映画貧乏日記

映画貧乏からの脱出は可能なのだろうか。おそらく無理であろう。ならばその日々を日記として綴るのみである。

「アムステルダム」

アムステルダム
2022年10月29日(土)ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後12時より鑑賞(スクリーン9/D-11)

~超豪華キャストが集結した皮肉な笑いに満ちた歴史劇

なんだか最近けっこうなペースで映画館に行っているので、毎日アップしないと追いつかない感じです。というわけで、今日はほぼ1週間前に観た映画を・・・。

さて、クリスチャン・ベールは、ストイックに役作りに取り組む俳優として知られている。「ザ・ファイター」(2010年)では極端に痩せた姿で登場し、「アメリカン・ハッスル」(2013年)では、太っちょの一九分けの頭で主役を演じた。

その2作品の監督はデヴィッド・O・ラッセル。それに続いてベールとラッセル監督が3度目のタッグを組んだ映画が「アムステルダム」である。

舞台は1930年代のニューヨーク。医師のバート(クリスチャン・ベール)は親友の弁護士ハロルド(ジョン・デヴィッド・ワシントン)から、ある相談を持ちかけられる。有名な将軍が急死し、その死因を探るために解剖したいというのだ。だが、その直後に将軍の娘が何者かに殺害される。その場に居合わせたバートとハロルドは、殺人の濡れ衣を着せられてしまう。

その後は、時間をさかのぼってバートとハロルドが、第一次世界大戦に参戦した時のことが描かれる。2人は負傷して病院に運ばれ、看護師のヴァレリーマーゴット・ロビー)に命を救われる。それをきっかけに3人は親しくなり、「何があってもお互いを守り合う」と誓い合い、固い友情で結ばれる。

戦後、3人はしばらくアムステルダムで暮らすが、そのうちにハロルドとヴァレリーが親密になったこともあり、妻をアメリカに残してきたバートが帰国することになる。そして今、バートとハロルドはニューヨークに住み、ヴァレリーは行方不明になっていた。

舞台は再び現在のニューヨークに戻る。バートとハロルドは、容疑を晴らすため資産家のヴォーズ(ラミ・マレック)に接近する。その過程で2人はヴァレリーと再会する。再びめぐり会った3人は、戦争の英雄ディレンベック将軍(ロバート・デ・ニーロ)への接近を図る。そうするうちに、3人は自分たちが国家を揺るがす巨大な陰謀に関わっていることを悟るのだが……。

全体の構図はサスペンスだ。特に前半はかなり緊迫した展開が続く。ただし、本作の妙味はそこにはない。超豪華キャストが演じるクセモノたちが次々に登場し、独特のユーモアに彩られた会話を繰り広げる。その面白さこそが本作の最大の魅力だ。

何せ出てくるのが、クリスチャン・ベール、「アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル」のマーゴット・ロビー、「ブラック・クランズマン」のジョン・デヴィッド・ワシントン、「ボヘミアン・ラプソディ」のラミ・マレック、「ラストナイト・イン・ソーホー」のアニャ・テイラー=ジョイをはじめ、クリス・ロックゾーイ・サルダナマイク・マイヤーズマイケル・シャノン、大御所のロバート・デ・ニーロ、歌手のテイラー・スウィフトなどの面々。

しかも、これらのキャストすべてに見せ場があり、それぞれの個性が輝くのだ。テイラー・スウィフトが無残に轢き殺される場面など、思わずニヤリとさせられてしまった。マーゴット・ロビーの美しさも破格である。

これらの俳優が扮する資産家夫妻、ヤク中の刑事、MI6の諜報員など怪しい人物が総登場。したがって、話はかなり迷走気味だ。男女3人の友情物語から殺人ミステリー、謀略サスペンスへと転じるのだが、テンポよく描いているとはいえ、複雑でわかりにくいのは事実。そこについていけるかどうかで、この映画の評価は変わるかもしれない。

とはいえ、1930年代の風俗を再現した映像はゴージャスだし、ディテールへのこだわりもハンパでない(劇中に登場するアート作品とか)。さらに名撮影監督のエマニュエル・ルベツキによる映像も存在感たっぷりで素晴らしい。豪華キャストによる会話の妙と併せて、そのあたりに注目すれば結構楽しめそう。

終盤はデ・ニーロ扮するディレンベック将軍が物語の鍵を握る。復員会での彼の演説がこの映画のクライマックス。そこは再び緊迫の場面となる。さすがに大御所の演技は貫禄十分。はたして謀略の真相は明らかになるのか。

なんと驚くべきことに本作は実話をもとにしているという。もちろん虚実取り混ぜて描いてはいるのだが、本当に劇中で描かれた陰謀は存在したようなのだ。デ・ニーロ扮するディレンベック将軍にもモデルがいて、エンドロール前にその存在が明かされる。

ひいては、それが次に起こる第二次世界大戦の予兆ともなったわけで、そのあたりを考えれば、なおさら興味深い映画といえるかもしれない。陰謀通りにアメリカが独裁政権になっていたなら、その後の歴史はどう変わっただろうか。

歴史の裏側を独自の視線で描いた映画。良くも悪くも、ラッセル監督ならではの作品といえるだろう。詰め込み過ぎて迷走気味とはいえ、豪華キャストの演技だけでも観る価値はあるかもしれない。

 

◆「アムステルダム」(AMSTERDAM)
(2022年 アメリカ)(上映時間2時間14分)
監督・脚本:デヴィッド・O・ラッセ
出演:クリスチャン・ベールマーゴット・ロビー、ジョン・デヴィッド・ワシントン、クリス・ロック、アニャ・テイラー=ジョイ、ゾーイ・サルダナマイク・マイヤーズマイケル・シャノンティモシー・オリファントアンドレア・ライズボロー、テイラー・スウィフトマティアス・スーナールツアレッサンドロ・ニヴォララミ・マレックロバート・デ・ニーロ
*TOHOシネマズ日比谷ほかにて全国公開
ホームページ https://www.20thcenturystudios.jp/movies/amsterdam

 


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