「名探偵ポアロ ベネチアの亡霊」
2023年10月2日（月）新宿ピカデリーにて。午後3時35分より鑑賞（シアター4／Ｄ－9）
＊写真撮ってくるのを忘れました。トホホホ・・・。
アガサ・クリスティーの「名探偵ポアロ」を、ケネス・ブラナーの監督・主演で映画化したシリーズの第3弾「名探偵ポアロ ベネチアの亡霊」。1作目の「オリエント急行殺人事件」は観たのだが、「ナイル殺人事件」は見逃してしまった。でも、まあ、それぞれ独立した話なので、過去2作を観ていなくても大丈夫です。
タイトル通りにベネチアが舞台の物語、名探偵ポアロは引退して隠遁生活を送っていた。そこに、旧知の作家のオリヴァ（ティナ・フェイ）が訪ねてきて、ハロウィーンの夜に行われる降霊会に彼を誘う。超常現象など一切認めないポアロは、霊媒師レイノルズ（ミシェル・ヨー）のトリックを見破るために、降霊会に参加する。ところがその降霊会で、招待客が人間には到底不可能と思われる方法で殺害される。ポアロはこの不可解な事件の真相解明に乗り出すのだが……。
ドラマの舞台となるのは古い屋敷。かつては孤児院で、そこで子供たちが閉じ込められ殺されたという。その霊が今も屋敷内をさまよっていると伝えられているのだ。おどろおどろしくも謎めいたこの舞台装置のおかげで、ドラマもまた怪しい雰囲気を漂わせる。
おまけに原作がクリスティーの小説「ハロウィーン・パーティ」ということで、ハロウィーンの仮装をする場面も登場する。これまた怪しい雰囲気を漂わせている。
さらに、ベネチアは水上都市。日中なら陽光がさんさんと降り注ぐ明るいイメージだが、夜のドラマとなれば様相は一変。これまた怪しい雰囲気をぷんぷんと振りまく。
というわけで、そんな雰囲気の中、ドラマが展開する。屋敷の現在の持ち主の元オペラ歌手ロウィーナは、少し前に娘アリシアを亡くしている。警察は自殺と判断したが、謎に満ちた死だった。ロウィーナはその娘の霊の声を聞くために降霊会を催したのだが、肝心の霊媒師が謎の死を遂げてしまう。この事件の真相を探るのが、ご存知名探偵ポアロだ。
その場にいる誰もが犯人のように見えるのがこのシリーズの特徴。アリシアの母のロウィーナ、アリシアの主治医、アリシアの婚約者、霊媒師の2人の助手、この屋敷の家政婦、作家のオリヴァ、ポアロのボディーガード……。みんな犯人のようでいて、全員がシロのようでもある。
この難しい事件の真相を持ち前の推理力、分析力で解き明かすポアロだが、今回のミソは超常現象を認めず、霊の存在など信じていないポアロが、怪奇現象に遭遇してしまうところ。周囲の人々が霊の存在を信じ始める中、ポアロも心がぐらぐらと揺れる。それによってなおさら、事件の真相が闇の中に包まれる。
ポアロが彼らを尋問しているうちに、次第にそれぞれが持つ別の顔が見えてくるというのも、このシリーズの特徴。「え！ あの人、実はそうだったの？」的な面白さが体験できるというわけだ。
こうして霊媒師の死の謎に迫るとともに、以前に死んだアリシアの死の謎にも迫るポアロ。そこでさらにもう1件の殺人事件が起きて、事件は急展開を見せる。はたして、その真相は？
まあ、真相がわかってしまうと「なーんだ」となるわけだが。実際にその手の事件が日本でも起きているから無理筋というわけでもない。さらに、数々の超常現象の謎も解き明かされ、いくつかばらまかれていた伏線も回収されるから文句は言えまい。
何よりもケネス・ブラナーが楽しそうにポアロを演じているのが良い。この人、元々は有名なシェイクスピア俳優なのだが、どこで道を間違えた……ではなくて芸の幅を広げたのであろうか（笑）。ともあれ、従来とは違うポアロ像を見せたくれた上に、監督まで務めるのだから立派（監督作は他にも多数あるが）。
その他の脇役は、それほど日本では名の売れた俳優ではないが、いずれも存在感を発揮している。霊媒師役のミシェル・ヨーは意外に早く消えるのね、
安定のポアロ。過去作が好きだった人やこの手のミステリーファンにとっては、十分に楽しめる映画だといえるだろう。
映画の最後で引退を撤回したポアロ。さらなる続編もあり？
◆「名探偵ポアロ ベネチアの亡霊」（A HAUNTING IN VENICE）
（2023年 アメリカ）（上映時間1時間43分）
監督・製作：ケネス・ブラナー
出演：カイル・アレン、ケネス・ブラナー、カミーユ・コッタン、ジェイミー・ドーナン、ティナ・フェイ、ジュード・ヒル、アリ・カーン、エマ・レアード、ケリー・ライリー、リッカルド・スカマルチョ、ミシェル・ヨー
＊新宿ピカデリーほかにて公開中
ホームページ https://www.20thcenturystudios.jp/movies/poirot-movie3
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