゃんと劇場に観に行って観たのである。しかも一人で。
今もたまに評判の怖い映画があると、観に行ったりする。今回も、特に若い連中の間で評判らしい怖い映画があるというので、オジサン若ぶって行ってまいりました。ハイ。
その映画は「ドント・ブリーズ」(DON'T BREATHE)(2016年 アメリカ)。ホラー映画の巨匠(といっても、出世して「スパイダーマン」なども撮っているわけだが)サム・ライミ監督が製作し、リメイク版『死霊のはらわた』のフェデ・アルバレスが監督したスリラー映画である。
主人公はロッキー(ジェーン・レヴィ)という女の子。自堕落な母親に苦しめられている彼女は、幼い妹とともに家を出て移住したいと考えている。その資金稼ぎのために、恋人のマニー(ディラン・ミネット)と友人アレックス(ダニエル・ゾヴァット)という2人の男の子とともに強盗に入る。
冒頭はその犯行シーン。誰も傷つけることなく、まんまと盗みに成功した3人だが、ロッキーはまだ資金が足りない。そんな中、マニーは新たな強盗の話を持ちかける。ロッキーは誘いに乗り、アレックスも一度は断るものの、ロッキーに気があることから結局参加することになり、3人は新たな犯行に乗り出す。
ターゲットは盲目の老人の家。戦争で失明した元兵士の彼は、娘を交通事故で亡くし、その賠償金を家に隠しているという噂。これは楽勝だと老人の飼う猛犬も眠らせ、家に忍び込む。ところが……。
というわけで、ここから盲目の老人という設定が効いてくる。何しろロッキーたちが目の前にいても、老人はその存在に気づかない。普通はすぐにバトルが展開して決着がつきそうな展開でも、そうはならないわけだ。その代わり、老人はものすごい聴覚と嗅覚を持っている。そのため、少しでも音を立てたりするだけで、一挙にロッキーたちは狙われてしまうわけだ。こういうところから、ハラハラドキドキのシーンが生まれ、その波状攻撃が続くのである。
しかも、この老人ときたら元兵士だけに、無茶苦茶に強い。そのため、最初に見つかったマニーはあっさり殺されてしまう。それによってロッキーとアレックスの恐怖はますます高まっていく。
老人は射撃にも長けているらしい。しかし、そこはさすがに目が見えないだけに、微妙に相手の急所をはずしたりする。これもまた面白い効果を生む。本当ならあっさり射殺されるはずの至近距離からの銃撃でも、生き残ることができたりするのだ。
老人の家の構造もハラハラドキドキ度を増幅させる。暗闇の中で脱出を図るロッキーとアレックスだが、なかなか成功しない。老人による追跡を逃れながら家の中をあちこち移動して、そのたびにあわやという目に遭う。
ロッキーたちも強盗犯だという弱みがあるために、携帯がつながるのに警察に連絡できない。その仕掛けもまた効果的だ。途中で目を覚ました猛犬も、ロッキーたちを窮地に追い込む。とにかく、いろんな手を使って観客をハラハラドキドキさせるのである。
それにしても、ロッキーとアレックスは老人の攻撃によって、何度も「死んだ!」という状況に陥る。しかし、そこから何度も復活するのだ。オイオイ、キミたちはゾンビかよ。
映画の途中ではロッキーたちが、地下室でおぞましい光景を目撃する。それによって、老人がますます怖い存在になっていく。もはや彼はただの盲目の元兵士ではなく。サイコパスに近い存在だ。そして、後半では意外な老人の攻撃がロッキーに迫る。
ええ? まさかそんな。その攻撃ときたらバカバカしいにもほどがあるのだが、ここまであっけらかんとやられたら、もはや文句は言えない。「どうせB級スリラーですから許してね」とでもいうような、作り手たちの潔い姿勢が伝わってきて、ついつい笑ってしまうのである。
ラストの後日談もいい味を出している。なんと死んだはずの老人が……。
結局のところ、ロッキーたちだけでなく。老人もゾンビみたいな存在だったわけである。なるほど、この映画はただのスリラーというだけでなく、ゾンビ映画的な側面もあったわけね。
怖くて面白いスリラー映画である。まあ何よりもアイデアが秀逸。この手の映画が好きな方にはおススメでしょう。
●今日の映画代、1100円。毎月14日はTOHOシネマズのサービスデーで安く鑑賞できます。