映画貧乏日記

映画貧乏からの脱出は可能なのだろうか。おそらく無理であろう。ならばその日々を日記として綴るのみである。

「355」

「355」
2022年2月7日(月)池袋HUMAXシネマズにて。午後12時30分より鑑賞(スクリーン6/D-8)

~主役級は全員女性。女性の時代らしく女性スパイが輝くアクション映画

「355」というタイトルのアクション映画。何ともそっけないタイトルだが、18世紀アメリカの独立戦争時代に実在した女性スパイのコードネームらしい。そしてこの映画、ごく普通のアクション映画ではあるものの中味はかなりユニーク。なにしろ主役級が全員女性なのだ。

南米の犯罪組織が、世界中のシステムを攻撃できるデジタル・デバイスを開発する。このデバイスを手にすれば、第三次世界大戦さえ引き起こせるという。CIA本部からデバイスの奪取を命令された女性エージェントのメイス(ジェシカ・チャステイン)は、ふだんは対立しているドイツのBND、英国MI6、さらにはコロンビアと中国の諜報機関に所属する女性エージェントたちと手を組んで、危険で過酷なミッションに挑むのだが……。

冒頭は麻薬取引のシーン……かと思ったら、実は世界を混乱に陥れるデジタル・デバイスの取引だった。こういうものをめぐって騒ぎが起きるというのも、いかにも今の時代らしい。とにもかくにも、のっけからアクセル全開。南米の豪邸でマフィアと特殊部隊が入り乱れて銃撃戦を展開する。

そのデバイスが闇マーケットに流出しようとしていることがわかり、奪取を命じられたのがCIAエージェントのメイス。彼女は同僚のニック(セバスチャン・スタン)とともに、パリに旅立つ。

しかし、パリでデバイスを奪取しようとした瞬間、BND(ドイツ連邦情報局)の秘密工作員マリー(ダイアン・クルーガー)が現れて、メイスと追走劇を繰り広げる。ここも地下鉄構内の銃撃戦など、スリリングなアクション全開だ。

さらに、そこにコロンビア諜報組織の心理学者グラシエラ(ペネロペ・クルス)が現れる。彼女はエージェントではなく、組織の人間のセラピーをしに来たのだが、図らずもデバイス争奪戦に巻き込まれてしまう。

ちなみに、メイスはパリに出発する前にニックと深い関係になる。何とお手軽なと思ったのだが、実はパリに着いて早々、ニックは殺害されてしまうのだ。メイスは彼の死に大いに心乱れるのだが、実はこの死には驚くべき裏があることがあとになってわかる。

というわけで、ストーリー的にもなかなかヒネってあるのだが、最大の見どころはやはりアクションだろう。人気作「ジェイソン・ボーン」シリーズのスタジオが製作しているということもあって、ガンアクションあり、格闘シーンあり、バイクチェイスありでド迫力のアクションが満載だ。監督は「X-MEN:ダーク・フェニックス」のサイモン・キンバーグ。

その後、舞台はモロッコに移る。そこではメイスがマリーと手を組み、グラシエラを引き込み、さらにイギリスのMI6のサイバー・インテリジェンスの専門家ハディージャルピタ・ニョンゴ)を仲間に加えてデバイスを狙う。もちろんここでも緊迫の追走劇が展開される。

感心するのは、女性エージェントたちのキャラがクッキリと描き分けられていること。凄腕エージェントのメイス。二重スパイだった父を持ち孤独なマリー。本来は無関係なのに巻き込まれてしまい、早く家族のもとに帰りたいグラシエラ。IT機器を鮮やかに操るものの、こちらも恋人のもとに早く帰りたいハディージャ。それぞれの個性が十二分に発揮されている。

マリーがBNDの同僚と話す時はドイツ語、グラシエラがコロンビアの諜報組織の同僚と話す時はスペイン語というように、言語をちゃんと実際の言葉に合わせているところも抜かりはない。まあ、ダイアン・クルーガーは「女は二度決断する」でドイツ語の演技を披露しているし、ベネロペ・クルスはペドロ・アルモドバル監督作品などスペイン語劇にもたくさん出ているから、当然といえば当然だが。

ロッコでの攻防を経て、ついにメイスがデバイスを手に入れて大団円。任務を終えた彼女たちは、それぞれの初仕事の思い出を語り合うなどして楽しく過ごす。これにて一件落着……と思ったら、そうではなかった。ドラマは二転三転してまだ続くのだ。

最後の舞台は上海(実際のロケ地は台北のようだが)。デバイスをめぐって、華々しいオークションが開かれる。ゴージャスに着飾ったメイスたちの前に現れたのは、中国政府のエージェント、リン(ファン・ビンビン)。

これで全員総登場となり、「敵の敵は味方」で全員が手を結び、最後はホテルの高層階を舞台にしたド派手な銃撃戦。当然ながら、あわやの場面が続出するスリリングな展開だ。そこで決定打を放つのは、意外なあの人!

その後に描かれる後日談では、ついに憎きラスボスを倒し(もちろん男!)、女たちの団結と友情を印象付ける。そして最後には続編を匂わせるセリフも。しかしこの5人をまた揃えるのは大変じゃないの!?

それにしても豪華なキャストですなぁ。ジェシカ・チャステインペネロペ・クルスファン・ビンビンダイアン・クルーガールピタ・ニョンゴ。いずれも劣らず存在感あり。それぞれに見せ場がちゃんと用意されているから、なおさらだ。個人的にはダイアン・クルーガーが一押し。こういう孤独な役がホントに似合うなぁ~。

少し前だったら、男性スパイの間に1人か2人女性を入れ込んでおしまいだったろう。全員女性というスパイの顔ぶれはあり得なかったのでは? そういう意味で基本はありがちなアクション映画ながら、女性の時代にふさわしい作品である。とにかくひたすら女性がカッコいいのだ!

◆「355」(THE 355)
(2022年 イギリス)(上映時間2時間2分)
監督:サイモン・キンバーグ
出演:ジェシカ・チャステインペネロペ・クルスファン・ビンビンダイアン・クルーガールピタ・ニョンゴエドガー・ラミレスセバスチャン・スタン
*TOHOシネマズ 日比谷ほかにて公開中
ホームページ https://355-movie.jp/

 


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