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映画貧乏日記

映画貧乏からの脱出は可能なのだろうか。おそらく無理であろう。ならばその日々を日記として綴るのみである。

「カフェ・ソサエティ」

「カフェ・ソサエティ
池袋HUMAXシネマズにて。2017年5月5日(金)午後12時45分より鑑賞(シネマ5/D-10)。

高齢化社会とはいうものの、70~80代になっても現役で活躍するのは簡単なことではないだろう。まして、映画監督ともなればなおさらだ。現場でスタッフや出演者を指揮して、思い描いた通りの映像を撮影し、それを1本の映画に仕上げていく。その作業には、相当な体力と気力が必要なはずだ。

そんな中、次々に作品を生み出しているのがウディ・アレン監督である。 1935年12月1日生まれだから現在81歳。しかし、その活動は衰えを知らない。2010年以降に絞っても、「恋のロンドン狂騒曲」「ミッドナイト・イン・パリ」「ローマでアモーレ」「ブルージャスミン」「マジック・イン・ムーンライト」「教授のおかしな妄想殺人」と脚本・監督作品を量産。「ローマでアモーレ」には久々に自ら出演しているし、ジョン・タートゥーロ監督の「ジゴロ・イン・ニューヨーク」にも出演している。どれだけ元気なんだ!? この人。

そのウディ・アレン監督・脚本による最新作が「カフェ・ソサエティ」(CAFE SOCIETY)(2016年 アメリカ)である。

オープニングからアレン節が全開だ。軽快なジャズのメロディーに乗って、ノスタルジックな雰囲気のクレジットが流れる。ジャズはここだけでなく、実際の演奏シーンも含めて随所に登場する。

そして幕を開ける物語。1930年代のハリウッドとニューヨークの社交界を舞台に、一人の青年の恋と人生を描いたドラマである。

前半の舞台はハリウッド。冒頭は、映画業界の大物エージェントのフィル・スターン(スティーブ・カレル)が、華やかなパーティーで関係者たちと業界話を繰り広げる。そこにかかってくる1本の電話。ニューヨークに住む姉からで、「息子(つまり、フィルの甥っ子)のボビーがハリウッドで働きたがっているから面倒を見て欲しい」というのだった。

まもなくボビー(ジェシー・アイゼンバーグ)が、ハリウッドにやってくる。しかし、多忙なフィルにはなかなか会えない。その間には、売れない女優の娼婦と関わって、ハリウッドの厳しさを知ったりもする。ようやくフィルに会ったボビーは雑用係の仕事をもらう。同時に、フィルの指示によって秘書のヴェロニカ=愛称ヴォニー(クリステン・スチュワート)にハリウッドの街を案内してもらう。ボビーは美しいヴォニーに心を奪われてしまう……。

というわけで、前半に描かれるのはボビーとヴォニーの恋の行方だ。ボビーはヴォニーにぞっこんなのだが、実は彼女には別の恋人がいる。しかも、それが「まさか!!」の人物なのだ。そのため、2人の関係は迷走するのである。

そんなボビー、ヴォニー、そして彼女の恋人との三角関係が、いかにもアレン監督らしい軽妙なタッチで描かれる。なかでも印象的なのが、シニカルでユーモアに満ちたセリフ。それを聞いているだけで思わずニヤリとしてしまう。

後半の舞台はニューヨークに移る。ボビーはハリウッドに失望して、ニューヨークに帰ろうと決意。ギャングの兄が経営するナイトクラブの支配人に収まり、社交界でのし上がっていく。

そんな中で、ボビーは一人の女性と出会う。それはなんと、ハリウッドで恋した女性と同じ名前のヴェロニカ(ブレイク・ライブリー)という女性。はたして、2人の関係はどうなるのか。そして、ハリウッドに残ったヴォニーとのその後は?

そこから先の細かな展開は伏せておくが、ボビーに加えて兄や姉のドラマなども織り込みつつ、なかなかに含蓄に富んだ人間ドラマが描かれ、軽妙さの中にも人生に対する鋭い考察が見え隠れする。

ラストで映されるボビーとヴォニーの表情が、多くのことを物語る。もしもあの時、別な道を選択していたらどうなったのだろう。そんな思いは誰にでもあるはずだ。しかし、どちらの道を選んだとしても、そこには割り切れない思いや後悔を抱えることになる。「人生には、そんなほろ苦さがつきものなんだヨ」というアレン監督のつぶやきが聞こえてきそうなシーンではないか。

それでもアレン監督は言う。「人生は喜劇だ」と。まさに、それを体現するような映画だと思う。

ハリウッド黄金時代を背景としたドラマだけに、当時のスターや業界関係者の名前がポンポンと出てくるし、実際の当時の名画も登場する。とはいえ、ハリウッドを嫌いニューヨークに暮らし続けるアレン監督だけに、ハリウッドよりもニューヨークへの愛を感じさせる。

主人公のボビーは、アレン監督の分身といってもいいだろう。そのせいか、演じるジェシー・アイゼンバーグがどことなくウディ・アレンに似ているように見えてくる。2人のヴェロニカを演じるクリステン・スチュワートブレイク・ライブリー、叔父のフィルを演じるスティーブ・カレルなども存在感ある演技を見せている。

全編にアレン節が炸裂した映画だけに、安定感はタップリだ。もはや職人芸の世界と言ってもいいだろう。アレン監督の過去の作品が好きな人なら、最初から最後まで安心して楽しめるに違いない。

その一方で、「地獄の黙示録「レッズ」ラストエンペラー」などで知られる名撮影監督ビットリオ・ストラーロと初コラボして、色彩豊かな映像を生み出すなど新しいチャレンジも試みている。うーむ、この先もまだまだ活躍しそうなウディ・アレンである。最後にもう一度言うが、どれだけ元気なんだ!? この人。

●今日の映画代、1400円。事前にムビチケ購入。ただし、池袋HUMAXシネマズはムビチケを使ったネット予約ができないので、窓口の長~い列に並んで席を確保。