映画貧乏日記

映画貧乏からの脱出は可能なのだろうか。おそらく無理であろう。ならばその日々を日記として綴るのみである。

「ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密」

「ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密」
2022年5月5日(木)GYAO!にて鑑賞。

~密室殺人に挑む名探偵。アガサ・クリスティー風本格派ミステリー

おウチで映画鑑賞第三弾。アカデミー賞にもノミネートされたライアン・ジョンソン監督・脚本の「ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密」。オリジナル脚本ではあるものの、アガサ・クリスティーに捧げて執筆されたというだけあって、その雰囲気が全編に漂っている。

密室殺人ミステリーである。NY郊外の館。世界的ミステリー作家ハーラン・スロンビー(クリストファー・プラマー)の85歳の誕生日パーティーが開かれる。だが、その翌朝、ハーランが遺体となって発見される。依頼を受けた名探偵ブノワ・ブラン(ダニエル・クレイグ)は、事件の調査を進めていく。莫大な資産を抱えるハーランの子どもたちとその家族、家政婦、専属看護師と、屋敷にいた全員が事件の第一容疑者となる。調査が進むうちに裕福な家族の裏側に隠された人間模様があぶりだされていく。

ミステリー好きにはたまらない映画だろう。自殺とされた有名作家の死。だが、そこに名探偵が調査に乗り出す。周辺には怪しい人物がウジャウジャ。はてさて、真相はいかに……というわけだ。

ドラマの前半は様々な人物たちの証言で構成される。だが、彼らはいずれも秘密を抱えている。それでウソの証言をするものだから、他の証言との食い違いが生じ、謎がますます深まっていく。

何しろ探偵役は「007」シリーズのダニエル・クレイグである。というと完全無欠のヒーローを想像するかもしれないが、この名探偵、確かに鋭い名探偵と思わせる反面、意外に抜けているところもあったりして、なかなかに複雑な人物なのだ。クリスティーの小説でおなじみのエルキュール・ポワロ顔負けに魅力的な人物なのである。

そして、周辺の人々もこれまた魅力的な役者ばかり。老作家役のクリストファー・プラマーをはじめ、クリス・エヴァンス、アナ・デ・アルマス、ジェイミー・リー・カーティスマイケル・シャノンドン・ジョンソントニ・コレットといった存在感ある面々。これで面白くないはずがないのである。

特に事件の鍵を握る移民の看護師役に若手のアナ・デ・アルマスを起用し、それとは対照的に遺産を狙う夫婦にジェイミー・リー・カーティスドン・ジョンソンというベテラン俳優を起用しているあたりもキャストの妙。クリス・エヴァンスの異端児ぶりも際立っている。

実のところ、事件の真相については早いうちに観客に提示されてしまう。南米移民の看護師のマルタが、薬の量を間違えてしまったというのである。しかも、彼女が救急車を呼ぶのをハーランは阻止し、アリバイ工作を命じる。その事実をマルタはひた隠しにする。

ブノワはそれを知ってか知らずか、マルタに調査の助手役を頼む。シャーロック・ホームズにとってのワトソンというわけだ。だが、話が進むにつれて一度提示された事件の真相には、裏があることがわかる。いったい本当の真相はどこにあるのか。観客も混乱させられる。

中盤はハーランの遺言状が明かされ、さらに混乱が深まる。何しろハーランは遺産を家族ではなく、赤の他人のマルタに残すと宣言していたのだ。

これでマルタは集中砲火を浴びる。そんな中、ハーランの息子ランサムだけは彼女の味方になる。はたしてハーランの死の真相は?

ちなみにマルタがウソをつくと、所かまわず吐いてしまうという設定が面白い。終盤でも、この性癖が効果的に使われる。

その終盤では、カーアクションや乱闘シーンなども飛び出し、なかなかの緊迫感だ。事件の真相自体は、わかってしまうと「なーんだ」となるが、観ているうちはミステリーの面白さにたっぷりと浸れるはず。

ちょっと話がこんがらがってわかりにくいところもあるのだが、本格ミステリー劇としては上出来。ミステリー映画好きには見逃せない作品だろう。


◆「名探偵と刃の館の秘密」(KNIVES OUT)
(2019年 アメリカ)(上映時間2時間10分)
監督・脚本:ライアン・ジョンソン
出演:ダニエル・クレイグクリス・エヴァンス、アナ・デ・アルマス、ジェイミー・リー・カーティスマイケル・シャノンドン・ジョンソントニ・コレットクリストファー・プラマー
*動画配信サイトにて配信中
ホームページ longride.jp/knivesout-movie/

 


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